第4話 素直になれない私たちは ~消えた初恋~

次の日も雨だった

昨日と同じようにバス停には学生が並んでいて、私も一応列に並ぶ

でも、きっといつものように列からはみ出るんだろうな

ポケットから響く、ラインの通知

メッセージを開くと

(今日、部活の朝練があって、早めに行くからバス乗らない。待ってなくていいよ)

と送られてきていた

いつも、ラインのやり取りはお互いに雑でスタンプも使わない

見慣れた文章のメッセージが

今日はとても寂しく、突き放されたように感じた

(分かった)

打ち慣れた言葉を返信する

プシューと開きだすバスの扉

昨日まで座ることがなかったのに今日は座れている

座れて、長い間バスに揺さぶられることがないのに

脚がつかれなくて済むのに

全然、嬉しくなかった

やっぱり、私には君がいないと何もつまらない


「失礼しました。」

体育の倉庫のカギを返し、職員室を出る

ドアを閉め、横を向くと葵が立っていた

葵の顔が見れて喜ぶ私に昨日の後悔が襲ってくる

「なんで、ここにいるの?ご飯食べないの?」

「ご飯食べようと思ったけど、その前に蝶舞に話が合って」

「話って…」

葵があまりに真剣な顔だから、いつもの調子の中身のない話じゃないと思った

「とりあえず、ここだと人来るから体育館行こ」

前を歩く葵の後ろ姿をついていく

体育館にあるステージに横並びで少し間を開けて座る

さっきまで騒がしく授業をしていたからか、すごく静かに感じる

長く沈黙が続く

「話がなかったら、お腹すいてるしお弁当食べに行ってもいい?」

沈黙に耐えられず、立ち上がろうとした時

「俺…」

やっと口を開いた葵は横を見ると俯いたままで

「一か月前に同じ部活の後輩から告白されて、断ったんだけど

この間、また告白されて…」

俯いていた葵が顔を上げ、私の方を見る

「今の話聞いて、どう思った?」

急に投げかけられる質問

なんで感想求められているの私

「ど、どうって…これって恋愛相談?別に私、思うことないし、アドバイスも

 てか、なんで断っちゃったの?せっかく告白してくれたのに」

「いや、付き合うことにした」

体が固まった気がした

「えっさっき断ったって」逸らしていた視線をまた葵の方へ向ける

「もう一度告白してきてくれた時、笑顔で好きだって言ってくれて、

 この子の思いにちゃんと向き合おうと思って」

真剣な眼差しはいつの間にか笑顔に変わっていた

今、葵が考えているのは私じゃないことに心臓が締め付けられる

「蝶舞に伝えておきたくて、今話した」

「よかったじゃん、葵のことを好きになってくれる子がいるなんて

 一生彼女ができなかったらどうしようかと思ったよ」

と冗談交じりで笑う

だけど、なぜか私は焦っていて

片思いしている子に彼女ができたって伝えられる時って本当は落ち込むはずなのに

言葉を失うどころか、いつも以上に話してしまう

「だから…これからは一緒に登校できないかも、ごめんな」

そんな私に最後の一撃をくらわす

「そんなこと、小学生でもないんだから大丈夫だよ」と頑張って作る笑顔

嫌だよ

急にいろんなことが進みすぎて、ついていけないよ

「蝶舞」

「話ってこれだけ?ごめん、もうお弁当食べる時間なくなるから先行くね」

名前を呼ばれたことははっきり聞いていたのに

これ以上、二人でいるのが苦しくて被せるように言って、背を向けた


次の日から、葵はバス停に来なくなって

廊下ですれ違う時、顔を見れなくて私は自然と葵を避けていた

そしたら、話す内容も時間も無くなっていって

卒業する頃にはお互いに連絡すら取らなくなっていた


私の初恋はこうして終わってしまった。

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やっと、恋に落ちたよ @Makuro321

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