「爵位の種類」について説明ってできる?

※ 移転載しました:

https://kakuyomu.jp/works/16817330663922262667/episodes/16818023213584386811

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 こんにちは、たてごと♪ です。

 体調という概念が消失している今日このごろ(


 異世界もの。

 こうしておけば間違いない、というような世界観がある程度固まっているもので、気軽に非現実を楽しむことができる、ファンタジーでは定番の題材です。

 いや実にいいものですし、何と言ってもとにかくいいものですし、それになんかほら、その、こう……いいものですよね(


 そこでは当たり前に、貴族たちが登場してきます。

 ところが実は、その貴族の持つしゃくというやつがですね、先に結論言うと「あやふやではっきりしないもの」だったりするんですわ。

 そこらへん今回、ちょっと掘り下げてみようと思います。


 まあしゃくにいくつか種類が存在するのは、周知の事でしょう。

 ただ、言葉の観点から分類した場合、しゃくには「しゃく」「しゃく」「はくしゃく」の三種類しか有りません。

 それを一つずつ、見ていきましょうか。


 あ、飽くまで〝言葉の観点〟での話だってこと、くれぐれもご留意くださいね。



     †



 まず「しゃく」。

 〔士〕は、〈つわもの〉転じて〈能力を持つ者〉〈能力職の者〉という意味。

 〔爵〕は、〈さかづき〉転じて〈をつぐ祭礼杯を身分ごとに別個に定めること〉という意味。

 これは個人に与えられるしゃくで、何らかの功績を挙げた者をたたえるものです。

 個人に対するくんしょうなので、子孫には世襲されず、よってこのしゃくを持っていたとして、貴とよばれる事はあっても貴とは見なされません。

 なお、「士爵ナイト」を持つ男性を〝サー〟、女性を〝女史デイム〟と呼びますが、これらはしゃく名ではなく敬称です。

 つまり〈男性しゃく〉が〝騎士ナイト〟とか、〈女性しゃく〉が〝女士爵デイム〟というようなのは、よくある誤解。

 功績の内容もべつに戦績に限ったものではなく、技士や学士、げいなどもじょくんされます。


 ちなみに現在の日本には、くんしょうほうしょうなどが制度として存在してまして。

 これらが「日本に現存する事実上のしゃく位」に相当するのかなー、とか思ったりしますが。

 そういや〝ラスボス〟で有名な某小林幸子さま()が、〝こんじゅほうしょう〟を受章してますね。

 ……⁉(

 うん、ぼくっていっつも気づかなくていい事に気づくんだよね(



     †



 つぎに「しゃく」。

 いやそんなことば初めて見たぞ、って思われるかもしれませんが、これ〝しゃく〟の原語っすよ。

 ここでの{子}は〔師〕への当て字で、〔師〕の字義は〈おかおおうほどの大軍〉転じて〈指揮官〉〈きょう〉。

 なんか昔の時代には、〝そん〟だなんて呼ばれてた奴がいたらしい()ですが、この{子}もやっぱり当て字で、「スン」はスンウーという戦略家に対する敬称なんですね。

 ……本当に意味わからんくなるから当て字すぐにやめるんだ(


 特に際立った功績を誇示させ、手本とするために、個人ではなく一族がじょくんされるものなので、子孫に世襲される性質を持ちます。

 なぜ世襲されるかと言えば、なんだかんだ形がそこに無いと人はそれを忘れ去ってしまうので、その功績を末代まで語り継ぐためです。

 うち、いわゆる〝だんしゃく〟は、その世襲が直系長男に限定される「淡いしゃく」というわけですね。

 〝だんしゃく〟〝しゃく〟と並べられたら、づら的には後者のほうが格下のように見える気もしますが、ことばとして解釈するとこういう事になります。


 ああ、〝だんしゃくごとき〟とあなどことばもよくみられますけども。

 それは、上位の貴族から見ての話なのであって、平民からすれば「自分らにはとても真似できない、とんでもない事をやりやがったすげえ一族」ですよ。



     †



