中編 

実は俺、かなり大きめな結婚式場で働いている。


結婚式の段取り決め・セッティング・備品の発注・提携ホテルとの会議などをしているのだが、少子化になり別居婚や事実婚などが受け入れられるようになってどんどん需要が右肩下がり。


最近では一部を撮影のスタジオ化して貸し出しや、ちゃんとした婚活サービスを運営するようになった。


今日は大きな趣味婚パーティー(アニオタ・ドルオタ・他共感してもらわなくても良いけど自分は趣味を持っているのでお互いに協調できる人を探しています婚活パーティー)があり、始まるまでの受付や決まり事項の説明などで忙しく働いた。


これ実は”バキバキ童貞系オタク”は意外と少なく、コレクション趣味で並べたり家にそれなりのスペースが欲しい事に理解してくれる人を求める普通の男・イベント参加とかまでしないけどアニメ・漫画好きな人が大半だ。なんなら車やバイクのコレクションなんてお金が無いとできないから意外とねらい目。


女性もジャ○オタなどのアイドルや俳優に推しがいてポスターや団扇があるけど理解があり嫉妬しない人を求めてたり・現実は普通だけど物語だけは男×男系をよく読むけど大丈夫な人・ドラマや歴史が趣味で現地めぐりが好きだから旅行とかで付き合ってくれる人・ペットを飼うけど邪険にしない人お求めてたりする。


そんなだから結構なオタ系でもその日に飲みに行ってそのままみたいに性欲がんだししなければ一般に紛れてカップリングも全然ありえる。


趣味をするのに情報共有や取集でネットを活用することが多く、ネット民への理解者も多いため個人的にはかなりのオススメとだけ言っておこう。



そんなことはさて置き、今はそんな趣味婚パーティーのフリートーク時間(同じ趣味で話したり、気になった人と自由に話していいですよ時間)に俺は仲のいい先輩に相談を受けた。


『なんかさ、俺の2番目の息子が今度中学3年になるんだけどさ。中二病っていうのかな?式神がどうとか陰陽師がどうとか隠れてやってたんだけどさ、最近家族に隠さなくなったと言うか深刻化してんだよね…。恥ずかしいからやめさせたいんだけどどう接していいか分からなくてさ…。』


おぉ、なんてタイムリーな相談なんだ。


『うちの息子もちょうど中二病な次期で謎の組織がどうとか言ってますよ。俺にも覚えがあるんで早く黒歴史になることを気付かせてやりたいところですよね。』


『そうか、お前んとうちの一つ違いだもんな。正直俺はその道通ってないからあんま分からないんだよなぁ~。よく昔話として飲みの席では聞くことあるけど。』


『そうなんすか?!逆に俺の家は夫婦そろって根はオタ系なんで自分たちの黒歴史掘り起こされてグサッて感じですけど。なかったんすか?眼帯にあこがれたり、美人お姉さん以外の通行人を脳内でスナイプしたり。』


『俺はどちらかというと女性シンガーのCD買ったりグラビアポスター貼ったりの道を経由してたから、うちの長男もそっちタイプかなこの前も○○坂のCD買ってたし。脳内スナイプは無いけど通行人とやりたいかやりたくないかに分けた経験はあるな、あはは』


『あーなるほど、そっちすか。まぁヤンキー系になって人に迷惑かけるよりは親としては安心ですけどね』


『まぁなぁ、あとはエロ本信じすぎて都合よくとらえて女の人襲ったり小さい子に興味持つほど拗らせないでくれればいいんだが。自分が経験してないと拗らせ度合いの判断ができないから怖くはあるんだよなぁ。たまにいるじゃんやばい客。お前はどうやって卒業したわけ?』


そう小声で話しながら目の前で好きな女性のタイプを聞かれ『小柄で自分が何かを教えてあげる感じがいいですね、毛が無ければ最高です』なんて最後のはギャグのつもりで言ってるのだろうけど、やばい客がいたりする。

ここまでのは久々に見たな…。


『そうですねぇ、俺は左手にペンで模様書いたり右目に魔力が宿ってましたけど。陽キャと喧嘩になりかけた時に自分が一番そんな力無いって理解してるからめっちゃビビって目が覚めましたね。あとはモテたかったのもありますね。清楚系のクラスの人気者巨乳美人の隣に眼帯を付ける左手押さえたオタクが並んでる想像が全くできなかったって感じっす。』


『なるほどなぁ、理解できるわ。俺も女友達が家に来るときはグラビアポスターはがしたり写真集隠したり自分の趣味が女の子に怪訝にされると気が付くと表に出さなくなくなるよな。』


『そうなんすよね、まぁモテなくてもいいってほど拗らせてなかっただけかもしれないですけど。あ、もう終わりの時間っすね』


『あぁ、なぁ今日飲み行かね?息子のことで相談もしたいし、今日丁度愚痴と相談を話しにキャバ行く予定だったんだよな。先輩に誘われてって結っていいからよ、こんなことないともう行けないだろ?』


『新入の時はよくいきましたね、あはは。いいすよ、許可出たら行かせてもらいます。』


そして俺は見計らってトイレに入ると妻に


『先輩がさ~キャバクラ行きたいがために後輩にせがまれて約束しちゃったって奥さんに言ったら。行くのは良いけど一枚写真送るのと変える時に連絡入れるように言われたらしくてさ。後輩役頼まれちゃったんだけど行ってもいい?』


と連絡を入れて、浮気する気はないがウキウキ気分で仕事に戻るのだった。



~~~~~~~~~


仕事が終わり携帯を開くと


『先輩じゃなくてお父さん(俺)が行きたいだけだったりしてww

 仕事のお付き合いもあるだろうから遅くならないならいいよ。浮気されるのも嫌だから偶には綺麗なお姉ちゃんとお話して発散してきなさい。お話以外は許さんから!』


って文章を読んで苦笑いとうれし笑半々で先輩に許可出た事を知らせに行った。


~~~~~~~~~


先輩とうどん屋に入り腹ごしらえをし、キャバクラへ向かうためにタクシーを拾う。


先輩は俺に向かってお前もそろそろ出世して幹部入りするだろうから今日は予行練習として良い所に連れてってやるよとどや顔を決めてきた。


いや、23で入社して25で結婚、26で子供が生まれ、41で幹部まで出世となりゃかなりの成功した人生なんじゃないか?俺は『またまたぁ~、俺はまだそんな器じゃないですよ』と言いながら話半分で考えておこうと決めながらも内心めっちゃニコニコしていた。


タクシーが止まったのは銀座の高級クラブだった。

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中二病の息子 折れた綿棒 @oretamenboo

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