第26話

 家の中を色々漁ってみたけどやっぱり武器になりそうなものはない。唯一包丁が一本あったけどこれは流石に使えない。


 普段母ちゃんが料理に使っているもので父ちゃんと結婚した時に家族から結婚祝いに贈られたものらしい。


 さほど裕福でない農民にとってはとても貴重で母ちゃんも刃がかけたりしないように毎日大事に使っているものだから勝手に持ち出して武器として使うのは忍びない。


 その他の金属が使われている農具についても同様に、農民にとっては貴重な物だから使えないし、そもそも農具だとスキルも習得出来そうにない。やっぱり自分で作るしかないか。


 というわけでいつもの様に午前中に農作業の手伝いを終え午後から槍作りに取り掛かった。先ずは槍になる木の棒だけどこれは既にいくつか拾ってきていた。訓練としてランニングしてる時に集めておいた。


 本当は木じゃなくて竹が欲しかった。農民と云えば竹やりでしょ。だけど竹は全く見当たらなかったので父ちゃんに聞いてみると、竹自体はこの世界に存在していて比較的珍しいものではないみたいだけど、この辺りでは全く見かけないらしい。


 もしかしたら森の中に竹林があるかもしれないけど魔物が襲ってくるから誰も確認した事がないんだとか。竹が手に入らないのは残念だけど仕方ないから木の棒を使う事にした。


 というわけで木の棒を加工をしようと思うのだけど釣り針を作った時と同様、加工する道具がないのでザラザラの岩で地道に擦って尖らすしかない。


 集めていた木の棒はサイズや型が様々で、その中で一番硬くて扱いやすそうな大きさの物を一本とり先端を鉛筆の様なイメージで擦って削っていった。


 魚の骨を釣り針に加工した時は一ヶ月かかったけど、こちらは2〜3日で型になってきた。釣り針を作る時と同じ工程で削ったんだけど骨より木の方が柔らかいのもあるけど、レベルアップの影響もあるみたいで、強く力を込める事が出来る事で削るスピードが速くなっている様に感じる。強くといってもあくまで9才児にしては、って感じだけど。


 そして一週間程でなんとなくイメージしていた型の槍が完成した。簡単に言っちゃうと鉛筆を大きくした様な形で、突くのに特化した物になった。とりあえず鑑定してみよう。



尖った木の棒

レア度G



 尖った木の棒って...。

 槍じゃないんかい。

 しかもレア度最低のG、か。


 その後できる範囲で試行錯誤してみたけど尖った木の棒が槍になる事はなかった。もうこれを使っていくしかないな。


 少しでも早くレベルを上げたい焦りもあって武器の作成にあまり時間をかけたくない想いもあるし、名称は木の棒だけど槍判定されて槍術のスキルが手に入る可能性はある、と思うようにした。投石のスキルも投げるというより落とすって感じで習得できてるからね、多分、しらんけど...。


 そうして、尖った木の棒が僕の初めての武器となった。

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