第27話

 尖った木の棒を携えた姿を母ちゃんに見られて変な顔をされたけど、特に何か言われる事なく家を出て湖に向かった。


 フォレストウルフに襲われて以降、初めての湖でめちゃくちゃドキドキした。


 湖に近づくにつれ足音を出来るだけ抑えながら辺りを警戒しつつ進み、湖に着いた。魔物がいない事を確認し、釣りの準備をして、早速ヨコヅナデビルを釣り上げた。釣り自体は慣れたもんである。


 さて、問題はここからで、ビチビチと元気に地面で跳ねまくるコイツをいかにして尖った木の棒で倒すか。


 初めてヨコヅナデビルを釣り上げた時に小石を投げつけたらカンッって音がして弾かれ、全身を覆う鱗はまるで金属の鎧の様に硬そうだって感じたのを思い出しつつ、尖った木の棒の尖った部分を見た。


 これじゃあ無理だろうなー。間違いなく木の棒の方が壊れちゃいそうだ。そうなると急所を狙いたいところだけど魚型の魔物だからやっぱり魚と一緒なのかな?


 魚の急所といえば人間でいう、こめかみあたりが確か急所だったと思うけど、そこもしっかりと鱗に覆われていて木の棒を通せそうにない。


 それなら口は?と思って跳ねるヨコヅナデビルの口の正面に立って見てみたけど、悍ましぐらい細かい歯がぎっしりで口に突っ込んだ瞬間木の棒を噛みちぎっちゃうかも。


 ならエラは?と思いエラを見てみると、なんかいけそうな感じがした。これ、エラから刺し込めばいけんじゃね?取り敢えず刺してみるか。


 木の棒を両手に構えエラを目掛けて突いた。だけど、ビチビチ跳ねていて狙いがずれて外してしまった。ならばと何回か連続で突いてみると、ズボッと木の棒の尖った先がエラの中に入り込んだ。


 苦しんでいるのかヨコヅナデビルがめちゃくちゃ暴れ出したので力を込めて木の棒をさらに奥へ刺し込んだ。グジュって気持ち悪い感触が木の棒を持つ手に伝わり、暴れていたヨコヅナデビルも次第に動かなくなった。


 鑑定してみるとHPが0になっていたので、なんとか無事倒せたみたいだけど、槍術のスキルは手に入らなかった。農民のジョブだし戦闘系のスキルは手に入りずらいのは予想していたので仕方がないかな。


 それより直ちにヨコヅナデビルの死体を処分しないといけない。ヨコヅナデビルに刺さったままの木の棒を持ち上げ、湖に向けて思いっきり振り倒すと、勢いよくヨコヅナデビルの死体が湖に飛んでいった。


 多分これで他の魔物は寄り付かないと思うけど可能性はゼロじゃないと思う。魔物がいつ出てきてもすぐに逃げ出せる様に警戒しつつ、釣りを続けた。

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