Phase.82 試射
82
「よし、そろそろいくか、リジル」
「うん」
すべての準備が終わると、完全武装したカネトリとリジルは兵舎から中庭に出た。周囲ではピンカートン探偵社の男たちが忙しなく出撃準備を行っている。
「リジルお姉ちゃん!」
コゼットは出てきたリジルの姿を認めると、駆け寄ってその胸に飛び込んだ。
「また戦いに行っちゃうの……?」
「ううん。違うよ。バーバラを助けにいくの」
不安そうに告げる少女に、リジルは優しく言って頭を撫でた。
その顔をじっと見つめて、コゼットは小指を差し出した。
「
「うん。約束」
リジルが小指を繋ぐと、コゼットは嬉しそうに笑って、次にカネトリに向き直った。
「変態のおじさんも」
「へっ……」
ガーンとショックを受けたようなカネトリだが、同じく指切りして約束する。
「バーバラは俺たちが必ず連れて帰るからな。それまでハックさんの言うことを聞いて、ちゃんといい子にしてるんだぞ?」
「うん。わかった」
コゼットは大きく頷いて、それから首を傾げる。
「あの白い鳥さんは?」
「あー、クローは……その、ちょっと散歩に行ってるんだ」
「そうなんだ?」
しばらくして、二人は傭兵たちと飛行船に乗り込んだ。
正午少し前、最後の物資の積み込みが終わると、〈
一行を乗せた硬式飛行船は上昇すると、プロペラを始動させ、北西方向に進路を取った。
そして――出撃から十分と経たない内に、それは起こった。
西の地平線が眩い緑色の閃光に覆われた後、大気中を震わせる衝撃波に襲われた。
万雷のような轟音が鼓膜を揺らし、操舵室のガラスにヒビが走る。飛行船はまるで滝に打たれる木の葉のように揉みくちゃになった。逆さまになった天地で、まるで彗星のような尾を引く、巨大な何かが雲を蹴散らして、天空高くに打ち上げられる。
「〈スカーレット砲〉……畜生、遅かったか」
世界が終わるかのような数十秒の後で、シグルドはぎゅっと拳を握りしめた。
――つづく
いよいよ盛り上がってきました第二部『ワンス・アポン・ア・タイム・イン・ディキシーランド』ですが、クオリティを上げてクライマックスまで書き溜めをしたいので、ここで一端、視点を移して幕間を始めます(唐突)
前々から構想を練っていた【極東編】でございます!!
主に過去編となります。皆さんも学校の教科書で習ったあの畜生男と、あの武器商人が登場します。
題して――『太田豊太郎の奇妙な冒険 The Tale of the Undersea Warship』
乞うご期待。
コツコツと続けております、『UNDERSHAFT Ⅱ -ワンス・アポン・ア・タイム・イン・ディキシーランド-』も最終幕に突入!
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