第2話 油絵と貞操具
長谷部先生は、中学校近くのアパートで一人暮らしをしていましたが、隣町の海岸沿いに建つ古い別荘をアトリエ兼作品置き場として借りており、週末や作品制作しているときは、そちらに寝泊まりしていました。
中学の卒業式が終わって春休みが始まると、毎朝、先生が自宅まで車で迎えに来てくれることになりましたが、アトリエと作業の様子を見たいと言うので、初日は母親も同行しました。
アトリエは元別荘だけあって、どの部屋からも海が見える絶好のロケーションで、窓を開けると心地よい春の海風が通り抜けていきました。
まずはモデルの練習ということで上半身だけ脱いで、作り物のリンゴを持たされました。それを先生がスケッチするのですが、長時間ずっと動いてはいけないのかと思っていたら、そうではなく、定期的に休憩があって飲み物を飲んだり、トイレにも行けました。
お昼は先生が用意してくれたお弁当を三人で食べ、午後は母親にスケッチや油絵について、実技を交えながら説明してくれ、アトリエには午後3時過ぎまで滞在し、帰りも自宅まで送ってもらいました。
車中で先生から「息子さんの端正なお顔をスケッチしていると、すごく制作意欲が湧くんです」と言われて母親も嬉しかったようで、夕食時に「すごくキチンとしてる先生なんで安心した」「良い絵が描けるように長谷部先生に協力してあげなよ」などと話していました。
翌日からは二人っきりになり、先生が用意した競泳用の水着を着ました。家に挨拶に来たときも先生は両親に「完成する絵は裸画ですが、息子さんには水着を着用した状態でモデルをやってもらうので心配いりません」と説明していましたが、数日後、アトリエに到着して着替えようとしたら、ちょっと相談があると言われました。
「どう? そろそろ慣れてきたかな?
最初はポーズや表情がぎこちなかったけど、
ずいぶんと自然な感じになってきたよ。
今回の作品の鍵は、島崎くんの男でも女でもなくて、
完成もしていない身体なのね。
今日までスケッチやラフを描いてみたけど、
やっぱり水着だとイメージがわかないの。
申し訳ないんだけど、今日だけでいいから、
水着なしでモデルをやってくれない?」
正直、話が違うぞと思ったし、先生とはいえ、女性に未発育の男性器を見られるのは嫌だったので断りました。
「もしかして、私に裸を見られるのが恥ずかしいの?
そうか。じゃあ、私も脱ぐよ。それならいいでしょう?
なんなら、ずっと裸でも平気なように、おまじないしてあげようか?」
そう言うと服を脱いで、私を抱きしめて口唇を合わせてきました。先生は「絵のモデルをさせることだけが目的で、島崎くんに決めたわけではない」と教えてくれました。
私の初体験の相手は先生で、場所はアトリエでした。そういう関係になってからは、アトリエでは全裸か、先生が渡してくれた女性下着を付けることになりました。先生が用意する下着は、ジュニアサイズのブラジャーとショーツやジュニア・キャミソール、可愛らしい女児用ショーツばかりで、髪を伸ばすようにも言われたので、何を求めて私を選んだのかが理解できました。
高校三年間と浪人生だった一年間の合計四年間で奉仕、責め、女装、男性用の貞操具、パートナーの管理など、いろんな事を教わり、やらされることになりました。
私が通っていた中学校で数学を教えていた
「敬ちゃん、瑛斗が長谷部先生から油絵のモデルを頼まれて、
もう半年もアトリエに通っているんだけど、若い女性と二人っきりだろう?
間違いとか起きないか、俺は心配でたまんないんだよ」
「そりゃ、普通の若い女教師と瑛斗くんみたいな美少年が海辺のアトリエで、
二人っきりだったら、お約束の展開だろうけど、
こと長谷部先生に限っては、100パーセントどころか
1000パーセントは大丈夫だよ。
超が付くほどの堅物で、男とか色恋とは一番縁遠いところにいる鉄の女だから」
酔っ払って上機嫌で帰宅した父は、石橋先生が長谷部先生に太鼓判を押していたぞと教えてくれましたが、普段の長谷部先生は化粧気がなく、美大生の頃から使っている小傷だらけのセルフレームのメガネを愛用し、髪はボサボサ。いつも絵具汚れがあるトレーナーやコットンシャツを着て、ボトムはデニムパンツかスウェットでスカート姿は見たことがありません。
こんな御洒落とは程遠い格好のうえに顧問をやっている美術部の指導には熱心だったので、上司の校長や教頭、同僚の教師たちからは絶大な信頼を得ていました。
「私が島崎くんと、こんなことをやっているなんて、
校長も同僚も生徒も絶対に信じないよ。
見た目と日常行動で皆を信用させれば、どうにでもなるんだよ」
先生自身もそう
「私たちが今やっていることは、性行為じゃなくて耽美なの。
だから何も後ろめたいことはないんだよ」
これが先生の口癖でした。日曜日の朝、先生の車でアトリエに着くと、まずシャワーを浴びて、先生が用意した女児用下着に着替えます。
午前中は絵のモデルをやり、昼食が終わってからは、再びシャワーを浴びて、ベッドで耽美の時間でした。
肝心の少年裸画については、ポーズや構図、身につけるアクセサリーを変えながら何枚かの習作を経て確信と自信を得た先生は、やがて一枚の絵を描き上げました。
タイトルは「腕輪の少年」で、暗い青を基調とした背景の中、大きなターコイズが装飾されたインディアンジュエリーの銀製バングルを嵌めた全裸の少年が、ベッドで丸くなって横寝している構図でした。私は絵の良し悪しや芸術などわからない全くの素人ですが、絵を見たときは、しばらく言葉が出ないくらい感動しました。
