第14話 一人旅。

 怪獣さんは小学校6年生の時に、私の郷里まで、飛行機を乗り継ぎ、一人で行きました。行ったというか、実家に帰った感じだったでしょう、まだ。

 さすがに一番最初は親も不安なため、お子様マークならぬ、お子様札を首からかけられ、係の人に全部お世話して貰い、無事に行って帰ってこれました。


 しかし怪獣さんとしてみれば、これが大変不満だったご様子。迷子にならないように、お子様まとめて、待ち時間をどこかの部屋で過ごさせたそうで。

「お土産屋さんとか見て回りたかったのに~!」

と言っておりました。

 

 えー、あなたが一番に迷子になって迷惑かけそうだからやめて下さいね。


 その次からは、お子様札もつけることなく、自力で行っておりました。ので、まあ心配もしてなかったんですが……。


 中学を卒業した春休み、また私の実家に行くと言うので、はいはい行ってらっしゃい、と行かせたまではよかった。しかし、問題は帰りでした。


 無事、家に帰り着き、さぞや腹が減っているであろうと、ご飯の支度をして、怪獣さんを呼ぶ母。

「あんまりお腹減ってないんだよね〜」

と言う怪獣。

「あ~、羽田で食べてきたの?」

「うん」


 やっぱり、流石に、もう高校生になるくらいだし、羽田でご飯食べにお店に入るくらいするわよね、そりゃ。そう思い、

「何食べたの?」

「お弁当」

「あー、お店で食べずに、お弁当買ったんだ」

「ううん、貰った」

「……?」

待てい、怪獣よ。

「羽田で誰にお弁当もらうの?」

「茶髪ちょい盛り、ちょいイケメンのお兄さん」

待て待て待てい。

「いやいやいや、普通、羽田空港でお弁当貰わないよ? 何て言ってくれたの?」 

「どうぞ。って」

「いやいやいや、なんで? で、素直に受け取ったの?」

「どうも。って」

「……。」


怪獣、写メまで撮ってました。

「ほら」 

「あら、美味しそう」

じゃなくて!


 恐らく。団体旅行の皆さんの近くにいたんでしょうね。それで、弁当配ってるお兄さんに、間違えられたんじゃないかと母は推測するのですが。

 っていうか、貰うな。「どうぞ」「どうも」じゃないから。相手側の弁当足りなくて、スタッフの皆さん困ってたと思うよ? 本当にご迷惑をおかけしました。


 本当に、こんな感じで高校でやっていけるのかと不安になった母なのでした。

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