後編(ヒロイン視点)
私、宇垣星羅。さっき人を殺しちゃった。
殺した相手は元彼の俊くん。
星羅にとっての王子様だったの。
さて、王子様を殺した人魚姫はきっと普通に生きてけるんだろうけど、星羅は人間だから普通には生きてけないよね。
どうしよう。自首するべき?
…でも、わたし、お姫様になりたかっただけだもん。他の子を好きになった俊くんが悪いんだよ。
取り敢えず、包丁持ってここから逃げようか。
今は多分深夜2時くらい。河原まで走った後、包丁の指紋を拭き取って、川に投げ捨てた。
ここからどうする?星羅、あんまり頭は良くないんだよね。「可愛い」を免罪符に色んなことが許されてきちゃったから。
でもさっき初めて、「可愛い」じゃ赦されない罪を犯したの。何だろう、変な感じがする。星羅はどうしたらマトモになれたんだろう。パパがよく言ってた、マトモな大人になりなさいって。ママは賢い大人になれって言ってたっけ。厳しい両親に別々のこと言われ続けた星羅はぶっ壊れて、毎日錠剤を飲まないと眠れなくなっちゃった。
あ、そういえばお薬切れちゃってた。でも、今の時間、精神科はやってないよね。
うーーん、お家帰るのもなんかやだなぁ…。取り敢えず、ネカフェ行きますか。
駅前のネットカフェに入る。ここはよく、デートで俊くんと来てたところだ。カップルシートの人たちは、大体性行為をしてて、ちょっとうるさくて嫌だった。星羅、うるさいのと汚いのは無理なの。俊くんは別なんだけどね。ぼーっとしている間に39番のカードキーを渡された。
「ごゆっくりどうぞー」
店員が言う声がぼんやりと聞こえた。
「疲れたぁ…」
取り敢えずパソコンをつけてAPEXを開く。
「ラグいなぁ」
開いてみたは良いものの、操作が分からない。
だって全部俊くんの真似だ。
俊くん…会いたいな。
やっぱり警察さんのところ行くか。そう思った矢先、ドアが叩かれた。
「すみません、警察署の者ですが。宇垣星羅さんですよね?」
「ひぇ…なんで??」
周りには知らない人の喘ぎ声が響いている。すっごいシュール。
「開けてもらっていいですか?」
「はぁい。」
星羅が扉を開けると、目があった警官が顔を顰めた。
「よくその返り血でネットカフェに来ましたね…。」
「え?返り血??」
警官に言われて下を見てみると、確かに白いワンピースは赤いシミだらけだった。
「渡辺俊さんの件で、署までご同行願います。」
「あ…はぁい。」
星羅は何が何だか分かんなかった。
車の中で聞いた話によると、ネカフェの店員さんが血塗れの星羅を見て警察に通報したらしい。
その前に、俊くんの隣人さんが救急車を呼んでたらしくって、絶対関係あるじゃんってことで星羅のところに来たらしい。
「俊くんは?俊くんやっぱり死んじゃってる?」
「あー…それが…まだ亡くなってはないみたいです。」
「意識不明の重体??」
ニュースでよく聞く言葉だ。
「そうです。まさにそれです。」
俊くんて、生命力凄いなぁ。2箇所も刺したのに、、流石星羅の王子様だなぁ。
ーープルルルル、警察官の電話が鳴った。
「もしもし…はい、はい。本当ですか!良かった。取り敢えず逮捕しときます。」
「警官さん、俊くんは生きてるんですか?」
「はい。宇垣星羅さん、あなたを殺人未遂で逮捕します。」
「はい、喜んで。」
王子様を殺し切れなかった上に、泡にもなれなかった。
私はやっぱり、人魚姫になれないらしい。
ハッピーエンドを迎えたかった人魚姫 有栖川ヤミ @rurikannzaki
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