第39話
フォレストウルフを倒しておっちゃんを助けた後、騎士団の人達から随分と驚かれたが、ゴーティが皆んなに暗くなってきたからすぐに森を出るよう促して僕も皆んなと一緒に急いで森を出た。
やっぱまずかったよなぁ。10才の農民の子供が普通に魔物倒したんだもんなぁ。バリバリ違和感あるもんなぁ。
何か言われる前にしれっと家に帰ろうとも思ったけど流石に戦闘を見学させてもらったお礼言わないと不味いよなと思い、ゴーティの所に恐る恐る近づき声を掛けた。
「き、今日は騎士様の素晴らしい戦いぶりを見せて頂き、ありがとうございました!
......それでは失礼致します」
「ネール君。いくつか聞きたい事があるが、今日はもう暗くなってきたから、明日の朝に天幕まで来てほしいのだが、いいだろうか?」
手短なお礼だけ言ってさっさと家に帰ろうと思ったけど明日に呼び出しを食らってしまった。断る訳にもいかず畏まりましたと告げて家に帰った。
やべぇ、明日何言われるだろ。全然予想が出来ん。その夜は、あーでもない、こーでもないと悩んでいると中々寝付けなかった。
そして翌朝、騎士や木こり達の野営地に向かった。野営地では大きな天幕がいつくか張られていた。ブルルッと鼻を鳴らす馬も数頭野営地にいた。
どこの天幕に行けばいいのかわからなかったからキョロキョロしているとちょうど騎士アドルの姿を見つけたので声を掛けた。
「おはようございます。マチカネ村のネールです。昨日は戦闘を見学させて頂きありがとうございました」
「やぁ!おはよう。今日はどうしたんだい?あぁ、そうか!そう言えば昨日副団長に呼ばれてたんだよね?」
「はい。それでどちらの天幕に伺えばよろしいのかわからなくて」
「そっか。なら僕が案内するよ。ついておいで」
「ありがとうございます」
という訳でアドルに案内してもらう事になり後ろをついて歩いた。
向かうまでの途中にアドルから随分朝早く来たんだねと言われたけどゴーティからは明日の朝としか言われてないし、そもそも時計がないから何時に伺えばいいかって聞き返せなかった。
こういう時は時計がないのって不便だなぁとか思ったりする。時計自体はこの世界に存在してるみたいでそこそこ値は張るものの平民でも買えない程高価な物ではないみたいだ。
ただ辺境の村の農民は普段時計の必要性を感じない生活をしている。マチカネ村の村人達も午前午後をお日様の大体の位置で区切ってるし、雨や曇りの日は腹時計でなんとなく判断している。
なのでいつも木こり達が作業を開始する時間より前にと思って来たのだけどちょっと早く来ちゃったみたいだ。
「ゴーティ副団長!失礼致します!マチカネ村のネール君に来て頂きました!」
野営地の一番奥、村から一番離れている天幕に着くとアドルがその入り口から呼びかけた。
「ご苦労。通してくれ」
ゴーティからの返事が返って来たので僕は失礼致しますと声を掛けてから天幕の中に進んだ。アドルはついて来ないようだ。
天幕の中には椅子と机があり、ゴーティが椅子に座ってこちらを見ていた。机の上には何やら地図っぽい物があった。マチカネ村周辺の地図っぽい。
「やぁ、おはよう。わざわざすまないね」
「おはよう御座います。昨日はありがとうございました」
「何、気にしないでくれ。昨日も言ったが君の頑張りに報いたかっただけなのだから。それより君もそこの椅子にかけたまえ」
「ありがとうございます。失礼致します」
ゴーティに促され椅子に腰掛け、机を挟みゴーティと向かいあった。やばい。緊張してきた。何を言われるんだろう。
「それでは早速なのだが確認がしたい。君の年齢は現在いくつだい?」
「はい。10才です」
「10才、そうか。昨日君が魔物を倒した所を見たが中々の動きだった。君の年齢であの様に魔物を倒せるのは見事だと思ったが、戦い方を誰に教わったのだい?」
「その、特に、誰からも教わっていません」
「両親からだったり村人から魔物の倒し方を教わったわけではないのかね?」
「はい。両親も村の人達も皆んな農民なので戦い方を知ってる人は誰もいない、と思います」
「ふむ、そうか......」
(両親や村人の誰かが何かしら戦闘の知識がある、例えば元冒険者や元兵士等、そう言った人物から戦い方を教わったのであればある程度、納得がいく)
(例えそうだとしても昨日の戦いぶりは中々に素晴らしいもので、この子に才能があるのは十分に分かる)
(だが、もしこの子が言う事が本当で誰からも戦闘について教えられていないのであれば、この子にはとてつもない才能を持っている可能性がある)
ゴーティの表情が険しくなっている。怒ってる!?な、な、な、何かまずい事言った!?いや、問題無いはず。問題無いはずだけど、顔が怖いよぉ!ごくりと唾を飲み込み、心臓の音がバクバク、自分の顔が硬っていくのが分かる。やばいよぅ、やばぁいよぉう!
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