人には、選択肢がある。
もちろん「無限の選択肢」なんていうのは理想でしかなくて、大抵は狭い選択肢のなかのどれかを選びながら生きていく。
もしかすると、だれかの思惑で、本来あるはずの選択肢を奪われて、「それを選んだのは自分だ」と信じてその道を歩んでいる人もいるかもしれない。
主人公は選択肢を奪われた人生を余儀なくされていた……そして運命の転機。
特別な徴(しるし)とそれに伴う能力。
そんなものがあっても、竜を操れたとしても、選択肢はほとんど増えない。
一本道の人生が、二股に分かれた程度。
けれども主人公はいままで選べなかった、たったひとつ増えた選択肢を選んで、あたらしくできた仲間とともに都を目指す。
いままで存在すら知らなかった選択肢を、知るために。
そして、きっと……自分の母や、古い国の同朋が選べなかった選択肢で、自分の人生を切り開くために。
この話は、その物語の、はじめの一歩である。