第2話 私のメロス

 わけあって、ここ連日デリバリーフードサービスを利用している。私が利用しているのはウーバーイーツというサービスで、スマートフォンのアプリから注文すれば、すぐに近くで待機中の配達員さんがピックアップして自宅まで届けてくれるものだ。

最近では友人もお裾分けなど持ってきてくれる際、「こんにちは〜!ウーバーイーツで〜す」とインターホン越しに冗談を言ってくれるくらい。身近な存在になったのだと思う。

 さて、今日オーダーしたのは久しぶりのマクドナルド。注文を確定してすぐに配達員リョウスケがピックアップに向かってくれた。顔写真も表示されるのだが、筋骨隆々でいかにも健康そうな若者だ。

「リョウスケさんは自転車で店に向かっています」という表示と共にマップ上に自転車に乗ったキャラクターが表示されている。店まで2kmほどありそうだが、やはり見立て通り足腰には自信有りのようで、リョウスケは爆速で店へ向かっている。

これは思っているよりも届くのが早そうだ、とソワソワしていると、店に到着してからリョウスケの動きがあやしくなった。マップの上で右往左往し始めたのだ。我が家は住宅街のやや入り組んだ所にあるのだが、リョウスケはどうやらこの辺りにあまり土地勘がないらしい。最短ルート、大通り単純明快ルートのどちらも外し、そこを通るのかリョウスケ、というような信じられない道を辿り何とか彼が到着した時には、胸をなでおろした。それは子供をはじめてのおつかいに出した気持ちに似ていた。

 無事にインターホンがなった。これは本物のウーバーイーツさんだ。リョウスケは私の心配などつゆ知らず(当然だけど)淡々と商品を渡してくれた。本当に便利な世の中になったものだと、ハンバーガーを頬張りながらつくづく思った。

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みんなみかん 三国鹿子 @shiratae

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