最終話 もう一度

 和宮君はもういない。


 お別れは突然だった。


 私の中は、あの夏祭りの日で止まっている。


 近づいた距離、君とはゼロセンチになったのにね。


 もう一度会いたい。

 和宮君と会いたいよ。


 近くて遠くても良いから。


 私の前の席は、空席になった。


 私と君との距離は遠い。


 どんな風にしても測れないほど遠く遠くなっちゃったよね。


 涙はあふれる。

 いくら流れても涙ってね、枯れることがないんだって知った。


 君は孤高の一匹狼だった。

 ちょっと怖い顔、鋭い目つき。

 群れない、愛想のない君が、私にだけ見せる顔。


『今、笑った?』

『俺だって笑うよ。鷹岡といると楽しいからさ』

『友達作らないの?』

『集団が苦手なだけだよ』


 少しずつ、君との距離が近づいて……。

 嬉しくて。嬉しくてたまらなかった。

 私は君の心に触れてみたかったんだと気づいた。


 君の触れた頬が、唇が、熱くて。

 胸がギュッと痛むんだ。


 もう一度だけでいいから。

 お願い。


 君に会いたいよ。




      了


  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

君との距離 天雪桃那花(あまゆきもなか) @MOMOMOCHIHARE

★で称える

この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。

カクヨムを、もっと楽しもう

この小説のおすすめレビューを見る

この小説のタグ