第163話 天の川に舞う(13)

 群青色に輝く光が天に向かい放たれる。真奈美は光の中で身体中を満たしていく潤いに安らぎを感じていた。重く深い純粋な水の潤いが真奈美の想いを包み、美しく磨き上げていく。スッーと呼吸が楽になると、頭の中は泡粒が次々弾けていくようにクリアになっていく。

かつて実菜穂が重いと感じた感覚は真奈美にとっては何よりもしっくりとして、心地よく感じて目を閉じていた。



(混じりけのない冷涼でそれでいて優しい水。地の深くから磨き上げられた美しい水。なんて心地がいいのだろう。なんて強くて優しいのだろう)


 真奈美は自然に顔を上げ、青い光を浴びている。フッと目を開けると空には天の川の美しい輝きが目に入り、その光が全身を包み込んでいるように思えた。


『真奈美。いま、あなたと私は一つになりました。想いを届ける力は高まっています。空に天の川が見えることでしょう。その光の奥に想いを届けるのです』

「はい」

『真奈美と私のように。実菜穂と水面の神、陽向と日御乃光乃神が一つになりました』


 真奈美は実菜穂と陽向に神の瞳を向ける。淡い水色の長い髪に優しく光る瞳。安らかで涼やかな気と清らかに流れる水のような羽衣を纏い、みなもが重なりオーラを放つ実菜穂の姿。そして、明るく炎の活気が溢れる気を纏い、紅い瞳を輝かせ、美しさと強さの神々しい光をと炎のオーラを放つ陽向。真奈美は、春に舞っていた2人の真の姿を目にし、あの時感じた美しさは間違いではなかったのだと心が静かに頷いた。


 いっぽう、実菜穂、陽向も真奈美の姿を瞳に映していた。


濃く、青く、流れて輝く光に包まれ、真奈美の瞳は群青色に染まる。絹糸のように滑らかに潤う髪が風になびいている。濃い青が燃えるように光る天色の羽衣が浮かび上がると、真奈美の身体を優しく包み込んだ。 

 汚れがなく、磨き上げられた水のような光が集まってくる。全てのものを引きつけ、癒し、祓い清めるオーラを纏った真奈美が舞台に立っていた。


 その横に実菜穂と陽向が並ぶ。陰と陽、その間に二つを紡ぐように真奈美がいる。三人の人と三柱の神。いま、天の川の輝きを受け、神と人が舞台に立っていた。


 誰も声を上げることなく、ただジッと舞台に立つ三人を見つめていた。すべてのものが舞台に視線を注いでいた。

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