第8話

 うーん、どうしたもんかなぁ。


 とりあえず宝箱の中身を取り出して箱は元の場所に埋め直した後、家に帰ってきた。


 ここが前世でプレイしたゲーム『デムナ戦記』の世界で間違いなさそうだ。


 にしてもゲームの世界に取り込まれた?なんて事が信じられない。でも確かに宝物はあったしマチカネ村も『デムナ戦記』のマチカネ村に間違い無さそうだしなぁ。


 何より困ったのがこれからどうしようって事。ぶっちゃけここがゲームの世界だからって何かしたい事がある訳でもないし、何か出来る気もしない。


 僕が生まれ変わったネールという人物は『デムナ戦記』に登場してなかったはず。つまり僕はモブキャラ、物語に関係しない人物なわけで、これが例えば物語の主要キャラとかだったら物語に沿った行動を取らないと世界が滅びる可能性があるから頑張らないといけないかもしれないけど、所詮僕は辺境の村の農家のただの子供だし。


 この世界がどんな世界でどういう未来を辿るか知ってるからって興味本位で物語に関わって物語の流れが変わって世界が滅亡するなんて最悪だしなぁ。


 ん?そもそも今は主人公が物語を辿る時代と同じ時代なんだろうか?


 台所で晩御飯の支度をしていた母ちゃんに今が何年か聞いてみた。


 「今が何年だって?えぇーと確か王国暦412...あれ?413年だったかな?それがどうしたんだい?」


 「そっか、ありがと」


 確か主人公がこの国にくるのが王国暦420年とかなんとかだったはず。この国にきた時は主人公は確か16才だったかな。てことは主人公と世代が被ってるのかぁ。


 まぁ、主人公が主に活動するのは王都が中心だし、この国かなり広いから出会う事もそうそうないだろう。主人公の事は無視しといて、というか忘れよう。主人公の事を考えたって何か変わるわけでもないし。


 それよりもこれだよな。


 ズボンのポケットから青い宝石のついたピアスと銀のブレスレットを取り出した。


 ピアスはサファイアピアスってアイテムでブレスレットは鑑定の銀輪ってアイテムだ。

 

 サファイアピアスは装着すると経験値取得5倍の効果がある。『デムナ戦記』はラスボスを倒してゲームクリア後に裏ボスと戦えるようになるのだけど裏ボスがかなり強いのでリメイク版では対裏ボス戦推奨レベルまである程度スムーズにレベルが上げれるようにこのアイテムを追加したらしい。


 正直この経験値取得5倍の効果がなくてもラスボスまではメインストーリーを消化するだけでそこそこレベル上がるから、そこまでゲームの進行に影響しない。


 鑑定の銀輪は鑑定スキルが使えるようなるのだけど『デムナ戦記』ではアイテムとか装備、敵味方のステータスはメニュー画面やコンフィング画面で常時確認できる。


 鑑定スキルを使うと特定のアイテムやキャラなんかの開発秘話とか性格とか特性とかおよそゲーム進行に関係ない詳細が追加で表示されるようになる。コアなファンユーザー向けのネタスキルってところだった。


 この2つのアイテムについても、どうしようか迷っていた。ゲームの物語の進行にそれほど影響を与えるものではないけど、だからといって僕が持っていていいものなのか。


 うーん、やっぱり元の場所に戻そうかなぁ。でも、農民の僕にとってはかなりレアなアイテムだしなぁ。折角だからこれは貰っとこうかな。

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