第151話 天の川に舞う(1)

 実菜穂がスマホの画面を見る。


「わあっ。本当だ31日だよ。祭りの日だよ」


 声を上げる実菜穂に陽向と真奈美も確認する。


「私、そんなに帰るの遅かったの?ごめんなさい」


 真奈美が驚き、申し訳ないという顔をする。実菜穂も陽向も首を振る。


「真奈美さん、謝ることじゃないです。心配してたから、『早く帰ってきて』とは思ったけど、時間がそんなに経っているとは全く感じなかったから。なにより、これで道は開けたんだよ。良かったよ」

 

 実菜穂が答えると、陽向も頷いた。


「とにかく。いまが6時だから、直で帰れば余裕で間に合います」


 陽向の言葉に実菜穂が目を輝かせる。お互い「ウン」と頷くと、通話をタップした。


「お父様、お願いがあります……」


 陽向が話す。


「もしもし、秋人……」


 

 ◇◇◇◇◇◇◇◇            ◇◇◇◇◇◇◇◇   


 秋人がショルダーバックを抱え、祈るような顔で部屋を出ようとしたとき、スマホが鳴った。実菜穂からだ。


「実菜穂!大丈夫なのか?こっちは、予定の日になっても三人が帰ってこないから、ちょっとした騒ぎになりかけてたんだ。祠に声かけても、みなもは、応えてくれないし。すごく心配したよ。今からそっちに行こうと思って…………えっ、舞台を準備して欲しいって!分かったよ。無事なんだね。うまくいったんだ。任せといて。良樹も引っ張り出すよ」


 秋人はスマホの画面を眺めると、安堵の表情で深く息をついた。


「よかった……」


 再びスマホに手をかけた。


「良樹、陽向からの頼みごとだけど聞くかい?」


 あつい夏の一日が始まった。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る