第4話
第四話:最後の食材をゲットだぜ!!
「ぶっハァハァ……ここまで来りゃぁキタケノコ共も追ってはこまい……」
「なんですの、そのキメラ的なネーミングは。怖いですわ」
「うるせぇよ。それよりいつまでそうしているつもりだ?」
オイ、いい加減に俺の首から手を離せ。そして俺をスンスンするな……別の意味でいい匂いがしやがるじゃねぇか。
おのれぃ傾国の爆乳め! 元・勇者の俺がここまで魅了されるとは、お前がこの世界の真の裏ボスか? おぢさん、いけない気持ちになっちゃうゾ? まぁいい、エイ。
「きゃ!? イタタタ……いきなり投げないでくださいまし! 玉の肌に傷がついたらどうします!」
「
ぬ。右の城からコッチを見ていやがるな……。ふっ、よかろう。その挑戦をうけようじゃないか!
「あら、不幸のな右のお城の住人ですわねぇ」
「本当になぁ――って、思うじゃん?」
「メシダクエエエエエ! その腐った命、今日こそ貰い受けるッ!!」
飯田の頭上から巨体が二匹降ってくる。見ればゴブリンキングであり、左と中央の城の主であった。
それが中華包丁のような幅の広い、刃渡り二メートル、厚さ五センチほどの剣で襲いかかってきた。
それに焦ることもなく、飯田は「無粋だねぇ」と一言もらすと、左のオークキングが大上段から振りかぶって斬り落とすのを体を半歩左にひねりかわす。
その刹那、飯田を上下に分断する勢いで中央のオークキングが真横に一閃! 飯田は真っ二つになって空中を上半身が舞う――が。
「ブモオオオオオオオオオオオ!? な、なでおでが……」
「兄者ああああああああああ!? メシダクエ、キサマ兄者に何をした!!」
左のキングオークが飯田を斬り割いたと思ったら、そこにいたのは中央の城の主であるキングオークだった。
「飯田久重だバカヤロウ。俺の得意とする億ある魔法の一つ〝パラダイス・シフト〟だ。効果は対象を自在に入れ替える事が出来る、チート魔法だ覚えとけ」
「クッ……この異世界人めが!!」
「異世界人を『召喚されるほどの悪行』を重ねた、お前らが言うことじゃないわな。まぁなんだ、
「クソガアアアアアア!! 吠えろ残酷包丁! 異世界の悪魔を駆逐しろオオオオオオオオオオッ!!」
左のオークキングが吠える。残酷包丁と呼ばれた幅が広く、ナタより厚い中華包丁に酷似した剣は灼熱に燃え上がる。
それは触れただけでも焼け焦げ、炭化待ったなしの威力を持った恐ろしい武器。
だが飯田はそれを見ても微動だにせず、左のオークキングは飯田が恐怖で動けなくなったと思い、牙が上に突き出た口元を歪ませる
「馬鹿めがッ!! そのままカカシみたく突っ立って焼けしねよ!! ブルアアアアアアアッ!!」
「あのなぁ……カカシさんに失礼だろう? 避ける必要がないから避けないだけだ。おじさん、若くないから動くの嫌いなんだよ。OK?」
飯田はそう言うと、左上段から迫る残酷包丁に向けて右手を払うようにつぶやく。
「開け宝物殿。迎撃の魔槍〝ゲイ・ボルクン〟」
突如飯田と残酷包丁の間にピンクの光が現れると、その中から筋肉の固まりが腕になったバケモノが現れる。
その手には申し訳程度に、小さい棒きれのようなものが握られていた。が、なぜかそれを使わず素手で残酷包丁を握りつぶすと、本体が出てきた。
その姿、まさに異常。その姿、まさに狂気。その姿、見るものを狂わす。
身長は二メートルほどで、キレッキッレのホットパンツから伸びる、ムタンガサスペンダーがデリケートゾーンをしっかりガード。
そして首には蝶ネクタイをし、シェブロンカットのヒゲを光らせる。むろん頭部にはシルクハットを御洒落にかぶり、どこに出しても恥ずかしくないヘンタイ紳士だ。
「あ~らん。ミーのハグを望むのはど・な・た? んふ♪ ステキな夜が過ごせそうねぇ」
「ぎゃああああ!? よ、よるなバケモノ!!」
「んまぁ! 失礼しちゃうわん! ミーを呼ぶ時はジェニファーって呼んでねん?」
左のオークキングは顔面を真っ青にして後ずさる。が、〝ドン〟とした衝撃で後ろを振り返ればやつがいた……そう、元・勇者のあの食材ハンターが。
「いい感じに恐怖に落ちているな。うむ、これなら良い味が出そうだ。魔剣召喚! 喰い散らかせ〝ミートイーター〟!!」
「ちょ、ま、やめでえええええええええええ!? って……あれ? 痛くない……へ?」
見れば左のオークキングの三メートルもある巨体の腹に、大きな穴が空いていた。
だが彼は痛みもなく、ただ呆然と自分の腹に空いた穴に手を入れて無いことを確認する。
「ぎゃああああ無くなっている!? ど、どうしよう」
「
「へ……? あ、あれ……元に戻っている……」
ったく、分かったか?
「もぅどっちが悪党か分かりませんの……」
勇者を卒業したおっさん、日本の居酒屋でオークとゴブに襲われる!? 竹本蘭乃 @t-rantarou
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