1-エピローグ

「おはよう」

 寺領と美園に朝の挨拶を交わす。

 統志郎が去ってから一夜。平日の今日はいつもと変わらない登校日。

 普段通りの朝――いや、どこかよそよそしさあった。

 朝の食卓で二人に問いかける。

「結局、何も変わらなかったのかな?」

「これまで通りです」美薗はいった。

 インターホンが鳴り、ドアホンを確認すると真莉だった。

 何でも久しぶりに一緒に登校したくなったらしい。

 寺領と美園は先に学校へ向かい、おれも急いで支度を整えた。

「初めてじゃないか? 迎えに来てくれるのは」

「そう? 中学のころは毎日だったから記憶が曖昧だよ。……未夏ちゃんもゆかりちゃんも家にいたね」

 さっそく、真莉に統志郎とのやりとりがあったことを話した。

 呆れ顔で真莉は、

「結局、共同生活は続くのね」

「まぁな」

「…………これまでと何が違うの?」

「どちらとも結婚しないまま、別の人と結婚するかもしれないってことだ」

「ふーん。よくそれで、おじいさまも認めてくれたんだね――」

 真莉は一考してから、

「でもそれって、未夏ちゃんとゆかりちゃんが辛い思いをするだけなんじゃない?」

「大丈夫だ。二人の了解はとってあるから」

「透ってさ……女性に恨まれる才能ありそうだよね」

「…………その話、詳しく聞かせてくれないか?」

 希望をもたらした春は役目を終えて過去へ過ぎ去る。

 高校生一人と小学生二人。遠い未来を約束した者同士の同棲生活が始まった。

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遥かな花嫁 地引有人 @jibikiarihitoJP

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