第5話 家庭




「包丁の捨て方、調べないとな、、、。」


倉庫の鍵を玄関に戻し、帰路に着く。

結婚して子どもが生まれてから実家の近くに家を建てた。

徒歩で20分くらいの距離だ。


「ん?」


肉の焼ける匂いが鼻に飛び込む。

ここらに焼肉屋はなかった。


「ああ、ここか。」


匂いは知らない家の換気扇から漏れていた。

肉の焼けるいい匂いに、頭の中まで支配された。

食欲を刺激される。

思わず、足を止めて嗅いでしまう。

数十秒その場に居ると、前から人が歩いてくるのが見えた。

そこで我に帰った。

危うく父さんと同じ趣味に目覚めてしまうところだった。




「ただいま〜。」


鍵を開け、自宅のドアを開ける。

いつもよりも軽く感じた。

一歩入っただけで安心する。


「お帰り!」


妻の声がより一層安心感を増してくれる。

ホッとしていると、また匂いが鼻に飛び込んできた。

肉の焼ける匂いだ。

帰宅途中に換気扇から漂ってきた匂いと同じだった。


リビングのドアを開け、すぐに食卓に目を奪われる。

テーブルの中央に鎮座していたのは、ハンバーグだった。


「ハンバーグの匂いだったのか!!!」


答えのわからないクイズが解けた時の様な、スッキリした気持ち。


「どうしたの?お腹空いてたの?」


「パパって食いしん坊だね!」


「僕もお腹すいた〜!」


妻と子どもたちが笑っていた。

息子は今年年中になったばかり、娘は小学校2年生だ。

二人とも大きな病気や怪我もなく、すくすくと育ってくれている。


「パパ!手洗ってきて!食べちゃいましょう!」


妻に促され、手洗いに向かった。




この日は妻の美味しいハンバーグでお腹が満たされ、片付けの疲労感も相まって風呂に入ってすぐに寝てしまった。


また実家の片付けを進めなきゃなと思いながら、、、。



  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

本日の夕飯はカレーですか? enmi @enmi_o3

★で称える

この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。

フォローしてこの作品の続きを読もう

この小説のおすすめレビューを見る