第159話 天の川に舞う(9)
部屋で女子四人が集っている。詩織が巫女装束を身につけ陽向がセットをしていた。実菜穂も同じように陽向から巫女姿にセットしてもらった経験がある。
「ちょ~っと、我慢して。動かないでね」
陽向が優しく詩織の唇に紅をさしていく。その様子を実菜穂と真奈美が目を大きくして見つめていた。横にみなもがついている。静粛でそして澄んだ空気が辺りを満たしていった。
「はい。うん、いい出来映え。どう?」
陽向が詩織の横に並ぶ。
「おーっ!」
実菜穂と真奈美は、声を合わせて目を開くと、息を飲んで見とれていた。詩織もまた鏡に映った自分を見ると呼吸が止まってしまった。鏡には、髪を一つに束ね、紅が鮮やかに唇を彩り、巫女装束を身につけた清楚でありながら明るく光を放つ少女の姿があった。
「これが……私……?」
詩織は呆然としていた。まっすぐ自分を見つめる少女の姿。それは、とても自分とは思えないほど可愛く、少女という幼さを見せながらも大人びた姿であった。
「うんうん。やっぱり、こうなるよね。初めて見たときから、相田さんは、綺麗な人だなって思ったんだ。こりゃ、みんな驚くぞ」
実菜穂が詩織の横につき陽向と一緒に鏡を眺める。詩織は二人の視線に顔を伏せそうになった。
その様子をみなもと火の神もにこやかに見ていたが、みなもが微かに目を細める。
「のう、火の神。儂はあの詩織と御霊の鼓動が同じ神を知っておるような気がするのじゃが」
「そうか。俺も同じ感じがしていた。お前がそう言うのなら、間違いではなかろう」
「なんじゃあ?随分と神任せな言葉じゃのう」
「いや、本当のところだ。この手のことはお前の方がはるかに力が強い」
火の神が腕組みをして四人を見ている。みなもは黙ったまま、詩織の姿を追っていた。
「まだ何も分からんのう。大きな闇に繋がるものか。まあ、兎に角いまは、目の前のことに力を注がねばならんな。さて、実菜穂たちの準備を待つかの。火の神、ちょっと外に出ようぞ」
みなもは青い光となって消えると、火の神も消えた。
日は静かに落ち、祭りの始まりを告げていた。
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