02
部屋へ向かうと誰かの声が聞こえた。楓君が起きて、何か動画でも見ているのだろうか。そう思って部屋を開けると、春臣君がいた。窓が開いているし…そこから…?本当にこの世界の人の身体能力は…恐ろしいな。
「春臣君、来るのはいいけど。音を出して音楽聞くのやめてよね。楓君、朝弱いんだからうなされちゃう。」
「起きないやつが悪いじゃん。」
くすくすと笑いながら、春臣君は音楽を止めた。なんというか、僕たちを困らせるのが好きだよなぁ。
僕は楓君をゆすって起こす。起きた時に見るのは僕か忍兄の顔がいいって言ってたし。寝起きの楓君、機嫌悪いととっても怖いし。楓君はのそのそと起き上がり、僕を見てほほ笑んだ後に、春臣君の存在に気が付いた。
「あれ?春臣くん…?は!まさか!!夢?」
「落ち着いて。忍兄がしばらく春臣君と登校しなって。」
「あぁ…なるほど。準備するから、先に下降りてて。春臣くんだけね。」
「はいはい。双子ちゃんたちの邪魔はしませーん。」
ひらっと手を振って下に降りて行った。幼馴染だからか、まるで自分の家かのように行動するよねぇ。
その後時間が差し迫ていたため、慌てて楓君の支度を手伝いながら、何とか3人で登校した。登校は問題なく、無事に帰れるだろう。そう思っていたけど、そうじゃなかった。
下校時間。何やら校門の方が騒がしい。なんというか黄色い歓声というやつが聞こえている。隣にいる楓君も首をかしげていた。春臣君が来ていないけど、どうするべきか。
「…陽奈くん、少しだけ様子見に行く?」
「そうだね。遠くから覗くならいいよね!」
2人で物陰から見ていると、どうやら正門前に高級車が止まっている。そして、その前には、竜宮さんが薔薇の花束を持って立っていた。…来るところ間違えてない?忍兄は此処にいないんだけど。2人でぽかんと見つめていると、後ろから春臣君がやってきた。
「あれか?忍が言ってた危険人物。」
「そう、やばい人だね。」
楓君が頷くと、春臣君がすたすたと歩いて竜宮さんに近づいていく。僕たちも慌てて後を追った。
「アンタが忍が言ってた、双子の誘拐犯か。」
春臣君がじろりと竜宮さんを睨む。さすがイケメンたち、絵になる…。
「そうだ。その件で謝りに来たんだ。」
竜宮さんは春臣君の後ろに隠れている僕たちを見る。そして、跪いた。
…ありえない!!!俺様会長が、こんなことするなんて!!!!
「お前たちが薔薇が好きだと聞いて用意したんだ。この間は俺様が悪かった。許してくれないか。」
これ、僕たちの好感度を上げる作戦だなぁ。忍兄に怒られたんだろうか。それに、薔薇が好きなのは楓君だ。僕はもらっても枯らしてしまいそうなので、ちらりと楓君を見る。楓君は花は欲しいけど、謝罪は受け入れたくないといった複雑な顔をしていた。
「…こんなことして許されると思ってる方が可笑しいんじゃねぇの?迷惑だってわかんねぇのかよ。」
春臣君がそういって、空気が凍り付くのを感じた。
サポートキャラである主人公の弟たちになったけど、兄が過保護です 九十九まつり @tsukumo_matsuri
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