 あとは「はくしゃく」。

 いやそれ〝はくしゃく〟じゃないの、って思われるかもしれませんが、その説明はちょっと後回し。

 〔佰〕は〈100人〉、転じて〈集団のおさ〉〈かしら〉という意味。

 「しゃく」と同じに、世襲ありの一族に対するくんしょうですが、要するに集団のおさなので、手勢すなわち軍隊を持つことが許される一族を指します。

 軍隊とはいちばんわかりやすい威力ですが、これは強ければ強いほど当然、はんぎゃく能力もそのまま高まりますからね。

 そんな力を持つことなんて、みだりに許可できるはずがありません。

 つまり、高い功績を持つはずの「しゃく」と比べてすら、さらに輪をかけて信用のあつい一族という事になります。


 というわけで、冒険者ギルド運営諸君。

 君らは当然、から、せいぜい増長せずにつつましくやっててくれたまえ(

 うええ、ぼくはギルドマスターなんてぜってーやんねえかんな(


 それで〝はくしゃく〟ですが。

 〔伯〕の字義は〈白髪の者〉、転じて〈血族の先輩〉〈長老〉なので、だから〈親の兄や姉〉の意味で「伯父おぢ」「伯母おば」などともいます。

 まあ強いてうなら〝ろうしゃく〟ですね。

 軍隊を持つという性質上、領地もまた与えられているのが普通ですが、その規模の大きいものが特に〝こうしゃく〟と呼ばれます。

 この〔侯〕の字義は、〈まとまと)を射る者〉転じて〈目的にしたがって人をさいはいする者〉ですけども。

 ぶっちゃけ規模以外の観点では、〝はくしゃく〟との違いって無いんですよね。

 せいぜいその勢力から、待遇に差が出るくらいでしょう。

 ちなみに「しゃく」や「しゃく」も、ただ軍を保有できないってだけで、必ずしも領地を持たないわけではないですよ。

 あと〝しゃく〟が軍勢を持ってる場合も有るんでしょうけど、その場合のそれは「はくしゃく」に分類すべきでしょうね。

 まあレッテルと実態には、相違が生じることも間々あるものです。


 ほか、〝へんきょうはく〟とよばれる「はくしゃく」も存在するもので。

 これは〝はくしゃく〟であるだけに、〝こうしゃく〟よりも階位は下、という扱いになる場合が多いもの。

 しかし、この「辺境」とは〈へき〉ではなく、〈境界のほとり〉という事でして。

 それが何の境界かと言えば、ズバリ「国境」。

 確かに、都から離れている国境付近を辺境と呼ぶわけで、都民から見ればへきとしか思えないかもしれませけれどもね。

 しかし距離のへだたりがあるだけに、どうしても王の威光が行き届きづらくて、不安を抱えやすい地域という事になるわけで。

 くわえて、隣国へにらみを利かせて侵略をも阻止する、という大役になるんですよ。

 そんじょそこらの器量では務まりませんし、そのため当たり前に強い勢力と、高いきょうも持ちます。

 そこを裏切れば敵国へと寝返られたり、その場で国をおこされたりもするでしょう。

 いくら〝こうしゃく〟より下位とはいえど、王がより扱いに気を払うのは〝へんきょうはく〟のほうだろう、と想像されるわけですね。

 いやぁカッコイイすね〝へんきょうはく〟!(



     †



 あ、話が飛びますけど、結局「まとるもの」ですよ。

 これです。

 〔的〕の字義は〈かんじんなものすくいあげる〉、つまり〈目的物〉のこと。

 なのにそれ射抜いたら、破損しちゃうでしょ。

 それじゃあ完全真逆の、〈台無しダイナソー(?)にする〉って意味になっちゃうじゃん。

 ……「台無しダイナソー」これでWeb検索したら『YouTube』でいい歌声で歌ってる曲が出てきたので、みんな考える事は同じですね(


 そもそも弓道家が「まと」って呼んでるアレ、「まと」じゃないんすよ。

 {まと}と書いてはじめて〈矢の目的物〉、すなわち矢で射るための「まと」になるんすよ。

 ほか、{まと}と読む字としては「まと」が有りますが、これは〈はくちょう〉転じて〈もの〉って意味で。

 だから〈まとの度真ん中〉〈いちばんのねらい所〉の事を、「せいこく」ってうわけですね。

