第4話 後には何も残さない

 「そうか、ミレアは任務を終えたか」

 報告を受けて、通信を終える。室内に沈黙が漂う。

 立派な装飾が目立つ室内。二人の男女がいる。男性は恰幅がよく、身に付けている軍服にはジャラジャラと勲章が多数ぶら下がっている。

立派そうな椅子に座り、その側に女性が書類を持って立っている。

 「これで、登録されていたマーダーシリーズミリオンの廃棄が完了したな、博士」

男性が女性に語る。

「ん? 自分の手掛けた人造兵器達が全部壊れたのが悲しいのか?」

「…いえ、これは平和のために必要な事…ですよね」

 自分を納得させるような口ぶりで女性─博士─は語る。

 「ああ。国際的に戦争終結させるには我が国で開発した兵器を全部破棄、証拠は残さない。こうすれば他国からも我が国が平和に導きましたと示しがつく。これが正しい選択なのだよ」

 そう言いながら博士の方を振り向く男性。が、手には拳銃を持っている。

「っ!? 大将閣下!?」

驚く博士。男性は何も言わず博士に向かって引き金を引く。

 バンッバァン…

二度銃声が響き、博士が横向きに倒れる。

「そう、証拠は残さない。開発した人間も皆だ」

冷酷な目つきで博士を見下ろす男性。その直後、

 バァンッ…

乾いた銃声が響き、頭を撃たれた男性が倒れる。

「なっ!?」

 何事が起こったのか分からない表情で倒れこむ男性。

 「よく…やったわ…ミラージュ」

博士の後ろから光学迷彩服を着た少年が現れる。顔立ちが少しミレアに似ている。

「いえ、マスターの次に博士…マムの命令を聞くようにとインプットされていますので」

 「じゃあ…最後の命令を…実行して…マーダーシリーズ最後の…一人…これ…で…終わらせ…て…」

「イエス、マム」

少年は眉ひとつ動かさず首のチョーカーの飾りを触る。

 刹那、室内を爆発音と爆風が起こり、そこには動く者は誰もいなくなった。


 「では、次のニュースです…」

街角の巨大モニター。ニュース映像を映し出している。

 「我が国の大将閣下が何者かに襲撃なされました。テロリストの仕業ではないかということで只今調査を行っております」

「昨日、工場地帯で爆破事件が起こりました。被害者等は現在調査中です。警察は大将閣下を襲ったテロリストがここを拠点にしていたのではないかとの事です」

 「次のニュース…」

 次々とニュースが流れるが、公園での爆発は全く流れる事は無かった…。



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戦神《いくさがみ》と呼ばれた少年 東寒南 @dakuryutou

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