甘いひととき②

 タオルで拭っても、まだバニラと焦げの匂いが残るモーリスの指が、赤い唇をなぞる。柔らかさを確かめるようにふにふにと触っていると、サリーはその指先を口に含んだ。物欲しそうにその先を吸い、さらに深く加えて指一本一本を丁寧に舐めていく。

 ねっとりと絡められる舌先は熱く、まるで性器を愛撫するように這いまわった。


「そんなことしないでも、どこ触って欲しいか言えば良いんだけど?」


 指を放したサリーは、それ恥ずかしいんだと言わんばかりに、頬を染めて視線を晒した。


「指をしゃぶるのって、手慣れてる感じがして……妬けるな」

「別に、手慣れてなんか……んんっ」

 

 熱を持ったサリーの耳たぶに口を寄せ、モーリスはその柔らかな部分に歯を立てた。

 チリチリとした痛みと熱が広がる箇所に、熱い舌先がまとわりつき、淫らな水音を立てる。


「ちょっ、わざと、舐めてるでしょ」

「ここが好きなのは、確認済みだしな」

「んんっ……やだ、奥、舐めたらっ……」


 声を詰まらせたサリーは口元を手で覆うと声を堪えるそぶりを見せた。当然だが、それを良しとしないモーリスは、彼の手首を掴むと引き離しにかかる。


「声、聴きたいんだけど?」

「だから、宿舎ここは壁が薄いから」

「隣のジンはトレーニングに行ってるって。あいつ、休日はいつもそうだ」

「で、も、誰か廊下を通ったら……ひあっ!」


 もごもごと口籠っていると、突然、シャツの上から胸の頂を擦られ、サリーは声を上げた。


「聞かせりゃ良いって。他の奴らだって、ヤッてるんだし」

「なによ、それぇ……んんっ」

「アサゴは隊員同士の色恋にも、同性愛にも、うるさくないからな」

「そういうことじゃなくて、ちょっ、やだぁ」


 胸の先端をくにくにと摘まみながら、モーリスは白い首筋を舐めた。それに震えるサリーの様子に気を良くし、どくどくと脈打つそこをきつく吸い上げると同時に、硬くなった胸の頂を抓《つね》り上げた。

 耐えられない嬌声きょうせいが零れ、サリーはモーリスの頭を抱えるようにしがみ付いた。


「もう……あんたらに、デリカシーは、ないの?」

「あんたら?」


 ぴたりとモーリスの指が止まり、サリーはほっと小さく安堵の吐息をついた。


「他の誰かと、ここで寝たのか?」

「そういう事じゃないわよ」

「じゃぁ、どういうことだよ」

「それは……この前、廊下で……向かいの部屋から凄い声が聞こえたの。だから……」


 自分の声も誰かに聞かれるかと思うと、羞恥心でどうにかなりそうなんだと、サリーはもごもごと弁解した。

 一瞬、顔の分からない過去の男を想像し、嫉妬心にかられそうになったモーリスは、納得したようにああと頷くと、自分に呆れながらも口角を上げた。


「お互い様だろ? 聞かせとけばいい」

「あんたには、羞恥心がない訳!?」

「俺のもんだって見せびらかしてやりたいくらいだからな。まぁ……他の奴らが、お前で抜くのは許さねぇけど」


 オカズにするのは俺だけで十分だからな。とぶつぶつ言ったモーリスに、呆れて顔を引きつらせたサリーは盛大にため息をつく。

 

「あんたって本当に……バカよね」

「バカなくらいが、人生丁度良いって」

「……あたし、他の男のオカズになる気はないわよ」

「けど、啼いてる可愛い声も聞きたいしな、堪えるのも疲れるだろ?」

「そりゃぁ……まぁ……」


 さらに顔を赤くしたサリーは、モーリスの指が再びシャツの上をまさぐりだすと身をよじった。

 シャツの下に差し込まれた太く硬い指が、遠慮なく、引き締まったわき腹を撫でて上がっていく。


「今度、外でやるか」

「は?」

「……なんだよ、そのドン引きした顔。連れ込み宿ファッションホテルなら、遠慮なくできるだろう?」

「あぁ、そういう事。てっきり青か……」


 ほっと安堵したサリーは、ㇵッとして口を噤んだ。

 わずかに語尾を聞き取ったモーリスは、悪戯心に火をつけられたようで、にやにやと笑っている。

 

「てっきり、なんだって?」

「な、なんでもない!」

「いくら見せつけたいって言っても、青姦の趣味はないぞ? それとも……本当は見られたいのか?」

「バカ! そんな訳ないでしょ!」


 枕を掴み、モーリスの顔面に叩きつけようとしたサリーだったが、それはあっさり没収された。


「分かってるって。でも、ちょっとくらい、聞かせようぜ」

「んんっ……あっ……まって」

「ここ、こんなに硬くして、待っても何もないよな?」


 硬いグミのような胸の頂を揉み解していたモーリスは、上下するその胸に唇を寄せると、シャツの上からたっぷりの唾液をまぶすように口に含んだ。

 熱い舌先が押し付けられるたびに、サリーは辛そうに息を飲む。

 白い指がシートを手繰り寄せ、その引き締まった足が毛布を蹴った。

 唾液で濡らし、ぷっくりとした乳輪ごと口に含んだモーリスは、サリーの息遣いが荒くなるのを心地よく感じながら、その頂を丹念に責め続けた。

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