第4話

 前世の記憶を思い出してもネールとしての生活は変わらず、日々農家である父ちゃん母ちゃんの横について農業の手伝いをして過ごしている。


 マチカネ村の村人は全員が農家だ。


 魔物が少なく気候も良く、肥沃な土地が多いためマチカネ村の農家は農作物の収穫が安定しているので他所の農家と比べて割と裕福な方らしく、その中でも我が家は村で一番広い畑を持っている。


 なんでもまだマチカネ村がなかった頃、曾祖父ちゃんがマチカネ村を開拓した初期メンバーの一人だったようで、その時に色々活躍して当時の領主様からたくさん土地を分け与えられたらしい。


 しかし裕福と言ってもあくまで農家の中だけであって、儲けている商人や貴族なんかと比べると断然生活は貧しいようだ。


 だから子供を遊ばせておく余裕があまりないのでマチカネ村の子供達は自分の家の農業の手伝いをさせられる。


 手伝いに時間を割かれる事が多いのであまり子供同士で遊ぶ事がなく顔と名前は分かるけどコミュニケーションを取る機会はあまりなかった。



 そんなある日、父ちゃんがノーザンの町まで野菜を運ぶため荷車に野菜を積みこむ手伝いをしていると村の子供が3人と村のおじさんが1人近づいてきた。


 「やぁ、ダグ、ネール君、おはよう」


 おじさんが声を掛けてきた後に子供達3人も同じ様にあいさつしてきたのであいさつを返した。


 確かミノおじさんに、タコルくん、サンテくん、ラムちゃん、だったかな?どうしたんだろう?


 「おう!ミノ。予定より早いな。まだ準備終わってないからちょっと待っててくれ」


 父ちゃんとミノさんの会話を聞いてると、どうやら彼等は今日父ちゃんに付いて町まで行く予定みたいだ。


 町に行くのが楽しみで子供達が急かしたらしく予定より早く来たみたいだ。


 子供達3人も野菜を積む手伝いを買って出た。3人のウキウキした表情を見てるとまるで前世の自分の孫を見てる様で愛らしく思った。


 娯楽みたいなものがほとんどない場所だから町に行くのは子供にとって娯楽そのものみたいだな。


 僕も町にはまだ行った事ないからちょっと羨ましいかも。でも歩いて半日かかる距離は流石にしんどいだろうな。そのしんどさを差し引いても村の子にとって町に行く事は楽しみなのかな。


 3人とはほとんど会話をしたことが無かったけどルンルン気分の3人は饒舌でみんなで野菜を積みながらたわいも無い話をしていると気になる事があった。


 3人とも10才になったから教会で神様からのお告げを聴きに行くのが、今回の町へ行く目的らしい。


 はて?この辺りの宗教的な儀式なのかな?


 野菜を積みおわり荷車を引く父ちゃんとミノおじさんと3人の子供達が町に向かうのを母ちゃんと一緒に見送った。


 「あのさ、母ちゃん。僕も10才になったら町に行くの?」


 「あぁ、そうだよ。この国の子供は皆んな10才になったら教会に行って神様のお告げを聞くのが習わしなんだよ。普通はステータスを見るのに結構お金が掛かっちゃうんだけど10才になったら一度だけ無料で見せてもらえるんだよ」


 「へぇー、そうなんだ。......えっ!?ステータス!?」


 「なんだい、急に大声だして」


 「いやいやいや!母ちゃんステータスってなんだよ!?」


 「あれ?ステータスの事知らなかったかい?ステータスっていうのは神様が人それぞれの得意な事とかを教えてくれるものなんだよ。私も父ちゃんも小さい時に神様からお告げをもらって自分のステータスを見たんだよ」


 「その、ステータスって数字が書いてるやつ?」


 「なんだい、知ってるじゃないか。そうだよ。ステータスには数字が書いてあるよ」



 まじかよ。どうなってんだこの世界???

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