 というわけで、「まとを射る」って言いたいなら{まとを射る}か{まとを射る}と書きなされ、そしたら丁度そのままの意味ですよ。


 ちなみに{まと}というおんの組成は、たぶん〔〕じゃないすかね。

 あと〈はくちょう〉ってもともと「くぐい」って名前なんだけど、なんで「はくちょう」としか呼ばないようになっちゃったんだろーね、、



     †



 かん休題。

 まあこれで、しゃく三種の説明がひと通り済みましたが、はい。

 あまりにも有名なあの階位が、まだ登場してませんね。


 そうですよ〝こうしゃく〟ですよ。

 〝こう〟とは〈わたくし(民)をひらく者〉転じて〈民の最終責任者〉の事で、要するに王族、すなわち王の血筋にある者らを指します。

 これがまた微妙なやつで、功績ではなく「王族であること」に対するくんしょうなんですわ。

 〝王家〟とは〈王の構える一家〉の事なので、「おう」と「おうはい(配偶者)」と「おう(王女含む)」しか含まれません。

 ちなみに王の親らはふつう、衝突を避けるために隠居するんですが、つまりそれに該当しない王族らは、王家の蚊帳かやの外。

 とはいえ王の血筋をないがしろにしては、王の威光までもが失墜してしまう。

 じゃあもう王族に対しては、無条件でじょくんしてしまおう、と。

 そんな感じのものが、〝こうしゃく〟の主旨なわけですよ。

 うん、一定の教育は受けてるにしても、その優劣にかかわらず認定されてしまうわけですからね、そんなんすぐ腐りますよね(

 おまけに、これをようりつして革命を、とかキナくさいこと考える連中もたかりますしね、おおこわいこわい(


 なので〝こうしゃく〟は、「そもそもしゃくに相当するのかどうかが疑わしい」と。

 本来からすれば〝ぞく〟自体、平民から成り上がった者らの身分を指すもので、王族は含まれないんですね。

 あと昔の時代には、〝こう〟から分かれた〝こう〟というのがあって、王家に遠慮して王族とるのを辞退した元王族を、そう称したそうで。

 そして〝こうしゃく〟とよばれる貴族はまあ、その成れの果てが発端なのでしょうけども。

 これには〝はくしゃく〟らからもしょうしゃく、つまりしょうしゃくされてくるので、要するにけいがいですねけいがい、ははっ諸行無常(

 というわけで〝おうこうぞく〟ということばは、「(王家含めた)王族」と「こう族」と「貴族」、これら三つの総称であるわけですね。


 まあなんにしろ〝こうしゃく〟は、王族なんだから権力絶大。

 〝こうしゃく〟を上回る武力や領地を、保有するのが普通です。

 「王一人をのぞいては、だれにも頭を下げる必要がない」とか、ヤヴァイにも程がありますわ。

 そして、こんなのに〝こうしゃくだからっていい気になるなよ〟とかけん売っちゃうヤヴァイ奴は、ヤヴァイくらいじんそくつぶされますね(



     †



 場合によってはこうしゃく領が、そのまま国に成ったりしまして。

 その〈こうしゃくが治める国〉を、特に〝こうこく〟と呼びますが、王の血を引く者が成すわけですから、立国はそこそこスムーズに受け入れられます。

 あるいはこうしゃく領をベースとした、〈こうしゃくが治める国〉たる〝こうこく〟がおこる事も、まあ元王族ですから場合によっては有るかもしれません。

 それらと対比させるために、〈王の治める国〉もまた〝おうこく〟と呼ぶわけですけれども。

 ただ別に、上に王がいるからといって〝こうしゃく〟〝こうしゃく〟らにそこまでの不都合が有るわけでもないので、独立が起こるというのは余程の事態です。

 そういうはんをされないように、いろいろ画策しないといけない王様って、ほんと大変そうですよねえ。

 がんばってくださいね、あっぼくはやりたくないっす(

 売国したいウェイン君の気持ちがとってもよくわかるマン(


 ちなみに統治者が特に定まっておらず、〈民衆共同で運営されている国〉は〝きょうこく〟と呼ばれるもので、現代日本もこれに該当します。

 それから〝ていこく〟は〈みかどが治める国〉ですが、この〝みかど〟ってのは複数の王を取り締まる〈王の王〉なので、もーほんと「gateガチ yahvaヤヴァ」なんですって(