「私の最高傑作だよ。モデルに対する思いの深さが、全然違うからね。
たぶん行ける。いや、絶対に行ける。これがダメなら、もう画家を辞めるわ」
先生の自信どおり出品した画展では「郷土画家として知られる長谷部氏の新境地。大人になりかけた十代半ばの少年時代にしか感じ得ない挫折や苦悩や不安、そして僅かな安堵と希望が画面から伝わってくる秀作である。今後の作品に大いに期待したい」と高評価され入選を果たしました。
さらに都内で不動産管理会社を経営する50代の女性が、この絵を大層気に入って「ぜひとも購入したいので、希望価格を教えて欲しい」と代理人を通じて、何度も尋ねてきました。
それまで長谷部先生は、自分の絵を個展や即売会などで、数万から20万円程度で販売してきましたが、この絵は売る気がなかったので、相手を諦めさせるつもりで、これまでにない高額な値段を伝えました。
ところが
「モデルは十代半ばの男子ですが、膨らみ始めの少女のような胸です。
お尻や太腿も同年代の男子より丸みを帯びてる反面、
男性器の成長は遅れており明らかに普通の男子とは異なっています」
先生がそう返事をすると、数日後に「報酬は『腕輪の少年』の倍額を支払うので、同じモデルで銀製腕輪と男性用の貞操具を付けた絵を描いてもらえないか?」と打診がありました。
その報酬額に魅せられて先生は引き受けますが、男性用貞操具が、どういう物か知らなかったので、現物を用意して欲しいとお願いすると、専門の職人にオーダーメイドで作らせるので、モデルの男性器を採寸するよう言われます。
指示どおりに採寸して先方に渡すと、一ヶ月後に私専用の鍵付きの貞操具が宅配便でアトリエに届きました。関谷社長からは「モデルが嫌がらずに貞操具を装着するように慣らしてから絵を描くように」との申し送りがあり、生真面目な性格の先生は、監視などされていないのに、それを忠実に守ってました。
最初はアトリエ内だけでの装着でしたが、「三日間このままよ」と装着したまま帰宅させられたり、登校前に呼び出されて、誰もいない公園で貞操具を装着してから女児用ショーツやジュニア用下着を付けさせられて、高校に行ったりもしました。
もしも先生の言われるままに従っていたら、相当のストレスだったろうし、下手したら同級生にバレてたかもしれませんが、貞操具が届いたとき、三個あった予備鍵の一個を先生に内緒で拝借したんで、気分が乗った日は「今日は女児用ショーツを履かされたけど、体育がないから、このままでいいか」でしたが、それ以外は、外して普通に登校してたんで、割と気楽なゲーム感覚でした。
私が大学に入学するまでに関谷社長は、三枚の少年画を長谷部先生に注文しました。一枚目は銀製バングルで、二枚目は黒いエナメル製ガーターベルトとブラジャーにオーバーニーストッキング。三枚目は二の腕まであるエナメル製のロンググローブに革製首輪と、コスチュームが異なっていましたが、全て提供された貞操具を付けていました。
関谷社長から依頼された二枚目の油絵に着手し始めた頃、先生は貞操具が放つ淫靡な魔力に魅せられます。最初は私に「貞操具を付けて管理されるって、どんな気分?」とか尋ねてましたが、やがて自分も試してみたいと女性用の貞操帯を購入してアトリエ内で使用し始めました。
朝、アトリエに到着したらショーツを脱いで、貞操帯を付けてから絵を描き始めるのですが、すぐに物足りなくなって、オープションパーツのディルドやアナルプラグを買い足して、私に挿入と装着を頼むようになりました。
この貞操帯のオープションを用いるプレイに先生は完全に溺れてしまい、関谷社長から依頼された絵の完成は大幅に遅れました。
かつては地味な外観と真面目な性格で、同僚からも生徒たちからも揺るぎない信頼を得ていた女性は、僅か二カ月足らずで、自分が出した様々な体液まみれになって、泣き叫び、行為の継続を懇願し続ける姿に堕ちていました。それは自壊以外の何物でもなく、高校生だった私には強すぎる刺激でした。
性衝動を抑えられない人になってしまった先生は、普段でも貞操帯を着用し続けるようになります。貞操帯は鍵を恋人や御主人様に委ねることで、被支配感や被虐意識が高まりますが、そんな相手がいなかった先生は、私に鍵を託しました。自分の元教え子で十歳以上も年下の高校生に自分の性を管理されることに先生は激しく興奮していました。
壊れても警戒心は強かった先生は、それまで愛用していたスリムなデニムパンツやスウェットでは貞操帯がバレるかもしれないと考えて、ゆったりとしたスカートを履くようになり、付けっ放しの貞操帯の臭いを誤魔化すために香水を使い始めました。
貞操帯は長く着用していると臭ってくるので、外して洗うようにと、何度も鍵を渡そうとしましたが「それじゃ、管理されていることにならない」と決して受け取ることはなかったです。
当初は生理用品などを使って対策をしていましたが、結局、香水で誤魔化すのが一番効果的でした。ただ美術の授業のとき、一部の女子生徒が「最近、先生は良い香りがする」と寄ってくるようになったのには困っていました。
貞操帯を付けての授業は、一つ間違えてバレたら失職ものですが「絶対にヘマは許されないっていう緊張感とバレたときの惨事を想像すると、すごく興奮する」と言って笑ってたので、もう完全に戻れない人になっていました。
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