第21話

 朝岡の通夜は六時半から、家族葬と聞いた葬儀はひっそりと人目を避けるかのように行われていた。

 吉継を伴い現れた私に、朝岡の両親のみならず祖父母までが再び土下座しそうな勢いで頭を下げた。私が黙ったところで、もう警察が全てを伝えてしまったあとだ。

 我が子をただ純粋に悼むことができない親心を思うと、それだけで泣けた。朝岡は加害者ではないと言いたくても、なんの証拠もない。吉継は、隣で黙って俯いていた。

 遺影の朝岡は、記憶にあるままの姿だった。歯を見せる笑顔は懐かしいのに、棺の中では青ざめた見覚えのない顔で横たわっていた。

 誤解されたまま葬られてしまうやりきれなさを、どうすれば良かったのだろう。

 通夜が終わるやいなや私の元へ赤い目で駆け寄って来たのは、高校時代の後輩達だった。あの、喫煙冤罪事件の被害者だった二人だ。朝岡とは高校卒業後も連絡を取り合い、仲良くしていたらしい。

 赤い目で繰り返し謝る二人にたまらなくなって、悪いのは守れなかった私だと告げた。それが事実だ。私には分かっていたのに、寺本の悪意からも幻覚からも守ることができなかった。でもそんな事実を、二人が察せるわけはない。

――やっぱり、先輩は変わりませんね。

 泣き笑いの表情で言われた言葉に何も言えなくなって、俯いた。


  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る