 いや〝こうてい〟とかあいつオカシイだろ、たぶんぜったいにんげんじゃないね(

 ほか、〝がっしゅうこく〟や〝れんぽう〟は単に〈国の集まり〉の事で、つまりアメリカ合衆国やソヴェト連邦なんかは実は、単一の国じゃないんですね。

 そりゃあ勢力も強いだろってもんですが、そんなのに一国で対抗できる中国とか、あはははまたこれも「gateガチ yahvaヤヴァ」っすねぇ♪(

 ……わらうしかできないようなじょうきょうってあるんだよ(


 そんな感じで、良くも悪くも世界でいちばんヤヴァイ国は、中国だとぼくは思ってます。

 いやもうホントめたらいいのか、けなしたらいいのか、有りがたく思えばいいのか、不気味に思えばいいのか、感謝したらいいのか、憎しみを寄せたらいいのか。

 まったくワケワカランけど、ものすごいって事だけはよくわかる。

 まあそれが、人口がとにかく多い国ならではの多面性、ってもんなんでしょう。

 目立つ部分だけを見てたら、判断間違えますわ。

 みづから「中華」と、中央の華とるだけの事はあるんですよ、あの国。



     †



 そんなこんなで、とある作品で〝当家もようやくこうしゃくに上がる事ができまして〟なんてセリフが、出ているのを見てしまいまして。

 言葉の観点で考えるかぎり、〝こうしゃく〟は成ろうと思って成る性質のものではないので、「ごめんね正直それおかしい」みたいには思ったりしましたよ。

 が、ここまで語っておいてアレですが、これって実は、そこまで気にする事でもなかったり。

 つまり最初に言った、しゃくは「あやふやではっきりしないもの」という事なんですが。


 まず、しばしば用いられる〈〝こうしゃく〟〝こうしゃく〟〝はくしゃく〟〝しゃく〟〝だんしゃく〟の五つで分類するしゃく制度〉を、〝しゃく〟といます。

 これは近代日本、明治時代あたりでの〝ぞくせい〟に由来するんですけども。

 ぶっちゃけこの定義って、ちょうどその華族制度以外の体系には、ほとんど適応しないんですよ。

 だから一般になされる、「dukeデューク」を〝こうしゃく〟、「baronバロン」を〝だんしゃく〟とするような対訳は言葉の観点的にまったくとうではなく、デタラメと評してもいいものだったりします。

 しゃく制度ってあまりに多数乱立していて、これ正直どう解釈したらいいのって悩まされた挙げ句、そのまま答えが出ないってくらいに「意味不明」なんですわ。


 何でそんなカオスな事になったか。

 想像になりますけど、これもう「〝見栄〟でテキトーいてるだけ」なんじゃないすかね。

 だって、「」んだもん!!(

 大半のしゃくの名称について、いちおう語源だけは辿たどれるんですけど、でもそのことば通りの意味ではほぼ、通用してないんですよ。

 異なる役割に同じ名称がり付いてたり、同じ役割に複数の名称がり付いてたり。

 〝companionコンパニオン〟やら〝memberメンバー〟やらが「しゃく」の一種だとか、言葉的にさっぱり適合しないように思いますし。

 〝しゃく〟すらそうですよ、待ってそれどういう意味で言ってんの、っていう。

 どう考えても正直、「マウント大好きマン()」が〝おれはあいつよりは下かもしれないが、少なくともこいつよりは上のはずだ〟みたいに考えて、自分のための階位を勝手にでっちあげたとしか思えない。

 「王より下だがこうしゃくより上のしゃく」の〝たいこう〟とかホントそれじゃん、〈民の最終責任者の大きいやつ〉ってどういう事だってばよ。

 つか、そんなん作ったら〝こうしゃく〟が最終責任者じゃなくなるじゃんかよ。


 これって企業とかで、なぞの肩書きがどんどん発生してるのと、ほぼ同じ構図だと思うんだけども。

 そーいや〝副係長〟ってアレ、本当に何だったんだろ……まさか残業dゲフンゲフン



     †



 そんなわけで。

 しゃくについてはもう、みなさん好き勝手に扱っちゃっていいんじゃないすかね。

 言葉としては先に挙げた三種類しか定義できないし、〝飽くまで言葉の観点での話〟って念を押したのもつまり、こういう事でして。

 あるいは混同すべきでない体系を、ぜんぶいっしょくたに「しゃく」と呼んでしまっているだけ、なのかもしれませんけれどもね。

 それは逆に言えば、現実の世界の国それぞれで、みなさん好き勝手に扱っちゃってる、って事ですからねえ。


 ──〝「しゃくの種類」について説明ってできる?〟

 ぼくの答えは「No」です。


 ああ、〝ちょっと〟掘り下げると言ったな。

 あれはうそだ(

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