使い魔召喚したら『日本人』が現れた!

@jimgai

第1話  プロローグ

「お前は誰だ?」


 召喚陣の上に現れた一人の男性の顔を覗き込んでいった。


 俺より年下みたいだな。上下揃ったジャージ姿。ビクビク怯えている。


 顔は……。可愛い。男の癖に女みたいな顔しやがって。黒色の髪と日焼けなどした事がない様な白い肌。一際輝く黒色の目がウルウルと涙を浮かべている。この国の出身ではなさそうだ。キエナス辺りから来たのだろうか。


 しかし、この男が来ている服は見た事がない。なんと言うダサさか。平民でももっと良い物を着ているのでは無いか?男がポカァンとしていたので、もう一度声をかけた。


「お前は誰だ?」


男は意識が戻ったのか顔を振りながら言った。


「僕は、三神 瑞樹(みかみ みずき)です!」

「お前は平民か?」


 男は手を顎に当てて考え出した。急に連れて来られたのだから仕方ない。頭を整理する時間をやろう。


「リアム、『召喚魔法』で平民呼び出してどうするんだよ。使い道あるのか?」


俺の親友ノアが、呼び出された瑞樹の顔をじっと眺めていた。


「無意味な奴が召喚されるわけないだろう。」


「そう言ってもさぁ、強がっても流石に無理だろ。弱そうだもん。」


 誰かがそう言うと、クラスのみんなが爆笑する。


(貴族の間抜けどもがうるさい。早くこの場を収めなければ。)


「ミス・ミネルバルーラ!」


 我らの頼れる魔法学校の教頭!この状況をなんとかする方法を教えてください。強がっていても、俺の胃はキリキリと悲鳴をあげています。どうかお力添えを!!


「なんだね。ミスター・ミリアムズ」

「召喚した者を送り返すことは可能か?」


 頼む、そのまん丸メガネは伊達じゃ無いって示してくれ!


「無理だな。一度召喚した者は送り返す事ができる。」

「そんな…。」

「諦めろ。ミリアムズ。」


俺の使い魔が平民……。

なんで人間なんだ……。

諦めるな、何かあるはずだ。


「しかしながら、人間を『使い魔』にするなんて前例がありません。もう一度召喚させてください。」


 ミス・ミネルバルーラは、首を振ると再び周りがどっと笑う。俺はクラスメートを睨みつけるがそれでも笑いは止まらなかった。


 もっとも重要視される使い魔召喚で人間を召喚させるなんて……。不幸だ。


「おい。」

儀式を完了させる為、瑞樹に声をかける。


「巻き込んで済まないな…。不便はさせない様にする。」

「大丈夫ですよ。僕を心配してくれているのは伝わりましたから」


 瑞樹はニコりと笑った。



 なんで良い子なんだ。突然連れて来られた。いや誘拐と言っても過言では無いのに、この男は俺への気配りをしてくれる。クソ貴族たちはこの男の爪の垢でも飲んで見習うと良い。


 俺は手に持った背丈ほどある杖を瑞樹の前で振り上げる。


「我が名は、リアム・ブラン・ミリアムズ。この者に加護と祝福を与え、我が道を進む友となれ。」


俺は杖を放し、ゆっくりと唇を近づける。


「え、え?」

「済まない。少しじっとしててくれ。」


「うん。」


俺の唇が、瑞樹の右手の甲に触れる。

顔真っ赤にしている瑞樹と目が合った。


辞めるんだ。俺はノーマルだ!

そんな目でおれを見るんじゃ無い。

俺だって初めてだったんだ……。


瑞樹の右手の甲に紋章が現れる。


「うわっ。本当に平民と『契約』しやがった。」

「リアムも地に落ちたな。」


何人かのクラスメイトが笑いながら言った。

契約が残ってたから手を出さないでいたんだ。


「リアム、もう良いんじゃ無い?」

ルイがニヤニヤしながら言った。


「そうだな。目に余る行動だ。お仕置きが必要な奴が多いみたいだな。」


俺は杖を回し呪文を唱える。


「"君臨者よ、血肉を燃やせ・大地を燃やせ・全てを焼き払う炎の神よ・我に力を寄越せ。我こそ最強なり!"大魔法!煉獄!!」


 クラスメイトを炎で囲む。燃やしはしない。平民を馬鹿にした事を悔い改めると良い。


「流石。歴代最高の炎の適合者!」

「フンッ。お前も似たようなものだろう。」

「ふっふーーん。わかっちゃう?」

「茶番はよせ。ルイの事を知らない奴はこの学園にいないだろ?」


 普段は調子に乗っているが、ルイの戦闘は酷く残虐で相手に一切の希望を持たせない。手加減はせず淡々とモンスターを倒す姿は、『氷の帝王』と呼ばれていた。


「あの……。僕これからどうしたら良いでしょうか?」

瑞樹がオドオドしながら言った。


「戸惑ってるところ悪いが付いてきてもらえないか?」

「はい。」


 俺の後ろに立つ瑞樹にルイが近づいて、瑞樹の右手の甲を確かめる。


「リアム〜。瑞樹ちゃん、見たことない紋章だよ」


ん??まさか……。


「確かに見た事がない紋章だ。会いたくないが今度アイツに聞くとしよう。」


 俺は瑞樹の手を引いて、学生寮の自室にむかう。

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