Prunus.



「えーっと始まりはなんだっけ……そだ、。スゴい遠くを見てるんだって気づいたんだよ。ぼんやりじゃなくってしっかりと。ピントが合ってるヒトの視線だった。じゃあ何見てるんだろってなるじゃん? そんで追った先には何も見えなかったんだ。ん~人生的な視力の差? ってヤツ? それがすごく、マジで、マジにくやしかったんだよ。他の誰にも見えてない星が見えてるみたいで。その見えてない『他』にも入ってたことが。同時にあの人が他の誰かを見てないんだって思ったら、もーたまんなくなっちゃって。


 だから、ふたつのことが欲しくなったんだあ。ひとつは同じ景色。その目で何を見てたかっていうの。もうひとつはその視界。その中にあーしを入れろよ! っていう。


 見た目とか声とかが好みに変わったのはのハナシ。でもマジでパネェの。ぜ~んぶ良く見えちゃうんだよ。ちょっとした仕草しぐさとか、目瞬まばたきをゆっくりする時とか。「うあー好きぃー!」ってなっちゃうんだ。で、あーしは思い知ったワケ。見たいって思ってた景色の、その全部のフレームに、あのヒトが一緒に入ってないとヤだって。そんで同時に、見てる景色の全部にあーしが入ってないとヤだってなった。『恋とはなんぞや?』って聞かれたら答えはもう決まってる。


 今のあーしの状態がそうと言わずになんとする! ってさ。はーヤだヤだ」


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water line. 冬春夏秋(とはるなつき) @natsukitoharu

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