堕ちた勇者の魔人生活

赤家ジェスマレッタ

第1話 一生懸命やったのに

 

 僕は一生懸命やっている。

 なのに誰も努力を分かってくれない。

 仕事もそつなくこなすし、報連相を出来るだけ守る。

 友達という友達というか、社内に友人はいない。

 この会社ができたばかりだからというのはあるし、シフト制だからというのもある。


 そんな時だ。

 自分のお金にも関わらず、親が金の利用を調べるために、色々と聞いてきた。

 給料は貰っているのか

 いくらなのか

 何に使っているのか

 などである。


 そこで色々バレた。

 いや、正確にはそう決めつけられ、それが当たっていたのだ。

 自分が色々と金回りが荒かったことが。

 好きな漫画どころか、興味無い漫画をジャケ買い。アニメのグッズ、フィギュアに初回限定盤。そして……あまり大声では言いたくないが、エロゲの購入や風俗に行っていたこともバレた。


 そして、働きたいところに働くべく、給料がいいと嘘をついた。

 安心させるための嘘が、仇になった。


 給与明細を見せろ、嘘をもう吐くな。

 嘘を吐くか、誤魔化すなら、絶縁する。


 確かに僕は嘘つきであった。

 だが、もう嘘はやめて心入れ替えると誓った。

 だからこそ、親に言われて従っていた修士号への道を断り、「自分は親の言う修士号への進学より就職を選びたい」と隠すことなく言って、働く決断をしたのだ。


 自分の自由のために。

 もう親に干渉されないために。


 自由になりたくて、自分で就職の道を選び、好きな仕事をしているにも関わらず。

 自分の金であるにもかかわらず、使い方に対して説教された。


 それが気に食わなかったが、貯金だなんだ、嘘がなんだと言っていることは正しいので、言い返せずに黙ってしまう。

 親の怒りはヒートアップし、ますます一方的に言い放つ。さらには、だんまりが気に食わないようで、僕の今まで言った発言を真似して掘り返す。


 それで「残念です」と敬語で一言言って、電話は切れた。


 さらに追い打ちが来る。

 弟が追い打ちをかけてきた。

 両親の刺客だろう。

 滅多に電話してこない弟が、突然電話をかけてきたのだ。


 弟はずっとサッカーをやっていた。

 サッカーのクラブや部活での運送や、親の会のようなもので両親が疲弊していたのは知っている。

 だから俺は、今まで我慢していたと思う。

 兄だから、わがままを言わないようにしようとしていた。

 親には弟なんだから、手伝えと言われ、受験の手伝いをしたこともあったか。


 好きでも嫌いでもないが、弟だから。


 そんな弟から、電話がかかってきたのだ。


 怖くなりながらもコールを手に取った。

 第一声、侮蔑の言葉が聞こえてきた。

 見損なった……と。

 なんで俺より金あるのに、そんなに金使うの下手なんだと。

「性格腐ってんな」、「なんでお前が一番お金に真剣になんなきゃいけねえのに」と親譲りの一方的な棘ある言葉が襲いかかってくる。

 なんだったら、連絡の返信が遅いだの、普通のことにまでケチを付け始めた。

 そして一方的に言われると、自分の話を聞く態度にケチをつけ、一方的に電話を切った。


 自己嫌悪に陥った。

 ベッドに入っても眠れるどころか……言われた言葉が脳内に反芻してくる。

 目を瞑っても夢は見ない、言葉が心のうちから耳へと聞こえてくる。

 それはやがて、心を押し潰していくのだ。


 とうとう耐えられなくなって、涙と過呼吸が止まらない。




 逃げたくなった。




 僕は家を出た。




 最悪死のう。

 どうなってもいい。


 そんな一時的な思いが、僕を襲う。


 だから、僕は走った。

 もうどうとでもなれ。

 走って走って、走った。


 何も追ってこない。

 だが、追われる感覚が襲ってくる。

 何も無い、何も見えないけれど、なにかからひたすら逃げた。逃げた。逃げた。


 靴ズレの痛みも気にしない。

