Phase.47 カイホウの時
47
その夜遅く、コゼット・ラビットは主のフィル・ストーンマンの書斎に呼び出された。
昨日、弁当を届けるのが遅かったという理由から、御曹司のケビン・ストーンマンに強かにお仕置きを受け、ひりひりする背中の傷は治っていなかったが、週一度の頻度で行われる『お勤め』に、そんな言い訳はまったく考慮されなかった。
「裸におなり」
そう言われ、獣人の少女はゆっくりと服を脱いだ。下着をすべて外し、獣毛に覆われた全身をご主人様の前にさらけ出す。よく聞こえる長い耳は委縮して縮んでいる。
ローブ一枚だけを身に纏った男は、すでに勃起していた。
長大で赤黒さを帯びたそれから、少女はさっと目を逸らした。同時に青白く、不敵な笑みを浮かべる悪魔と目を合わせないように目を閉じる。
こういう時、目の前の男には悪魔が憑りついているのだと、コゼットは本気で思っていた。
「ああ、可愛いコゼット……」
「…………」
嫌悪感に全身の毛がゾワリと逆立つ。恥辱にまみれた行為に涙が滲むが、いつものことだと必死に自分に言い聞かせる。
泣いていると鞭が飛んで来るのは、経験からよく知っていた。
軽い愛撫の後、コゼットはテーブルに立つように指示され、その上に載せられた銀のトレーに屈み込むように指示された。男はその間に顔を入れ、舌と羽ペンを使って敏感な生々しい露出部を
「出しなさい」
コゼットは無言で放尿した。このぐらいならば、苦痛でも何でもない。
温かな体液を顔に浴びてご満悦の屋敷の主は、自分のものをしごきつつ、コゼットの背中の毛皮で尿を拭い、それからハアハアと息を切らして凶暴性を露わにした。後ろ手にコゼットの片腕を捻じり上げ、乱暴に突き倒す。
「痛っ!」
「我慢しろ!」
ストーンマンは万力のような力で少女を押さえながら、嫌がって首を振るコゼットに猿轡を噛ませ、ベルトを使って両足を縛りあげた。少女をテーブルに固定すると、口もとを歪めて、その上にのしかかる。
「喉を締めてやる。喉仏の真下の管を、時間をかけてゆっくりとな! 今日は特別だ。いつもよりも、ずっと気持ちよくしてやるぞ」
「……っ! ……っ!」
声を出せないコゼットは、その顔を見てはっと目を見開き、ふるふると顔を振る。我慢していたが、あまりの恐ろしさに瞳には涙が滲んでいた。
フィル・ストーンマンはその首に手をかけたまま挿入し、ぎゅっとゆっくりと力を加えた。今まさに腰が振られ、男に蹂躙される感覚も、呼吸が途絶えてしまったという事実にはなにも及ばなかった。耳もとで自分の首の骨がポキポキと鳴る恐ろしい音が聞こえてくる。
「おお、おお! いつもよりよく締まるぞ、わはははっ!」
「……っ、……っ……」
口もとから漏れた空気は言葉を成さず、首にかかる圧力は増していった。
所有物を殺しても、主人はとくに罪には問われない。州によっては軽い罰金がある程度だ。
ああ、ここで死ぬんだと、コゼットは死を覚悟してぎゅっと目を閉じた。しかし、その時、不意に力が緩められ、ストーンマンの困惑した声が聞こえてきた。
「……なっ、なんだ貴様――」
「…………」
その先は聞こえなかった。次に聞こえてきたのは言葉ではなく、ドサッとテーブルの上からなにか重いものが落ちる音だったからだ。
「ゴホッ! ゴホゴホッ!」
気道が回復し、コゼットは大きく咳き込むのと同時、新鮮な空気で肺を満たした。
「ごめん……トリ……殺しちゃった」
「いいさ。お前が……俺が殺してたところだ……」
コゼットは目を開いた。酸欠で歪む視界には、首から赤い血をドクドクと流しているフィル・ストーンマンが倒れていて、その向こう側にクランの白い覆面を着けた二人組の侵入者が立っていた。
「まったく、ひどいことをする」
二人組の内の一人、背の高い男のほうがコゼットの手足を解放すると、もう一人の背の低い女が抱き起して、その慈愛に満ちた赤と銀の瞳を少女に向けた。
「助けにきた」
「おねぇちゃん……」
「大丈夫。何も言わないで」
「あり、がとう……」
コゼットは気を失った。侵入者の一人は強盗の仕業に見せかけるために書斎の中を荒らして財布や宝石などを奪うと、コゼットの身体を布で包んで優しく抱きかかえ、裸で息絶えている変態を横目に踵を返して夜の闇に消えていった。
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