エピローグ

「というのが、この高校のジンクスだ」


 私は一部話を抜粋しながらも、茜たちにありのままの出来事を話してやった。茜たちは私の話に一度も口を挟むことなく、真剣に聞き入っていた。


 あれから十一年、今ではもういい思い出となっている。


 後夜祭の花火は今でも毎年打ち上げられている。生徒や近所からも好評であったことから生徒会の動きもあって、恒例行事となった。


 まさか、文化祭のジンクスになるとは誰一人として思いにも寄らなかったことだろう。司と美晴の出来事から毎年、嵐吹公園にあるあの木の前で1発目の花火と同時に告白が成功するというジンクスが生まれた。


 本人たちもまさかそんなジンクスが生まれていたとはと顔を真っ赤にしていた。


 この高校を卒業した後、私たちはそれぞれの夢に向かって頑張った。祐一は夢であった小説家になることはできた。なりたての頃は締め切りがやばいとあせっていたのが昨日のことのように覚えている。


 司は祐一が本を出していた出版社で今も働いている。千里は大学卒業後そのまま海外に渡った。時々連絡が来るので元気にやっていることは分かっているので何よりだ。


「へ~そんなことがあったんだ。もう、それなら美晴先生も教えてくれればよかったのに……」


 茜は顔を膨らませて不服そうにしていた。


 私も美晴もここ嵐吹高校の教師になることができた。美晴は自分みたいに本を嫌いな子が本を好きになってもらえるように国語の先生になった。


「そう責めてやるな、美晴先生だって昔のことを聞かれるのが恥ずかしいんだろう」

「まあ、話は聞けたから良いっか」

「それで、今回の依頼は何とかなりそうなのか?」

「うん! 紗絵姉、面白い話聞かせてくれてありがとう」


 用件はもう済んだようで、茜たちはさっさかと屋上からいなくなった。ほんと嵐のような子だ。こういうところはほんと姉そっくりだ。


「姉か……」


 私は茜たちにすべてを話したわけではない。もちろん都合の悪い話は聞かせていない。


 姉の失恋話なんて聞きたくないもんな。千里が司を好きだったというエピソードは一切話さなかった。


 そして、この物語には続きがある。これは私と千里しか知らない。文化祭最後の出来事だ。


――――――――――――――――――――――――――――


 残り2話となります。

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