 革靴が傷ついても、ボロボロになっても気にしない。

 汗でスーツがベタベタになっても気にせず、逃げるためにひたすら走った。


 走って走って走った先に、月明かりのみの光しかない山が見えた。


 普通であれば、暗さに怯えるところだろう。

 深夜の暗い山に行くなんて、何があってもおかしくない。

 ただただ怖い、人によっては足を踏み入れるのも嫌悪するだろう。


 そんなことは気にせず、走った。

 深夜の暗い山以上に、正体の見えない何かが怖かった。

 走っても走っても、自分に対して向けられた侮蔑の言葉が聞こえてくる。




 山を抜けたのか、光が見えてくる。




 光に脅えながらも、こんなところに村があったのかと思って、ゆっくりとした足取りで村に入る。


 走った先に見えた夜の世界は、電気の灯りがない世界。



 ここで初めて"脅え"が無くなった。



 おとぎ話やアニメの世界でしか見た事ない、あんな城……。



 そこで、ハッとした。

 夢が覚めたように。


 来た道を戻り、帰ろうとする。

 踵を返し、来た道を戻ろうと駆け出した。


 そこで、門があったことに驚いた。

 驚いたのもつかの間、中世の格好をした門番に捕まった。


 引きづられて連行される中、最後に見たのは……俺が走ってきた山じゃなかった。



 門の向こうは、別世界だった。



 捕まった後に衣服が不可思議だと解放され、王様に引き渡されると、占い師みたいな格好した多分魔法使いとシスターにしてはだいぶ金のかかった格好をしている聖女に、お前は勇者だと言われた。


 耳を疑ったが、大事に運ばれてきた装飾でゴテゴテした剣を持つと、歓声が上がった。



 そして……僕は勇者になった。



 正直、悪くなかった。

 僕は今まで持て囃されるような人生じゃなかった。

 学校で人気者になるとか、そんなことは一度もなかったから。

 妬み嫉みもあったろうが、憧れはあったろう。

 頭の中で妄想するアレだ。

 実際僕は勇者という称号だけで、人は寄ってきたし、もてなすし、時として女性をあてがわれたことや、それこそ女性が誘惑したり、逆にそれを利用して一夜を共にしたこともあった。

 羨望され、嫉妬され、僻まれた。

 いい気分だったよ。

 今まで、僕が指を加えて見ている側だったし、親からの厳しさ、押さえつけ、本人たちは良かれとやっていても、それが僕を苦しめる過保護。

 それが本当の意味で爆発した。

 睡眠以外の欲は満たしたと言っても過言ではなかったかもしれない。

 その一瞬一瞬が……最高だった。


 だからこそ、だからこそだ。

 敵だと言われた魔物を殺し、痛めつけた。

 だからこそ……だからこそ!

 魔王の国に住む魔人を殺してきたんじゃないか。

 自分の責務を全うしようとしたんじゃないか。

 いいことだと信じて、正しいことだと信じて、正義だと信じて!

 勇者の責務を全うするために、殺してきたんじゃないか!


 大きな欲は満たされても、痒いところに手が届かない。ささやかな欲が満たされない。


 その頃の自分がどんな態度だったかを、僕は覚えていない。


 魔王の四天王の一人倒し、その名はさらに轟いた。


 もう英雄気分、最高だ。

 今まで自分の人生で、ここまで高揚したことはない。

 人気という、名声という麻薬に酔った。



 そして



 僕は負けた。



 2人目の四天王は、四天王の中で3番目に強かったらしい。



 そんなこと、今はどうだっていい。

 僕は負けた。

 負けたのだ……



 ……



 …………



 ………………!





 どうして!





 どうして!!





 僕は一生懸命やったのに!




 やったのになんで!



 なんで一生懸命やったのに!





 一生懸命やったのに、僕は負けた。

 勇者になったけど、僕たちは負けた。

 一生懸命やったのに。

 一生懸命やったのに!

 僕は一生懸命やったのに!

 どうして神様はこんなことにするんだ!

