不吉な音色

空乃晴

不吉な音色

まだ暗闇の中では灯火のない、日が暮れれば同時に眠る時代。

その時代には、まだオオカミたちは生きていた。

 だが、オオカミの生態を知る者は圧倒的に少なく、目撃者もそれほどいないものだった。

オオカミたちは恐怖の対象とされていた。

それは、灯火のない時代の満月の夜に、定期的に行われる遠吠えが、人々の恐怖を煽り立てている。その音を聞いた人々は、不安な夜を過ごす。

 もう聞き慣れた者もいれば、まだまだ恐怖を味わう女や子供が多い。

いつ遠吠えをしながらこの里に降りて来るかわからない恐怖がある。

ある日の夜だった。その日は、藍色に染まる空には半月が昇っていた。

「良かった。しばらく遠吠えに悩まずにすむ」

 そう息を吐いた時だった。

不気味な遠吠えを耳にした時、

ふっと、身体が持ち上がったような感覚に包まれた。

 大地が嫌な音を立てて揺れ始める。

それは大きな大きな音だった。

これまでで一番大きな被害にあったものだった。

 絶望を奏でるような、そんな音……。

そのあと、人々はあの不気味な遠吠えは不吉な印だと受け取った。

あの日を境に、オオカミ達は悪役として童話や詩が綴られるようになった。

だが、その遠吠えをしたオオカミたちは、ただ地震が発生することを前もって警告し合った音であった。

 それを、人間達は知る術もなかった。

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