第3話
第三話:2つ目の食材をゲットしよう
「あ~
「本当に鬼畜にもほどがありますわね。でも、そこがステキ。結婚しましょう!」
「そういうセリフは
「ウオオォォン……ンオ? ホ、本当ダ。無クナッタ腕ガ生エテイルッ! 何故ダ、ドウヤッタ!?」
「ああん? この〝魔剣リバイブ〟の性能だバカヤロウ。んじゃ、今日のところはこのぐらいで勘弁してやらぁ。じゃあまたな、夜に自信が無くなったら、おいちゃんが一人うけもつぞ?」
そう言うと飯田は落ちている腕二本をひろい、異空間へと収納する。それを呆然と見ていたゴブリンキングは、ふとわれに返り飯田に感謝の言葉を叫ぶ。
「オ前ノオカゲデ、王ニナレタノハ感謝スル! ダガ――二度ト来ルナ! バーカ! バーカ!! ギャアアアアッ!?」
「素材がもう二本増えたな。まぁ誰かに食わせてやろう」
「本当に鬼畜ですわね……じゃあ次に行きましょうか」
「だな、まったく汚たねぇ腕だなほんと。風呂入っとけよ、じゃあまたな」
ゴブリンキングは思った。もう引っ越そうと……。
再び生えた両腕を抱きかかえるようにし、嗚咽をもらす旦那を見た嫁~ズと、その配下は恐ろしいものを見たことで震えていたのだった。
◇◇◇
「さてと、お次は妙竹林だな」
「なんですのそれ?」
「あぁ、アンジェは知らなかったな。妙竹林ってのはタケノコとキノコが覇権を争っている不毛な地のことだ」
「なんですのそれは。また意味のわからない異世界用語ですか?」
「ちがうって、本当にどっちが旨いかで争っているんだってよ。ほれ、見えてきた」
飯田が指をさした方向にそれは広がっていた。そこには一面にひろがるタケノコの村と、その正面にあるキノコの塔。
そこから互いに魔法をぶつけ合い、キノコとタケノコが砕け散っていた。
「と、まぁこういうわけだ。どっちも最高の食材だが、なぜか仲が悪いんだよなこいつら」
「物騒なキノコとタケノコですわねぇ。それでどうするんです? 見たところ、あの魔法……上級魔法ですわよ?」
う~む。見た目はファンシーそのもので可愛いが、やっている事は上級破壊魔法≪メテオ・エクスプロージョン≫だからエゲツねぇ。
なんつぅ凶暴なキノコとタケノコだ。もし日本のアイツらが意思をもったら、きっとこうなるに違いねぇ。だがまぁ、それがどうしたってお話ですがね。
「やれやれ、だからアンポンタンなんだわ。俺を誰と心得る? 恐れ多くも先の元・勇者の飯田様だばかやろう。あぁそれにしても、こんがり焼けたいい香りがしやがる。腹が減ってきたぜ……さて、『食罪の時間』だ。サクッと素材――頂戴するぜ?」
飯田は紫の閃光がぶつかり合う光の中へと突っ込んでいく。その両手には魔剣「コールド・タイム」が握られており、そのクリスタル製の神々しい輝きは見るものを魅了する。
「たく、ボコスカ撃ちやがって。第七魔法式展開! 開け地殻の扉――≪タイタン・ウォール!!≫」
飯田が魔法を唱えると、地面を割ってあらわれる岩壁。その硬度は岩盤より固く、上級魔法ごときでは突破不能の強度を持つ。
それが飯田を起点に左右にあらわれ、互いの魔法で消し飛ぶ寸前だったキノコとタケノコを優しく包み込む。
「大丈夫だったか、怪我はないな?」
「「きゅ~……」」
「そうか、それは良かった。その無傷な体――俺にくれ」
飯田は魔剣、コールド・タイムで一体三十センチほどの、黒いキノコとタケノコを同時に串刺しにする。痛みも恐怖もなく、透明なクリスタルに覆われる二菜……。
彼らは何があったのか分からないまま絶命し、その野菜生を終えるのだった。
「可愛らしいのに酷い。本当に容赦のかけらもありませんわ」
「バカヤロウ。だから言ってるじゃねぇか、『
「……だね。いつも美味しい命、ありがとう。で、この後はどうするのかしら?」
あぁ~うん。勢いでコイツラの戦争を止めちまったはいいが、コイツら戦争止められるとキレるんだよなぁ。
「カルシウム不足してるんじゃないか? キレやすいクソどもだ」
「いまさっき言った美しいお話が霞んで消えますわね。って来ましたわ!!」
「ちッ、こうなったらヤル事ぁ一つしかねぇ」
「そ、それは一体なんですの?」
飯田はアンジェを文字通り「本物のお姫様抱っこ」をすると、大声で叫ぶ。
「逃げるんだよおおおおおおおおおおお!!」
「やっぱりそうなりますのねぇ!?」
ったく、俺一人ならもっと楽に逃げられるってのに、なんでマジもんの姫様抱っこしにゃならんのよ。
おいアンポンタン。潤んだ瞳で俺を見るな、そんな甘い状況は微塵もないんだが? 灼熱のメテオ・エクスプロージョンの束が襲ってくるんだがあッ?
「絶対逃げ切ってやるうううううううう!!」
飯田はどこかの異世界に意識がいるであろう、アンジェをしっかりと抱きしめ、キノコとタケノコの不毛な争いから逃げ出すのであった。
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