 正義は悪に勝つんじゃないのか!



 仲間の魔法使いは塔から落とされ、仲間の僧侶と仲間の戦士は戦闘不能。


 残るは勇者の僕のみ。


 その四天王は、僕にしか興味が無いようだった。


 ニヤリと笑うと、僕を掴み、どこかへと消えた。




 仲間と離れ離れになり、勇者の看板をぶち壊された僕は、魔王の元に連れていかれた僕は「希望を打ち砕かれて、絶望と共に捕食される弱肉」の気持ちを初めて知った。


 目の前にいるのは魔王。

 そばに側近2人と四天王の2人がいた。

 僕の後ろには、俺を捕まえた四天王がいる。



 そんなことはどうでもいい。

 どうでもいいと思えるほど、目の前にいる魔王が怖かった。

 逃げ出したいけど、逃げ出せない。

 体が動かない。

 それほどまでに恐怖の対象であった。


 勇者の力ゆえなのか、はたまた実際にそうなっているのかは分からない。


 分からないけれど、目の前の闇のオーラは本物。

 威圧はもちろん、覇気や悪意すら伝わってくる。


 その時、僕を捕まえた四天王が魔王の前に出て進言した。


 そこで……僕の記憶は途切れた。

 現実から逃げるように、体が拒否するように意識を失ったのだ。



 ♢♢♢



「こーろーせ!こーろーせ!こーろーせ!」



 今、目を覚ました。

 腕が動かない、足も動かない。


 ……僕は、見世物になっていた。


 このコロシアムには、誰も僕を栄光ある強き勇者という光ある眼差しで見る者は誰一人としていない。

 コロシアムへ見に来ている魔人は、そんな目で見ていない。魔人や魔物たちの同胞を数多く殺した、"悪"として僕は見られていた。

 僕は今まさに、見世物の中で殺されようとしていた。



「こーろーせ!こーろーせ!こーろーせ!」



 コロシアムのゲートから、"英雄"が現れた。



「うおおおおおおおおおおおおおおお!!」



 この度、の勇者を捕らえた英雄……四天王のご登場である。


 その後ろからは、部下らしき人が多くの武器をカゴごと持ってきた。


 四天王がおもむろに剣を手に取ると、それを僕に向けて勢いよく投げた。


「……!」


「うおおおおおおおおおおおおおおおおおおおお!!」


 歓声が上がる。

 僕に武器が刺さることで、歓声が上がる。

 コロシアムは歓声に包まれた。


 僕が傷つくことで、こんなにも喜ぶ人が沢山いる。


 なるほど……そうか。


 そうか。


 そうか……




 僕がやってきたことは、誰かから恨まれることだったんだ。




 僕は、あんなに一生懸命やってきたのに。



 僕は……一生懸命やってきたのに……!




 正義だと、誇りだと、英雄だと……そんなものなんだったんだ……!



 四天王が弓矢を持つ。

 彼は弓使いではない。

 だからこそ、慣れない武器を持つ四天王に対して笑いが上がった。


 放たれた弓矢はカスった。

 だがそれでも、痛み以上のヒリつきや違和感が酷い。

 毒が塗られている。


 外したことで、また笑いが起こった。


 弓矢をその場に捨て、新たに斧を手に取る。


 このままじゃ……



 その瞬間、四肢を縛るロープが切れた。



「アンタ……男だろう?せめてもの情けだ、戦って散れ!」



 女の四天王が、縄を何かで切ったのか。

 全く見えなかった。



 勇者が自由になったことで、コロシアム中にブーイングが鳴り響く。



 様々なものが僕に向けられて投げられる。


 石、ゴミ、スプーンやフォーク、ナイフ、飲み物の入ったジョッキ、酒の入った酒ビン……人によっては剣や斧などの武器も投げた。



「チッ……余計なことを……まあ、いい。」



 相対する四天王は笑う。

 ニヤニヤと、笑う四天王が斧を担いで子供に遊んであげるようにゆっくりと歩き始める。


「一方的なのが、追いかけ回すことになるだけだからなあ!」


 ニヤニヤしながら、弱者を見る目で襲いかかってくる。


 魔法は出ない。

 魔法は使えない。


 そんな中で戦えと……!?


