ひとりで登校します


もちろん学校は休むつもりだった。

だって人間に戻ってしまった彼をひとり置いてなんかいけない。



でもずる休みはダメだよと怒られて、お菓子や暇つぶしグッズと一緒にバス、パウダールーム付きのゲストルームにいてもらうことで折り合いをつけた。



「俺はパソコンで情報集めるから、羽奈ちゃんは学校でそうして。ダメ元で事務所にもメール送ってみるからさ」



爽やかな笑顔で送り出されあっさり登校してしまったけれど、やっぱり何をどうやっても落ち着かない。



学園どころか日本中がエイル君のニュースでざわついているのに耳に届くのは噂話ばかり。



今できることはその中にまぎれているかもしれない有力な情報を集めること。

とりあえず、そわそわを隠しながら各クラスを回ってみることにした。



まず私のクラス。

ここには筋金入りファンの矢沢さんがいる。

彼女の周りには仲のいい女子が数人いて、うつむいたままの矢沢さんを心配そうに見守っている。



まるで自分を見ているみたいだった。だってぐすぐすと鼻をすすっていたから。



彼女が幸せそうにエイル君の話をしてるのが好きで、いつもその輪のなかに入れたらいいのにって思ってた。



エイル君が意識を取り戻せたそのときは、勇気を出して声をかけてみようかな。

今はそんな未来を支えにしようって思えた。



次、お隣のクラスにはエイル君のファッションをお手本にしてるおしゃれな男の子たちがいる。

その筆頭が横山君で、彼は楽しそうに腕時計を自慢してた。



あれはたぶんエイル君の私物と同じ物。

限定モデルだったはずなのに、どうやって手に入れたんだろう。



入手ルートを知ってるくらいだからなかなかの情報通だよね。

声をかけたいけれど、男子の輪のなかに入るって気合と勇気が必要だよね。



ごめんなさいエイル君。

覚悟を決めてまた出直そうと思います。




うなだれてそのまま3組へ。

このクラスは愛川さんと町田さん、関さんがファンクラブに入っていたはずだった。




でも愛川さんが見当たらない。

ついに欠席者が出てしまったかもしれない。私もきっと一ヶ月は寝込んでいたと思う。

4組では吉岡さん、香川さん、嶋脇さん、泊さんの姿を確認して安堵した。



数日前に発売されたエイル君が表紙のファッション誌をみんなで見てる。



永瑠が死ぬわけないじゃんっていつも通り楽しそう。この潔さと前向きなパワーは見習わないと。

皆さんありがとう!



そしてラストの5組。このクラスには用事があって来たから様子見だけで帰るわけにはいかない。

是枝さんはどこかな。

同担拒否ってほんとなのかな。




教室までの距離を詰める勇気がないせいで、いるかどうかを確かめることもできない。見つけてもどう声をかけたらいいんだろう。

せっかくここまで来たのに。



「誰かに用事?」

「きゃあ!」



いきなり後ろから声をかけられ悲鳴をあげてしまった。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

オタク姫の重い愛が推しを召喚しちゃった模様です 友大ナビ @navi22

★で称える

この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。

フォローしてこの作品の続きを読もう

この小説のおすすめレビューを見る

この小説のタグ