第84話 赤珊瑚と桃珊瑚の見た思い(2)
実菜穂が少し緊張している。いつも神様のことなら興味深々に元気な感じになるのに、この時ばかりはいつもの実菜穂ではなかった。
「ねえ、陽向ちゃん。私、ユウナミの神とは別の空気を感じるの。あの随身門からだけど。あそこにいる神様が私たちをずっと見ている気がする」
実菜穂は随身門を見つめた。陽向も実菜穂の見つめる先に目をやった。
「真奈美さん、実菜穂ちゃん。目に見えるとおり先には随身門があります。この赤色と桃色の線は随身門の二柱のものに間違いありません」
「そうなのですか。赤色と桃色。鮮やかな感じ。門の神のイメージというか東門仙様とは違う雰囲気がします」
真奈美も線を見つめている。
「真奈美さんの感じたことは、間違っていません。この線が見えるということは二柱に何か意図があるということ。二柱については知っておいた方がいいと思うから、少し話を聞いてください。ユウナミの神の随身門は………」
◇ ◇
三人は参道を進んだ。陽向から線の外側を歩くように言われたので、赤色の線の外側を歩いていた。随身門に近づいて行く。線は左右の随身門の柱へと延びてそこで切れている。向かって左が赤色、右が桃色である。
三人はそこで歩みを止めた。随身門の先が全く見えなくなっていたからだ。夢ではない現実の世界。随身門の二柱は三人を足止めしているのだ。
目の前にして改めて随身門の美しさに心を奪われた。朱色ではなく鴇色に染まる随身門は、ユウナミを守るに相応しく優しさと力強さを感じさせた。
「真奈美さん、実菜穂ちゃん。きます!」
実菜穂と真奈美は、目を凝らした。
三人の前に白い光が地上から二本現れた。その光の中に柱がいる。女神である。左は赤胴に白鉢巻を身につけ、太刀を差し、弓を持ってる。右からは同じ姿である桃色の胴を纏った女神が現れた。見た目は若い女武者といったところだ。人で例えたら二十歳くらいだろうか。目は少し細く、鼻はスッと高い。ハッキリとした顔立ちは守りの神という言葉がピッタリであった。勇ましくそして柔らかい姿。驚くことに、二柱の顔はそっくりであった。肩まである黒髪が風になびいているとこまで同じである。違うのは胴と弓の色。
二柱が先を通さぬよう参道をふさいで立っている。一歩たりとも通しはしないという思いは、その顔から窺うことができた。
(陽向ちゃんの話のとおり。ユウナミの神の随身門は女神なんだ)
実菜穂と真奈美はその姿に見とれながら、二柱の物語を思い出していた。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます