第58話
同行者や護衛が見つからなかった場合は僕一人でダンスンザに残りマーウェル伯爵領都サインスへの旅の機会を待つ事に決めた。
翌日、伯父さんと僕は再度冒険者ギルドにいた。護衛依頼の進捗状況の確認のためだ。
伯父さんがダンスンザを発った後は伯父さんが声を掛けてくれた取引先からの連絡を待つ、もしくは冒険者の護衛依頼の受理の連絡を引き続き宿屋・宵闇亭で待つ事になった。
僕と伯父さんが今後の事について話していると宿屋のおっちゃんが「それならしばらくウチにいていいぞ!その方が安心だろ?」と声を掛けてくれた。
宿屋の手伝いをする代わりにタダで部屋に住まわせてくれるとの事だった。ありがたい申し出に僕はもちろん伯父さんも宿屋のおっちゃんに感謝した。
それにしても不思議だ。ゲームの世界に生まれ変わっている事に気づいてから数年、今までいくつか出会いはあったけどその出会う人達全てが皆一様にいい人ばかりだ。
何か見えない力に守られてる様な気がしてくる。神様、ではない事は間違いないのでその違う何かに感謝した。この世界の神様は理不尽な存在だってゲームをプレイして知っているから感謝は出来ない。
「あっ!どうも!ちょうどよかった。今しがた丁度ご依頼の受理があった所なんですよ」
冒険者ギルドの受付で伯父さんが昨日対応してくれた同じ職員に声を掛けると、そんな応えが返ってきた。
伯父さんも僕もちょっと驚いた。昨日散々今後の事について話をして決めたのに拍子抜けだけど、いい知らせだ。
「依頼を受けた冒険者の方ですが食堂にいらっしゃると思います。良ければ今から面会されますか?」
伯父さんが僕を見たのでうなづき、お願いしますと職員に伝えた。職員はカウンターを出て食堂へ向かった。
どんな人だろう?ドキドキしながら待っていると職員の後に見覚えのある大きな身体の獣人の姿があった。
「お待たせ致しました。こちらが今回護衛依頼を受理された冒険者のサーロスさんです」
「サーロスだ。宜しく頼む......おおっ!君は先日の少年ではないか!君が依頼主だったのか!いやいや、改めてお礼をしたいと思っていたので丁度いい!宜しく頼むよ!」
手を差し出されたのでそれに応え握手した。ゴツゴツしていて力強い手だ。
伯父さんが不思議そうな顔していたので、この獣人さんとは先日ひょんなことから知り合った事を伝え、サーロスからは娘を助けてくれた恩人なんだと伯父さんに説明した。
どんな冒険者が来るかドキドキしてたけど、良かった。伯父さんもサーロスの振る舞いを見て悪い人じゃなさそうだと感じたのか安心したような笑顔になった。
その後、伯父さんと僕と獣人さんの三人で簡単な打ち合わせを行い出発は明日の早朝に決まった。
「ところで......なんだが。護衛依頼に娘を一緒に連れて行きたいのだが大丈夫だろうか?」
メルルの事だと分かった。僕はすぐに大丈夫ですと答えたけど、幼い娘だと聞いて伯父さんは微妙な顔をしていた。
ん?なんで?って伯父さんに目線を送るとそれに獣人さんが気づいて正直に説明してくれた。
実に簡単な話で小さな子供づれの護衛なんて足手まといを抱えている様なもので依頼者の殆どが嫌うって事。
まぁ、そりゃそうか。いざ危険が迫った時に依頼主か自分の子供かってなったら子供選ぶんじゃないかって懸念されても仕方ないしね。
サーロスも子連れの冒険者が嫌われるのを分かっている様で、実は僕の依頼の前に数件程サインスまでの護衛の依頼を受けたけど子連れって事で依頼先全てから護衛を断られたそうだ。
普段は護衛依頼を受けないらしいけど、元々サインスに行く予定があり、そのついでに護衛依頼を受けようとしていたらしい。
中々決まらないので諦めようと思った時に丁度僕の依頼を見つけたので、駄目元で依頼を受理し、駄目なら諦めてダンスンザを発とうと考えていたそうだ。
伯父さんは心配していたけど僕が是非この人に護衛してもらいたいと言うと、分かったよと頷いた。
子連れの冒険者という事で不安はあるけど少なからず僕と面識がある点とこれ以上待っても同行者や護衛が見つかりそうもないという点で納得してくれたようだった。
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