 武器はない。


 逃げるしかない。


 速くない足で、逃げる。


 ただの人が、魔人に勝てるわけが無い。

 対して足の速い訳でもない人間が、魔人の運動神経に敵うわけがない。

 種族として……勝てるわけが無い。


 避けるので精一杯とかいうレベルじゃない。

 避けれても掠ってる、が正しい。


 なにより、一度の敗北のせいで"勝つ"という事を捨てていた。







 このままじゃ……このままじゃ、死ぬ……!







 自分の目に、自身の赤い血が飛ぶのが見えた。

 喉を締められ、死にそうで死なない絶妙なラインを攻められる。

 おかげで口から血が吹き出し、自分の顔にかかった。



 『魔物の血はやめとけ。』



 なんでなんだ。美味しそうじゃないか。


 『血だけは止めろ。』


 『魔物の血を飲むと、そいつは魔物になってしまう。』


 『そうなると……もう助からない。』


 助からない……?


 『"討伐対象"になる……ってことだ。』


 『だから、魔物は狩っても食べるな。』



 血を見てそんなことを思い出し、走馬灯のように駆け巡る。



 そうか、これが走馬灯か。

 じゃあ……僕はもう、死ぬのか……。




 --アンタ……男だろう?せめてもの情けだ、戦って散れ!




「た、戦って……」


「あ……?」


 拳が握られる。

 弱々しい力で、拳が握られる。

 力が既に入らない拳が握られる。


「戦って……」


 近くにあった自分を打ち損じた矢を拾い、それを四天王にぶっ刺す。



「チィ……」



 全然効いている様子はない。

 だが、それでも後ろには退いてくれた。



「戦って……!」



 一生懸命戦って、戦って……散って……散って……



 散って……



 散って…………



 散って、




 散ってたまるか!




 散りたくない!




 散りたくない!



 生きる!



 絶対に生きる!



 まだ死にたくない!



 死ぬのが怖い!



 死にたくない!



 死ぬのが怖い!



