第4話

「ねぇねぇ、輝姫くんは前はどこの学校いたの?」

輝姫にそう聞く。だが、返事が無い。

「輝姫くーん、生きてる〜?」

「、、あっ?あぁ、染愛。何?」

ぼーっとしてた輝姫くんは私の名前を言ってから質問を返した。

 なぜか輝姫くんに呼ばれる『染愛』が聞き慣れたように感じた。

「だから、前はどこの学校にいたの?」

もう一度私は質問する。

 すると輝姫くんは私の頭に手を置いて「内緒」と言った。既にクラス、否、学年の注目の的( 女子受け含め )となっていた輝姫くんが私の頭を撫でた( のだろうか? )事で学年の女子達を敵に回したも同然と私はなってしまった。

 不覚にも照れてしまった私は

「ちょっ 、皆んな睨んでるから 、、、」

と手を下ろしてという風にジェスチャーする。

「?見られてたら駄目なのか」

輝姫くんは子犬のようにしゅんとしてしまった。

「、、、、、、、、へ?」

なんだこの人は天然なのか?いや天然だ。それも限りなく。とんでもない人が隣になってしまったな…。



 そんなこんなでやっと放課後。正直こんなに疲れた日は初めてだと思った。

「はぁ〜、、、、」

深い溜息が自然と出る。

「家、、帰りたくないな」

そんな独り言を呟いた時

「なんで?」

と、輝姫がどこからともなく出て来た。

流石の私も驚きを隠しきれず「うわぁっ?!」と声を上げてしまった。

「あ、輝姫くん、、吃驚したぁ〜」

私が胸を撫で下ろした後、彼はこう言ったのだ。

「俺の事、どう思う?」

と。

(、、、、あれ?なんだろ、、またノイズがかかる感じ。何で答えたらいいんだろう。)

「、、、。一緒に、、居て欲しくなる人」

何も考えなしに私の口は動いていた。

 ほら、輝姫くんもポカーンってしてる。


 でも、その後すぐに輝姫くんは微笑んで

「そっか」

と一言言った。

 それ以上でもそれ以下でもない、只々受け止めてくれた。そう感じた。


 視界が滲む。

 頭にノイズがかかる。

 あ、そうか、、"あれ"、夢じゃないや。


「、、、、輝姫くん、"この前"は、、ありがと?」

今、私はこの一言で精一杯だった。

 何で私はこの事を夢だと、、忘れようとしてたんだろうか、、、それが解らなくて仕方がない。


「思い、出した?」

輝姫くんが驚いた表情で、その整った顔を顰めて私に聞いた。

「うん、思い出した。迷惑かけちゃったね」

私がそう答えると輝姫くんは俯き何かをぶつぶつと言っている。

「、、、、ごいや、、やっぱ、、、、、、は、、能が、、、、、、」

なんて言ってるんだろうか。うまく聞き取れなかった。

 そんな事を考えてる私の手首を輝姫くんは掴み、こう言った。

「染愛。これから逃げて追われて殺されるか、この学校から転校して生き延びるか、選んで」


 …は?何言ってるの?どっちも嫌だよ、、

ぐるぐる思考が駆け巡る。また知恵熱を起こしそうだったがそれでもぐるぐる。

 ハッとした時には私は輝姫くんに抱えられ全力で駆けていた。

 チッと何かが私の頬を掠る。じわじわと痛みがきたので触ってみると、血が出ていた。あまりの出来事で頭が回らない。よく分からないけど、、、何かに『追われて逃げて殺されかけている』?

 ガクンと視界が歪んだ。輝姫くんが足を撃たれた?

 この時代に銃なんて、、、そんなモノ振り回して良いわけ?

 私の身体は反射的にRuvidoを使い、輝姫くんを抱えて走っていた。

(ここが少女マンガだかの世界だったら有り得ない光景ね)

そんな呑気な事を考えていたがどうもおかしい、息が切れてきた。そうだ、私には今『色』が足りない。どこか、、、、"彼"が居そうな所は、、、!!


「ゔぐぁ、、、っ、、!」

太ももあたりを輝姫くんが苦しそうに抑えている。

汗が凄い。やっぱり撃たれたのかな、、、

「輝姫くん、アレは何?!」

私達は今、古びた廃墟に居る。もっとも、かなり広いため見つかるにしても逃げるにしても不利な場所だが、、、。

「あいつらは、、ルビディアン本部の連中だよ」

意外すぎる言葉に息を呑む。

「お前、Ruvido発現報告書、書いてないだろ?」

Ruvido発現報告書とは、Ruvidoが発現した際に政府が把握するための報告書だ。

 たしかに私は報告もしてないし誰にも明かしていない。

「でもあるRubidianから報告があったんだよ。『有り得ない強さのRubidianが政府以外の制服を着ている』ってさ。不運な事にそいつのRuvidoは周りの人のRuvidoの強さが分かる能力だった。そこで下調べに来た政府がお前を発見した。驚いたよ。報告されたのが染愛、君だったとはね」

追い付けない。でも、それよりもっと分からないのは、

「待って、輝姫くんってルビディアン本部の人間なの、、、?」

私が実際の所、1番行きたくない場所の人間のひとりが輝姫くん?

「ああ、俺はルビディアン本部、直属の幹部だよ」

信じられない。

 やだ、、、。

 私の身体が拒絶する。彼を、彼のその肩書きを。

「もう少しだけ、聞いてくれるかい?」

輝姫くんが私に言う。やだ、信用出来ない。そう言いたかったけど、それと同時に私は信じたかった。

静かに私は頷く。

「ありがとう。、、、政府の人間が君を見つけた所までは言ったよね。その後、抗議が行われたんだ。君をどうするかっていうね。君のRuvidoは使い方1つで人を傷つけられるような危ない力なんだ。

君はさっき、スポーツマンかなんかの、、、『色』を使って強化しただろう?もしそれが暴力を振るようなそんな危険な人の『色』を使っていたら、どうなっていたか。考えたかい?、、そう言う事なんだよ。君のRuvidoは規格外に強い。きっとほとんどの人の『色』を使えるよ。だから、政府はこう考えた。[政府に入れよう。捕獲する際、抵抗するようだったら殺してさえ構わない]とね」

 本当にゾッとした。こんなところに私の弟はいるのか?考えただけで吐き気がする。

「まぁなんせそれだけの力なんだよ。でも俺は善良な市民を殺生する趣味はない。そりゃ猛抗議したさ。だけど俺は幹部の中でも下の方。その意見に耳を傾けてはくれなかった。だから俺は急遽ここに転校してきたってわけだ。」

少し年下なのに、彼はどんな世界で生きているんだよ。

 私はある疑問があった。

「ねぇ、輝姫くん。事情はわかったよ。でもさ2つ聞きたい事があるんだけど、なんで私のRuvidoがわかったの?それと、どうして"あの時"の記憶を消そうとしたの?」

「それ、は、、」

何かを言おうとしたはずだが言葉を曇らせたので何かあるなとなんとなく察した直後、激しく地面が揺れ、廃墟が崩壊した。なぜか私達の周りだけは丸く切り取られたように無事だったがそれ以外は広い範囲で散りばめられた廃墟が全壊した。

 何が起こったかもう何もわからず私は動けなかったが直感的に本部の者だと思った。

 土煙が舞った視界がクリアになり、初めて私は"何"を敵にまわしたのか、理解した。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

Polishinger 東音々 @azuma_music

★で称える

この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。

フォローしてこの作品の続きを読もう

この小説のおすすめレビューを見る

この小説のタグ