第38話 反撃
空間を切り裂く斬撃を紙一重で躱しながら改めてユリウスのスキルを確認する。
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種族名:人間
個体名:ユリウス・ランベルジュ
所持スキル
・
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ユリウスが持つスキルはこの一つのみだ。これは使える権能が一つということではなく、[
[解析]では含まれている権能を見ることはできないが、少なくとも剣が関連しているということはわかる。
人種と魔物の違いはここにも出ている。魔物は基本的にスキルを幾つかもっているものが多い。種族としてのスキルを持っているのだ。人種は種族としてのスキルがない代わりに、先天的に一つのスキルを授かる。ノアの[
スキルの解析を進めている間にも、攻撃の手は緩まない。黒竜のコートを着ていないのでほとんどの攻撃が致命傷になってしまうのだ。その上で、ノアはまだ命を落としていない。
(恐らく[
殺すと宣言したのにも関わらず、本気でスキルを使わないユリウスに対して怒りが湧き上がる。ノア自身も殺さないように使用を控えているスキルがあるが、元々ノアにはユリウスを殺す気がないので絶対に使うつもりはなかった。殺してしまえば、セントラス王国に対する敵対行動としてとられてしまうからだ。
それを差し引いても手加減されているということがノアの琴線に触れた。その上でスキルの使用を決意する。
ユリウスが放つ斬撃を避けようとしないノア。それも一つや二つではなく軽く数十は超えている。
(避ける気配を見せない?諦めたのか?)
ユリウスは避けようとも防ごうともしないノアに失望する。自分が待ち望んでいた強者ではないのかと。そんなユリウスの心境を知ってか知らずか、ユリウスの予想はいい意味で裏切られることになる。
ノアに殺到した斬撃の数々は、ノアの一歩手前で全て霧散して消えていったのだ。
「なっ!?」
目を見開いて瞠目するユリウス。ノアは得意げに笑っている。
「何をしたんだ?僕の斬撃を消しとばすとはね」
解答がくるとは思っていないが、確認せずにはいられない。
「別にお前の斬撃は消えたんじゃねえよ。別の物に当たったんだ」
ノアの物言いにユリウスは眉を顰める。これまで数多の強者と戦ってきたユリウスでも初見の事態。長らく待っていた自分が思い切り剣を振るえ、命の危機を感じる戦いに頬が緩む。どうやって防いだのかはユリウスにとって重要ではない。防がれた、という事実が彼に衝撃を与えた。
「いいね!最高だ!」
「[
ノアはスキルを発動させる。新たに獲得したスキル[
このスキルは[空間把握]が進化したものだ。[空間把握]が範囲内の全ての事象を観測するものなのに対し、[
先程、斬撃を防いだのは空間を動かして自分の前に作った防壁だ。スキルを獲得してから今までの時間で既にこの結界内は[
(ここからは俺のターンだ)
ユリウスの攻撃を空間防壁で防ぎ、こちらは風魔法や[
「ぐうっ!」
遂にノアの攻撃を防ぎきれず、ユリウスが吹き飛ぶ。そこに更に猛攻を叩き込もうと接近するノア。ユリウスもそれに合わせて剣を上段に構え、振り下ろす。
ユリウスの剣に光の粒子が集まり、これまでとは桁違いの魔力と闘気が内包されているのがわかる。一方、ノアの剣にも風が収束していき、紫電を帯びる。
両者の一刀がぶつかり合う。
その瞬間、空にヒビが入り結界が砕け散った。2人の力に結界魔道具が耐えきれなかったのだろう。結界がないならばここは元の王城だ。咄嗟に2人共剣を止める。
間一髪で停止したものの、内包された力が行き場を失ってあたりに衝撃波が放出される。有害な力は無理矢理押し込めることに成功したが、それだけで無効化できるほど生半可な攻撃ではない。
両者が後方に吹き飛ぶ。
「あっぶねぇ.....!どういうことだ!結界張ってんじゃねえのかよ!」
結界の破損で先程までの戦いの熱が冷めてしまった。ユリウスに対する怒りも同様になくなっている。
「いや、張っていたが耐えきれなかったんだろう。少しやりすぎたかな?」
「これ、誰が責任取るんだよ?」
「え〜?それは.....」
衝撃波でボロボロになった庭園を見て2人揃って目を逸らす。そして怒られないよう同時に駆け出すのだった。
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締まった終わり方が思いつきませんでした...
コピースキルでこの世界を生き抜く! 柏餅 @896maekawa
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