第6話
僕の前世、山田恵一はゲーマーだった。
ゲーマーと言ってもFPS系やアクション系は衰えた目や操作する手指がゲームについて行けず苦手で、もっぱらRPGをプレイしていた。
僕がテレビゲームにハマったのは随分歳を取ってからだった。
大学卒業後、そこそこ大きな商社に新卒で入社し、そこで定年まで勤め上げた。
特に趣味などを持ってなかった僕は仕事に打ち込み邁進したおかげかそれなりの収入を得るようになり妻や子供達を十分に養っていけた。
定年を間近に控えた頃、妻とよく定年後についての話をした。
無趣味の仕事人間だった僕が急に仕事を失うと生きる気力を失うんじゃないかと心配した妻があれこれ提案してくれていた。
話し合う中で、とりあえず定年後は夫婦水入らずでのんびり旅行しようと決め、思いの外、僕自身も妻との旅行を楽しみにしていた。しかし妻は僕が定年退職した数日後に急病で倒れ、そのまま逝ってしまった。
長く連れ添った妻の死は随分とこたえた。
僕は仕事も失いしばらく引き篭もるようになった。
それから数年が経ちその間子供や孫達に随分と心配をかけたがなんとか妻の死から立ち直ろうと思い立った。
とりあえず何か打ち込めるものを探そう。
僕と同じく定年退職した元同僚達に久しぶりに連絡をとり相談するが、出てくるのはパチンコや麻雀などの賭け事やゴルフ等のスポーツ。どれもこれもピンとこない。
趣味というわけではないけど学生の頃から空手を習っていて社会人になってもしばらくは続けていたが、仕事が忙しくなり辞めてしまった。もう一度空手をやろうか、とも思わなかった。歳を取り身体の節々が痛みやすくなってたからだ。
ある日、息子夫婦が孫を連れて遊びに来た。小学生になる孫と会話すると孫が最近学校で人気のゲームが欲しいとねだってきた。
息子夫婦は孫に我儘言うなと叱ったが、学校で自分だけそのゲームを持っていないのは嫌だと駄々を捏ねていた。
僕は駄々をこねる孫の姿を見て昔を思い出した。
僕が小さい頃、自分の家が父子家庭で裕福ではないことは分かっていたが一度だけテレビゲームを父にねだった事があった。
買って貰うのは無理だろうと子供ながらに理解はしていたがゴネにゴネて、随分父を困らせた。
結局テレビゲームは買って貰えなかったがあの頃の僕はなんであんなに父を困らせる事が分かっていながらあのテレビゲームが欲しかったのか不思議に思うのと同時にテレビゲームというものに興味が湧いてきた。
ゲーム、やってみようかな。
駄々を捏ねていた孫に欲しがっていたゲームを買ってあげる代わりに最近のテレビゲームについて孫に教えて貰い、孫のおすすめのゲームをいくつか試した。
ゲームの話を介して孫とより仲良くなれたような気がしたのは良かったのだが、しかし孫のおすすめのゲームは僕には難易度の高い物が多かったり画面酔いする物が多かったので、どれも直ぐにプレイするのをやめてしまった。
そんな中一昔前に流行ったRPGのゲームタイトルのリメイク版が発売されたとネットニュースで知り、試しに購入したのだが、これにハマってしまった。
操作は簡単で自分のペースで物語を進めていけるのが非常に良かった。コツコツとレベル上げをする作業も性格的にはあってるし達成感もあった。
その後、そのゲームに出会ったのをきっかけにRPGを中心にいくつものゲームをプレイし続け、病気で入院するまでほとんどの時間をゲームに費やした。
ゲームにハマるきっかけとなったRPG「デムナ戦記」その中にエルドール王国やマチカネ村という名称が登場していた事を思い出した。
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