第3章 本当の理由は

Xの独白2

 わたしが何故司に自分の正体を明かさないかって? そんなのは決まっている。司が事故に遭ってしまったのはわたしのせいなんだから。それなのに、司の前に出て行けるわけがない。


 司は優しいからそんなことはないと言ってくれるかもしれない。だけど、わたしはわたしが許せない。


 わたしが余計なことを言わなければ、司がバスに乗ることはなかった。そうすれば事故に遭うことはなかったはずなんだ。


 それに、わたしが正体を明かせない理由は他にもある。司のことを好いている人がいるからだ。


 もし、事故だけのことだったら、わたしは正体を明かして謝っていたかもしれない。だけど、司に好意を持っていることを知ってしまった以上、わたしは自分の正体を明かせない。


 その人はわたしにとっても大好きな人だから、裏切れない。それに現れたってどうなる? 司は私のことを今でも好きでいてくれているのか?


 そんなことはないはずだ。だって記憶もないのに、何故その子のことを好きだと言えるのだ。


 だから、わたしは司に正体にバレないようにしなければならない。幸運なことに、司が勝手にタイムリミットを設けてくれた。


 その期間までわたしは正体を隠し続ければいい。そうすれば、司がわたしのことを探すことはなくなる。


 そうすれば、わたしの初恋は終わる。それでいいと思っていた。


 だけど、司は事故のことを思い出してしまった。わたしはどうすればよかったのだろうか…… 

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