第7話

 『デムナ戦記』はクラッシックといっても過言でないほどシンプルなRPGで世界を救う為に主人公の男性デムナが紆余曲折していく。


 魔物や敵を倒して経験値を得てレベルを上げボスを倒す、が基本の流れ。


 職業システムもあり何十種類ある職業が下級、上級に分かれ職業によって自分好みの育成が楽しめる。


 パーティ制で主人公を入れて最大5人まで戦闘参加可能。パーティで編成できるキャラも複数いて好みの編成が可能。


 前世で僕が初めてプレイしたときはリメイク版だったがオリジナル版が発売された際はヒットしたようでシリーズとして続編が2作発売されており、僕はリメイクされたものだが全てプレイした。


 エルドール王国が登場し物語の主な舞台となるのは第一作目。第二作、第三作は舞台がそれぞれ違う国になる。


 そして僕が住むマチカネ村はリメイク版に追加されたボーナスステージ。


 物語中盤以降にミニゲームをプレイしお得なアイテムがゲットできる場所だが基本的にメインストーリーに関係ない場所だ。


 まさか本当にゲームの世界なんだろうか?


 確かめるしかない。


 という訳で早速家の農具から鋤に似た木製のスコップを母ちゃんに見つからないように持ち出し村の外れを目指した。


 確かあっちの方だったよな。


 村からしばらく歩くと森の手前に大きな岩がある。森に近づくにつれ地面に雑草が所々生えているが岩の周辺だけ雑草が全く生えていない。


 サブクエストでマチカネ村の魔物退治をクリアすると報酬としてこの場所でミニゲームを受けられる。


 雑草が生えてない岩周辺の地面のどこかに宝箱が埋まっていて3回まで掘る事が出来る。掘れる箇所は30マス分でそのうち宝箱があるのは2マス。


 3回掘って見つからない場合は再度クエストを受けてまた3回掘る事が出来る。何回でもやり直し可能となっている。


 クエスト自体ザコの魔物を数匹倒すだけなので直ぐに終わるし10回クエストをクリアすれば必ず宝箱を掘り当てる事が出来る。


 大きな岩の前に立ち辺りを見渡すと記憶にある景色にとても類似している。


 だんだん確信めいてきて、でも確定した訳じゃない。


 なんだかよく分からないけど早る気持ちに身を任せて早歩きで目的の場所に立つ。


 本当にここが『デムナ戦記』のマチカネ村なら、ここに埋まってるはず。


 小さな身体には扱いづらい大きさの木製スコップに力一杯こめて地面を掘る。たまに休憩しつつもしばらくすると目的の物を見つけ掘り出す事が出来た。


 小さな宝箱。

 

中には米粒大の大きさの青い宝石のついたピアス。


 「本当にここはゲームの世界なんだ」


 それならと、また違う場所に移動して地面を掘ると、もう一つ先程と同じ大きさの宝箱を掘り出した。


 中を見ると装飾のない銀色のブレスレット。


 間違いない。『デムナ戦記』だ、ここ。

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