第2話 ダンジョンに行ってみます?

「なぁ、正式なパーティーに加わらねぇか?」


コレは夢か、俺がまだ自分を特別と思っていて、ありとあらゆる戦い方に手を伸ばし万能って呼ばれ始めたあの時の。


夢特有の滲みボヤけた顔だが、コレは実際にあった事だ。

俺はその日、あるパーティーに加わって冒険に出かけた。そして、その日の帰りにパーティーのリーダーに声をかけられた。

俺は彼に……彼等に……







「やっぱり夢だよな」


目を覚ますと、年契約してる宿のベッドの上だった。昨日アルトと話し合い、次の日はお互い色々準備をし、二日後にギルドに集まって簡単な依頼でも受けてお互いを知ることにし、各々宿に帰ったんだったな。


「ふぁ、まだ月が出てるな」


カーテンを開けると窓から月の光が差し込む。

この世界は地球と同じように東から日が昇り西に沈んでいく。違うことと言えば、月が三つあることくらいか。赤と青と白の月。重力がどうとか難しい話はよくわからんが、赤い月は攻撃系のマナを、青い月は回復系のマナを回復させてくれる光を放っているらしい。詳しくは知らん。

他には大魔法を使う時も月の力を借りるとか……あの月、何か封印されてたりしねーよな?

だから、マナを回復させたい場合は夜しっかり眠らなきゃいけない。それ以外はクッソ苦いマナポーションを飲むかだ。


「それにしても、勢いで追放系主人公であろうアルトをパーティーに無理やり誘ったけど大丈夫だよな? バタフライエフェクトで魔王が復活しましたーとかないよな?」


なんか嫌な予感がするので、考えることすらやめた。


「それにしても、タンクはアルトに任せるとして、攻撃と回復を俺が兼用して良いけど、早い目に回復が出来る術師が欲しいなー」


最近二ついっぺんに使うことなかったから確認のために俺は、左手に赤いマナを左手に青いマナを集めて調子を確かめる。


「うむ、問題なし」


集めたマナを霧散させる。


「いっ……スゥッ」


マナを霧散させたタイミングで鳩尾辺りに痛みが走る。そして、俺は何もない空中から水が入っているボトルを取り出して飲み、ボトルを空間にしまう。


「……ふぅ、もう一眠りするかな」


明日はいや、今日か、今日はアルトと依頼に行かなきゃ行けねぇし、さー忙しくなるぞ。

そんなことを考えながら俺は再び夢の世界に旅立つ。






「そうか、まぁ気が変わったら声をかけろ。お前ならいつでもパーティーに入れてやる」


眼帯をした大男が残念そうに言う。

俺は彼等のパーティーに正式に入ることはなかった。

あの時の俺は……だったから。

彼等と共に行けなかった。

その後も色んな人が俺をパーティーに誘ってくれたが、俺は首を縦に振ることはなかった。

それが、後悔だったのかもしれないし、パーティーを組んだらもっと後悔していたかもしれない……だけど、それは確かめる手段がない。







あの頃には戻れないのだから。

「おーっす」

「……あぁ」


朝、といってももう十時を回りもうすぐ十一時になろうとしているけど。

俺とアルトはギルド前で手短に挨拶する。


「……で、何を受けるんだ?」

「うーん、最初だし、やっぱりCランク辺りで冒険しない感じでいいんじゃないか。」

「……あぁ、あまり強い敵が出てくるなら俺は役立たずだからな」


アルトは新しく剣を腰にぶら下げていたが、多分市販の剣だしあんまりBランクはキツいかなぁと思って言ったんだが、どうやらまだAランクパーティーをクビになったことがダメージとして残っているみたいだ。


「まぁまぁ、役立たずかどうかはまだわからないだろ」

「……だが、俺は防ぐことしか」

「いやいや、盾の仕事は敵の攻撃を防ぐことだろ、もっと自信持てって! それにな、コレは俺が昔いたところの言葉なんだが盾が死んだら回復のせい、回復が死んだら盾のせいってな。盾のアルトを回復してカツカツだったって事は、まだそのダンジョンのレベルに達してなかったんだよ。」

「……ありがとう」


俺は腕を組み前世の言葉を思い出し、それを口にすると、アルトの口から礼が返ってきた。


「んじゃ、とりあえずパーティー結成を、受付の人に報告するか」

「……そうだな」


俺たちはギルドに入り受付の人がいるカウンターまで歩く。


「おいーっす」

「いらっしゃいませ、今日はどういったご用件でしょうか?」

「Cランクの依頼を受けたいのと、俺とコイツでパーティー登録をしにきた」


俺が話すと、受付の男性はテキパキと動きパーティー登録用の用紙と幾つかのCランクの依頼書を持ってきた。

俺はパーティー登録用紙に自分の名前を記入。

アルトに渡す。


「……イツキ・テンドー。東の出身なのか」

「あぁ、そう言えば名乗って無かったな。イツキ・テンドー、東の火の国出身のBランク冒険者だ」

「……アルト・ランクス。南の水の国出身だ」


俺たちは今自己紹介をし、パーティー登録用紙に名前を記入しそれを提出。

そして、Cランク依頼のオーク討伐を受けギルドを出た。

俺たちは自分達が何が出来るかを話しながら、依頼のオークがいるであろう森のダンジョンまで歩いた。


ここで、この世界を少し説明をしよう。

この世界ジリオンにはダンジョンが存在する。

ダンジョンは魔素と呼ばれる一種の瘴気がたまる場所の名称である。

魔素は魔物を産み、大地をまるで迷宮の様に変質させる。

そして、魔物はダンジョンから出て人的被害を起こしダンジョンに引き返すと言った行動をする。

そう言った事が起こった時の、起こらない様にするための冒険者って訳である。

ダンジョンにもS、A、B、C、D、Eとランクが存在する。

Eランクはホントに初心者専用みたいな場所である。スライムやちょっと大きいネズミやコウモリが居るくらいだ。

Dランクになると、ゴブリンやコボルトと言ったザ・魔物! って感じのが出てくる。

Cランクだと、今回の依頼対象のオークやハーピーなどが出てくる。

Bランクだとオーガやサラマンダーといった感じだ。

後は行った事ないから知らない。まぁ、要するに、ダンジョンのランクが高くなると出てくる魔物が変わり、ダンジョンの内部構成もより複雑になっていく。

ホント不思議な世界である。ファンタジーだから当たり前だけど。


「……ここか、Cランクダンジョン。オークの森」

「たしか、基本的にオークしか出てこないからオークの森って呼ばれてるんだよな」


俺たちの前には入り口と思わしき場所以外、木が変質し壁の様に辺りを覆っていた。

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追放されたメンツを集めたら、最強パーティーになった件。 √74 @ru-to743

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