第2話 [異世界転移]

(瑞樹side)


三神 瑞樹。中学2年生の一四歳。

運動神経・学問共に普通。趣味はルービックキューブ。周りからの評価は『三上くんは、気配りができて良い子ですね。』


 そんな僕は母に頼まれたお使いに向かう最中、突然現れた魔法陣に吸い込まれる。 


 目を開くとそこは、だだっ広い草原に黒いマントの下に、白いブラウス。グレーのズボンを履いた少年が僕を覗き込んでいた。容姿は、金色の髪で健康的な肌。腹が深い顔つき。ガイジンさん?


「お前は誰だ?」


 この展開ってまさか……。異世界転生!?

この場合は転移になるのかな?子供の頃夢見たファンタジー世界に飛び込んでしまったらしい。体が震えるほど喜びが込み上げる。


 辺りを見回すと、沢山の生徒に囲まれて、僕を物珍しいそうに見ていた。草原の奥の方に中世ヨーロッパで出てくるような石造りの大きな城が存在感を漂わせている。


凄いなぁ。

こんな世界があるなんて…。

ゲームでしか見た事ないよ。


「お前は誰だ?」


 イケメンさんが僕にもう一度聞いた。いけないいけない。また自分の世界に入ってしまってた。質問されたら答えなきゃ。


僕は雑念を捨てる為、頭を振って答える。


「僕は、三神 瑞樹(みかみ みずき)です!」


よし言えたぞ。

緊張した……。

喋ってる言語が日本語でよかった。


「お前は平民か?」


 平民?日本だと貴族とか身分制度なんて無いからなんで答えれば良いのか?天皇陛下は、国王で総理大臣は秘書的な感じ?


もっと勉強しとけば良かった。


 考え込んでいると新しいイケメンさんが現れた。

同じ制服を着ていて容姿は、青色の髪で透明感漂う白い肌。ニコニコとした細長い目。


先程とは違うタイプのイケメンだ。


「リアム、『召喚魔法』で平民呼び出してどうするんだよ。使い道あるのか?」


リアム?

僕を召喚したのは人はリアムというらしい。

名前までかっこいい…。


「無意味な奴が召喚されるわけないだろう。」


馬鹿にされると思ったが、リアム君は庇ってくれた。

優しくてイケメン……。こんな男がモテるんだろうなぁ。


「そう言ってもさぁ、強がっても流石に無理だろ。弱そうだもん。」


誰かがそう言うと、クラスのみんなが爆笑する。


 なにこの感じ……。リアム君が完璧過ぎて僻んでるの?こう言う奴うちのクラスにも居たな……。

クタバレ!!


「ミス・ミネルバルーラ!」


リアムが誰かを呼んだ。


 メガネをかけたインテリ系の女性が現れた。綺麗な人。セクシーな先生って感じで生徒から人気が出そうな見た目だ。


僕はあまり好みでは無い。


「なんだね。ミスター・ミリアムズ」

「召喚した者を送り返すことは可能か?」


帰還方法は、知りたい。

僕のために聞いてくれたんだ。

リアム君は気配りも上手なんて。僕に勝てる所なんて一つもないよ。


「無理だな。一度召喚した者は送り返す事ができる。」

「そんな…。」

「諦めろ。ミリアムズ。」


リアム君が僕のためにガッカリしてくれた。

あぁ。なんて尊い存在なんだ。


「しかしながら、人間を『使い魔』にするなんて前例がありません。もう一度召喚させてください。」


きっと僕が危ない目に合わない為に……。


 ミス・ミネルバルーラは、首を振ると再び周りがどっと笑う。


 このクラスメイトムカつくな。ドアの角に小指ぶつけるように祈ってやる!!


「おい。」


はい!なんでしょう。


「巻き込んで済まないな…。不便はさせない様にする。」


あぁ。なんて気高い存在なのだろうか。

きっとリアム君こそがこの世界の主人公なんだろう。


 せっかくお声を頂けてるのに返事をしないなんて万死に値する。返事を考えなければ……。失礼がないように。


「大丈夫ですよ。僕を心配してくれているのは伝わりましたから」


 僕はニコりと笑った。


 リアムは手に持った背丈ほどある杖を僕の前で振り上げる。


「我が名は、リアム・ブラン・ミリアムズ。この者に加護と祝福を与え、我が道を進む友となれ。」


詠唱だ…かっこいいなぁ。


リアムは杖を放し、ゆっくりと僕に唇を近づける。


「え、え?」


 キス!?確かに契約にはキスが付き物ですもんね!どんと来てください!準備は整いました。


「済まない。少しじっとしててくれ。」

「うん。」


ドクンドクン。


心臓の音が早くなる。


リアム君の唇が、僕の右手の甲に触れる。


 なんだ。口じゃないのか…。少し残念。って僕はそんなにチョロくなんかないぞ!僕は男だ!


リアムの方を見つめていると目が合った。


あぁ。かっこいい。


瑞樹の右手の甲に紋章が現れる。


 なにこれ……魔法陣?魔法が使えるようになったのかな?後でリアム君に教えてもらおっ!


「うわっ。本当に平民と『契約』しやがった。」

「リアムも地に落ちたな。」


何人かのクラスメイトが笑いながら言った。


僕いつでも戦闘準備出来てるよ!

いつでもオーケーだよ!リアム君!


「そうだな。目に余る行動だ。お仕置きが必要な奴が多いみたいだな。」


そう言ってリアム君は杖を回し呪文を唱え始めた。


「"君臨者よ、血肉を燃やせ・大地を燃やせ・全てを焼き払う炎の神よ・我に力を寄越せ。我こそ最強なり!"大魔法!煉獄!!」


 何もない所から、火が起きる。凄い…これが魔法なんだ。本当にファンタジー世界に来たんだ。


 魔法を見たことによって、異世界に来た事を更に実感する。


「流石。歴代最高の炎の適合者!」


 そうなんだ。カッコ良くて、優しくて、気配りが出来て最強。これはクラスメイトが僻む気持ちもわかっちゃうな…。許さないけど。


話しかけるのも恐れ多いけど、これだけは聞かなきゃ。


「あの……。僕これからどうしたら良いでしょうか?」


大丈夫かな。

キョドって無いかな?

気持ち悪がられて無いかな?


「戸惑ってるところ悪いが付いてきてもらえないか?」

「…はい。」

 

リアム君は僕の手を引いて、案内してくれた。



 こうして異世界に転生された瑞樹のリアムを見る目は曇っていくのであった。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

使い魔召喚したら『日本人』が現れた! @jimgai

★で称える

この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。

フォローしてこの作品の続きを読もう

この小説のおすすめレビューを見る

この小説のタグ