第2話

第二話:食材を探そう


「で、どうして俺がここにいると分かったんだ?」

「あらいやですわ。ビリオンマジックと言われた勇者様が何を寝ぼけたことを」

「勇者はやめろよ、元・勇者だ。あぁそうか、〝サテライト・アイ〟を使ったのか」

「うふふ大当たりですわ。だっていつ戻ってくるかわかりませんし24時間365日、あなたの魔力があふれる瞬間を、城の魔法師たちが監視していましたわ」


 ストーカーじゃなくて監視カメラだったかッ!? 元・勇者パーティーのヒーラーとはいえ、アンポンタンのくせになんて女だ……怖すぎ都市伝説ッ!!


「……またなにか失礼な妄想をしていましたわね?」

「ベツニ、ナニモ」

「もぅ! そうやってすぐにごまかす。それでやっと、わたくしを娶る気になりましたの?」

「なりませぬの。今回は俺の店にオークとゴブリンが出てな、そいつらを討伐するための食材探しだ」

「ゴブリンとオークとはなんの冗談ですの? メシダの力なら指先一つでダウンでしょうに?」

「俺はどこぞの世紀末覇者ではないので、穏便に始末したいだけだよ。ったく、これだから異世界のやつらの考えは物騒でこわいねぇ」

「んまぁ失礼ですわね! 話はわかりましたわ、それで狙う食材は?」


 そう言われると迷うな……この侵入不可侵の森の素材は俺専用にもらった領地だ。だから何がいるのか・・・・・・は把握はしているが……。


「決めた、ブタには豚を。同族には親戚を喰わせてやるぜ」

「また悪趣味な。まぁそこもまた魅力的なんですけれどね、うふふ」


 怖い……どこに魅力的な要素があったんだ? 一ミリたりとも無いはずだが……まぁいい。

 今やるべき事を最短でしよう。なんせ文字数じかんが限られているからな。

 まずは1つ目は、『料理を簡単に仕上げること』が重要だ。あんなクズどもでも分かる、俺の愛情あふれるメシを簡単かつ、最高に仕上げてやる。


 別に手抜きして作るってワケじゃないんだから、まぁいいだろう。うん、たぶん……。


 次に食材だ。あの肉二種は確定として、なにか付け合せが欲しいところだ。

 となれば、妙竹林みょうちくりんに生えている『アレ』と、武舞茸がいいだろう。

 最後にやはりフランベ用の酒と、もう一種……あぁ、思い出しただけでノドが鳴るぜ。


「ふ~ん、その顔じゃ決まったみたいね」

「あのなぁ……年上のおっさんつかまえて、全部お見通しですぅ~って言われると傷つくんだが?」

「いいじゃない。わたくしはメシダの事を愛しているんだから、そんなの今更でしょ?」

「ぁ、ハイ」

「なによその、やる気ないスイッチ全開なお返事は? まぁいいわ。さ、行きましょう! 魅惑の食材探しと、わたくしの未来の旦那をゲットする冒険へ!!」

「いや、帰ってくれませんかねぇ? は~な~せ~! おじさん忙しいのでえええ!!」


 ぐおおおお!? なぜ元とはいえ、勇者な俺の体をこうも強引に引っ張られるんだ!

 アンポンタンなうえに、脳筋ヒーラーときているんだから始末に負えん。くそぅ……俺の「秘境でぽつり、異世界素材旅」が……。

 まぁいい、こうなったらとっとと集めて、とっとと帰っ太郎。


「おいアンジェ、おまえは緑肉って知ってるか?」

「え~? それは知っていますわよ。ってまさか、アレを食べる気ですの? 正気ですの!?」

「まぁ食うのは俺じゃねぇからいいんだよ……っと見えてきたな。あぁ懐かしき我が友をご紹介しよう、ゴブリンキングさん百五十歳ハーレム持ちだ」


 おいおい、妙に色気ある女房を複数持ちやがって。ゴブリンも進化すると人間と変わらんなぁ、それに見た目は緑のアマゾネスが〝ぶるんぶるん〟させやがって――許さんッ! 一人くれ。


「……わたくしと言うものがありながら、あのような痴女に目を奪われるなどと。そんないやらしい目で見ても、一人もいただけませんわよ?」


 ストーカーから監視カメラをへて、サイコメトりーだとおおおおッ!? どんだけストーキングに拍車をかけるきなんだコイツ……恐ろしい子ッ!?

 つか、痴女はお前だアンポンタン。まずはその露出度高めの衣服をなんとかして爆乳きょうきをしまえ。


「グガッ!? オ、オ前ハ勇者・メシダクエ! マタ俺ニ何カヲ食ワセニ来タノカ!? ヤメロ、ヤメテクレ。俺ハモウ実験ニハ付キ合イタクナインダ!」

「なに言っていやがる、そのおかげで王になったろうが、アン? つか飯田久重いいだひさしげだバカヤロウ」

「グゥッ……ソレデ何ノ用デ来タ?」

「なぁに、今日は文字数じかんが無いもんでな。さて、『食罪の時間』だ。サクッと素材――頂戴するぜ?」


 飯田は一兆本ある魔剣から青く光る刃渡り二メートルの柳刃包丁に似たものを召喚すると、それを右手に持ちゴブリンキングへと肉薄する。

 驚くゴブリンキングはとっさに腰のロングソードを抜剣し、飯田へと斬りかかる。

 その速度、並の冒険者では対処不能な疾風の一閃。飯田の左斜め上から袈裟斬りに斬り裂く――が。


「おせぇよ……腕二本、もらったぜ?」

「ナ……ギャアアアア俺ノ両腕ガアアアア!?」


 斬ったと思ったら逆に斬られていた。そんなワケの分からない状況に、ゴブリンキングは無くなった両腕を見て号泣するのだった。

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