転生したら竹じいだった件
@rikomari
第1話「竹じいになった」
雨がしくしくと降る東京の街を、佐津間は歩いていた。
彼は雨の日が嫌いだ。服が濡れるのも、傘をさすのも鬱陶しくて好きにはなれない。
佐津間は、なんの変哲もない大学生。他の人と違うところといえば、大学生にしてはハメを外さず、真面目に生きているところぐらいだろう。といっても、ハメを外さないのは、家の外に出ることがほとんどないからである。大学もオンライン授業で、学校にいくために外に出ることもない。
そんな彼が、珍しくこんな雨の日に外に出ているのには、大きな理由がある。
それは、
「バレンタイン。勝ち組と負け組が最もはっきりと別れる日。俺は今日人生初の勝ち組人生を送る!」
ネットで知り合った女の子に、半ば強制的にチョコをもらう約束を取り付けた彼は、意気揚々と待ち合わせ場所の新宿駅に向かっているのだ。
雨の日だからか、いつもより車が走っている道の信号を待ちながらバレンタインについて語る彼を、周りの人が一歩距離を取って見ていた。
信号が青色に変わるのを確認してから、横断歩道を渡ろうとした時、それは突然に起きる。
大きな衝撃を受け体が宙に舞う。耳を悲鳴が貫き、頭が真っ白になる。浮いた体が重力によって落ち、さらに衝撃に襲われた。
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「おぎゃあああ!おぎゃあああ!」
鬱蒼と竹が生い茂る竹林の中に、赤ん坊の泣く声が響く。
その赤ん坊は、鳴き声をあげるたびに、体が成長をしていた。髪の毛が生え、歯も生えそろう。乳児期、幼児期、学童期、青年期と体が成長してもなお、自分がなぜ泣いているのかも分からずに泣き続けていた。
泣き声が止む頃には、彼の体は20代の成人男性並みに育っていた。
思考が安定して、声も出せるようになる。
「俺は確か事故にあったはず。何が起きたんだ……?」
数分前まで赤ん坊だった彼の思考は疑問で溢れていた。
今の状況を理解しようと頭を働かせると、急に水が欲しくてたまらなくなる。
近くに池を見つけると、おぼつかない足取りで近づいて水を飲んだ。
満足いくまで水を飲み、水面を改めて見る。
「竹じいだ……。俺、竹じいになってる……」
水面に映る自分を見て、彼はそうつぶやいた。
転生したら竹じいだった件 @rikomari
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