第10話 年上の妹(4)
終業式までに行われる補講的な授業が終わった放課後、秋人はクラスメイトと談笑していた。試験の山が外れたのとか夏休みの塾の講習内容や模試がどうのとか、特進クラスのなかではとりとめもない話題であった。特進クラスは、入試時の成績上位20名を中心に選抜され、そのほか10名は中学での推薦や成績を加味された生徒の計30人の進学クラスである。2年、3年は前学年時の成績で生徒が編成される。当然、成績次第では特進クラスから外れることもあるし、編入されることもある。
「金光さんは、休みはどこか行く予定あるの?」
聞いたのは、
「予定といっても特に今はないけど……夏祭りの準備と手伝いをするくらいかな。今年は忙しくなりそうだから」
秋人は、一年前の夏祭りの光景を思い浮かべて思わず顔をほころばせた。そんな秋人を詩織は興味深げに見ていた。
「やけに嬉しそうだな。あっ、夏祭りの手伝いって、もしかして日御乃神社の?」
談笑していた男子が秋人に聞いた。そこで雰囲気は一気に明るく変わった。
「そうか。秋人がいた中学の地区は日御乃神社があるところだよな。じゃあ、日美乃と田口の二人とは同じ学校だったんだよな?」
男子勢はかなり盛り上がって秋人を囲み始めた。詩織はそんな男子の雰囲気を少しうるさそうに眺めていた。
「三年のときは同じクラスだった……」
秋人が周りの雰囲気に圧倒されながら言いかけたとき、会話を無視して不意に声を掛けてくる者がいた。
「あなたが、
周りの生徒が一斉に注目をした。もちろん、秋人もその人に目を向けた。真奈美だ。緩やかな雰囲気のセーラーのはずが、真奈美は模範的ともいえる隙のない格好で身に付けていた。頭には陽向から譲ってもらった髪留めのゴムで綺麗に髪を整え、普段の真奈美と違ってこの教室の堅物のなかでもひときわビシッとした姿をしていた。
「はい。僕ですが何か用でしょうか」
秋人は真奈美の勢いに内心驚いてはいたが、顔には出さずに冷静に対応した。
「景山真奈美さん。二年生で特進クラスです。一年の時も成績上位だったのでこの教室の生徒でした。私の中学の先輩です」
ただならぬ空気を感じて心配になった詩織が秋人の耳もとで囁いた。
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