第3話 そして世界は変わっていく
「じゃあ、今日でお別れなんだ」
次の使令が来るはずの日。レオンはミレアにお別れを言いに公園へ来ていた。
「マルクスもお別れ寂しいねえ」
そう言いながら仔犬を抱き上げるミレア。
「…そうだな」
言葉少な目ながらも感情を込めて話すレオン。だが、内心そうは思っておらず、あくまでも一般人のフリの延長線で語った。
「じゃあ、最後に友情のハグしていい?」
さして疑問にも思わず承諾するレオン。
ミレアはレオンの首に手を回して、
「さようなら」
そう言いながらレオンのうなじの辺りを触った。
「!?」
途端に倒れこむレオン。先程の親しげな様子とは真逆の冷静な表情でレオンを見下ろすミレア。
「マーダーシリーズの初期型、通称オリジン」
そう呟いてミレア自身のイヤーカフを触る。
「ミレアです。オリジンの機能停止を確認しました。はい、任務了解です」
通信を終えるとレオンのアジトへと向かう。
アジトでは、使令を待ちながら次の現場へ移動するための準備や片付けを行っていた。
「アイツ、遅いな」
「レオンか? なんか仲良くなった人がいるんだってさ」
その時、入り口のドアが開いた。が、開けたはずの相手が見えない。
「んー? 風で勝手に開くはずは…」
突然、シューっと音がして煙がアジト内を充満する。
「これは…睡眠ガ…ス…」
ガスにやられて全員倒れる。その様子を確認して侵入してきた相手が光学迷彩のスイッチを切り、姿を見せる。が、顔にはガスマスクを着けているので素顔が見えない。
アジトの真ん中辺りに蓋を開けた箱を置いた。オルゴールだったようで中から音楽が流れてきた。
「任務完了」
そう呟いて又光学迷彩のスイッチを入れ、その場を立ち去る。
再び公園へ戻ったミレア。足元に仔犬─マルクス─がじゃれついてくる。
「もう、あなたとはお別れなの。あっちへ行きなさい」
そう言いながら首輪とリードを外し、逃げるように促す。
それでもじゃれてくるマルクス。爆発や火薬の匂いがする人にはじゃれつくようにマルクスは訓練されていたのだ。
「そうか…あなたも平穏な生活には戻れないのね」
マルクスを抱っこするミレア。その時レオンのイヤーカフから通信が届いた。レオンのイヤーカフを触るミレア。
『レ、オン…逃げ…ろ…こっちはやら…れ』
話の途中で耳をつんざく爆発音が聞こえた。中央に置いたオルゴール型爆弾が爆発したようだ。
レオンのイヤーカフを再び触り、通信を切ると、レオンの側に座り、ミレアは首に着けていたチョーカーの飾りを触る。
「これで、任務、完了」
数秒後、爆発が起こり周りは火の海と化した。
動く物は誰もいない…。
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