 何もしなくても死ぬのなら



 どうせ、死ぬのなら……



 死ぬのなら--



 向かっても向かっても、無駄な足掻き。

 向かう度に、その意味が無いと思えるほどの一撃を食らう。

 鎧なんてもうない素肌が、赤い血に染まる。


 痛みが痛いとかいう訳の分からないことが起きている。


 左腕なんて、もう取れてもいい頃だ。



 思考は既に働かず、もう意識が消えかかっていた。

 その消えかかった意識だけで動いている状態であったため、自分の選択肢というよりは、本能で動いている状態である。


 その本能は……"生きる"。

 何がなんでも、何があっても"生きる"という本能。


 何がなんでも、何があっても……ということは、手段を選ばないということ。

 生きることに全てをかけるということ。




 僕の本能はこのままでは死ぬ、生きなくては。

 本能が選んだ決断は……




 人間を捨ててでも、生きる。






 生きるということに執着してやる。





 だって、死ぬのが怖いから。





 それが本能の答え。

 僕が心の奥底で、それを望んでいるということだ。





 どうなるかとか、後悔とか、そんなことを考えられないこんな状態だから、こんな決断を勝手にした。



 人が魔物の血を飲んで魔物になるように、人が魔人の血を飲んだら……どうなるか。



 僕は投げつけられたジョッキを手に取り、鬼人の流した温い血と乾いた血を砂ごと掬って飲み始めた。



「ジャリジャリジャリジャリ、ガフガフガフ、ボリボリボリボリ……」



 奇行--



 まさにそうとしか思えない行動に、コロシアムの会場は静まり返った。

 よく言えば……そう、"度肝を抜かれた"……と言うやつだ。



「ゴホッゴホッ……」



 温い血と乾いた血が入り交じったとはいえ、乾いた土の量が多いため、むせてしまう。



「気でも狂ったかぁ……?」



 どうやら四天王にも奇行に見えるらしい。

 それどころか、上で高みの見物を決めこんでいた魔王の側近や四天王らも驚いた様子を見せ、さらには眉ひとつ動かさなかった魔王も初めて反応を示した。


 僕は自ら首を締め始めた。

 僕は自分自身で身体を痛めつけ始めた。


「ヴあ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛ァ゛ァ゛ァ゛ァ゛!!!!!」


 落ちていた剣を拾うと、自分自身で自分を傷つけ始めた。


 まるで人の証である赤い血を、体内から出すように。


 コロシアムにいた魔人たちは、奇妙なものを見た。

 勇者の元で、勇者である証である光と、魔人の証たる闇が戦い始めたのだ。

 対立した状態のまま、闇が光を押し込むような状態で勇者の元へ光と闇は返っていった。


 その瞬間、勇者の体内で流動する血が暴れ始め、血管が浮き出、浮き出た血管が体内をステージにボコボコと踊り始める。

 踊り狂う血管は、見る者にとってはえも言われぬ恐怖と不気味を与えるほど彼の身体を凶悪に見せていた。


 そして……角が生えた。

 四天王とは違う、ひとつの角が。


 ……魔物の角が。


 下顎が強くなり、下の犬歯が凶暴さを象徴するように鋭利さを増す。


 同時に、肌の色が変わっていく。

 ドス黒いワインレッドの色に。


 まるで自分の……血の色のように。

 自分の赤い人間の血が、肌に浸透していくかのように。


 細いながらも勇者として戦ってきた隆々だった体は、筋骨隆々へと変貌していく。


 鬼へと、変貌していく。


 赤鬼へと、変貌していく。



「な……お、お前……」



 会場がザワついた。


 コロシアムで戦っているのが、人間ではなくなった。


 同士へと、変貌したのだ。



 周囲が鮮明に見える……


 自分を傷つけた剣がなまくらであったことが分かるほどに。



 力が溢れ出てくる……!


 力が……溢れる……!



「くくく……あっあっあっ……くはははははは!あーッはっはっはっはっはっはっは!!!」



 勇者の高笑いが響き渡る。

 魔人から見れば、彼は勇者だった魔人。

 それ以上に、悪魔的な狂人に見えた。



「ゆうしゃあああああああああ!」



 四天王の顔色が、初めて変わった。

 勇者パーティと戦っていた時は、笑っていたことさえあったというのに。

 初めて、怯えという感情が見える。

 得体の知れない、目の前にいる魔人を相手に。


 なまくらの剣を拾い、四天王の斧での攻撃を防ぐ。

 同時になまくらの剣が砕ける。


 その瞬間、が腹を蹴る。

 四天王が体制を崩すと、一瞬のスキをついて元勇者は四天王の顔面を掴んで地面にたたき落とした。


「ぐあ……!あ……!」


 めりめりと音を立てて、今にもそのまま四天王の頭蓋骨を割ろうとする。



「そこまでだ。」



 魔王がそう言うと、魔王のそばにいた2人の四天王が元勇者を引き剥がした。



 元勇者の目が……獲物を見る目に変わる。


 それに気がついた四天王2人が、臨戦態勢を取った。


 さらにそれを見て笑った元勇者は、右手に闇のエネルギーを貯め始めた。


 闇のエネルギーは、液体のように潤いを浴びて煌めき始める。



 だが、たった一瞬。

 たった一瞬で魔王は玉座から姿を消し、元勇者は上からそれを押さえつけた。


「……!」



「そこまでだと言ったろうに……」



 元勇者は気絶……意識を失った。



「魔王様、いかが致しましょうか。」


「そうだな、この勇者とこの馬鹿……縛っておけ。そのうえで、王の間に連れて来い。」


「はっ。」



 気絶した元勇者には、先程までの人間だった面影は……綺麗さっぱりと無くなっていた。



 彼はもう、人間ではなくなった。






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堕ちた勇者の魔人生活 赤家ジェスマレッタ @Jesmaletta_Acaie

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