第11話 事件解決
次の日、アレンとウェンディは事後処理に追われることとなった。ウェンディの師匠のマクニーが帰ってくるのは午後の十時。それまでに警察との話し合いや依頼をしてきたブラウン研究員への報告を済ませておかないといけなかった。
ブラウン研究員の研究室は相変わらず紙が散らばっていて、足の踏み場もなかった。
「ま、まさかシェイプシフターと統合したブラックドッグを処理するなんて……さすがハンター。おかげで僕の記憶も頭もすっきりしたよ」
「どうして、あのブラックドッグを研究に?」
がりがりとマグカップに入ったコーヒー豆を口に入れて噛み砕くブラウン研究員は「うーん」と唸った。
「実は、ブラックドッグの主人がお願いをしにきたんだ。墓荒らしが心配だからブラックドッグを強くしてほしいって。それで被験対象として、ブラックドッグを提供してもらって、ハイブリットなブラックドッグを作ったんだ」
七人も女性を殺し、ただのブラックドッグでは死体を誰かに見つけられないか心配になったセドリック牧師は墓守を強くしようとした。その結果、ブラックドッグは死体が埋められている場所に近い裏路地を通った人物に噛みついて能力を奪うことになった。
「まさか、能力を奪うっていう能力を持ったことによって目をつけられて、消されやすくなるなんて思わなかったよ。次の研究に活かそう」
あっけらかんとそう言ったブラウン研究員にアレンとウェンディはため息をついた。
酒場のマスターにも情報提供のお礼を言い、もう事件は終わったことを伝えた。解決したとは言わずにブラックドッグが事件を起こしていたが、警察によりセドリック牧師の犯行が暴かれ、死体が埋まっている場所も暴かれたからブラックドッグはもう出ないだろうということで調査が終わったということにしておいた。
これなら、たとえ、師匠が帰ってきて、マスターにウェンディが調査をしていたと言われても、暇潰しに事件の調査をしただけで首を突っ込んではいないと思われるだけだ。
そうして、後処理も終わり、アレンとウェンディは屋上に集まっていた。
「ようやく終わったな」
「これで師匠に殺されなくて済みます」
「はは、それはよかった」
アレンは景気づけに血でも吸ってやろうかと一瞬だけ考えてやめることにした。たとえ、血が美味かったとしても後味は最悪なものになるだろう。
少し考えてからアレンはまだ中身が残っているチョコレート店の紙袋をウェンディに押し付けた。
「いいんですか?」
「俺はまた買って、一人で楽しむからいいんだよ。頑張ったお嬢さんにはこれぐらいのご褒美がないとな」
アレンは屋上の柵の上に軽々と飛び移るとひらひらとウェンディに手を振った。
「お嬢さんとの共闘、なかなか楽しかったぜ」
「もうこんなことは御免だ」
ウェンディの苦虫を噛み潰した表情にアレンはけらけらと笑うと柵から建物の外へと飛び降りた。やがて、無数の蝙蝠は空に舞い上がり、遠くへと飛び去って行くのを眺めて、ウェンディは屋上の扉を閉めた。
一夜バディ 砂藪 @sunayabu
★で称える
この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。
カクヨムを、もっと楽しもう
カクヨムにユーザー登録すると、この小説を他の読者へ★やレビューでおすすめできます。気になる小説や作者の更新チェックに便利なフォロー機能もお試しください。
新規ユーザー登録(無料)簡単に登録できます
この小説のタグ
関連小説
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます