「爵位の種類」について説明ってできる? ⦇大長⦈

 こんにちは、たてごと♪ です。

 「あなた大変ね」よりも「あなた変ね」のほうがづら的におだやかなハズなのに、どうしてこんなに刺さるのですか。


 ……はい(

 異世界もの。

 こうしておけば間違いない、というような世界観がある程度固まっているもので、気軽に非現実を楽しむことができる、ファンタジーでは定番の題材です。

 いや実にいいものですし、何と言ってもとにかくいいものですし、それになんかほら、その、こう……いいものですよね(


 そこでは当たり前に、貴族たちが登場してきます。

 ところが実は、その貴族の持つしゃくというやつがですね、先に結論言うと「あやふやではっきりしないもの」だったりするんですわ。

 そこらへん今回、ちょっと掘り下げてみようと思います。


 まあしゃくにいくつか種類が存在するのは、周知の事でしょう。

 ただ、言葉の観点から分類した場合、しゃくには「しゃく」「しゃく」「はくしゃく」の三種類しか有りません。

 それを一つずつ、見ていきましょうか。


 あ、飽くまで〝言葉の観点〟での話だってこと、くれぐれもご留意くださいね。



     †



 まず「しゃく」。

 〔士〕は、〈つわもの〉転じて〈能力を持つ者〉〈能力職の者〉という意味。

 〔爵〕は、〈さかづき〉転じて〈別個に定められたをつぐための祭礼杯の種類〉という意味。

 これは個人に与えられるしゃくで、何らかの功績を挙げた者をたたえるものです。

 個人に対するくんしょうなので、子孫には世襲されず、よってこのしゃくを持っていたとして、貴とよばれる事はあっても貴とは見なされません。

 なお、「士爵ナイト」を持つ男性を〝サー〟、女性を〝女史デイム〟と呼びますが、これらはしゃく名ではなく敬称です。

 つまり〈男性しゃく〉が〝騎士ナイト〟とか、〈女性しゃく〉が〝女士爵デイム〟というようなのは、よくある誤解。

 功績の内容もべつに戦績に限ったものではなく、技士や学士、げいなどもじょくんされます。


 ちなみに現在の日本には、くんしょうほうしょうなどが制度として存在してまして。

 これらが「日本に現存する事実上のしゃく位」に相当するのかなー、とか思ったりしますが。

 そういや〝ラスボス〟で有名な某小林幸子サマ()が、〝こんじゅほうしょう〟を受章してますね。

 ……⁉(

 うん、ぼくっていっつも気づかんでいい事に気づくんだよね(



     †



 つぎに「しゃく」。

 いやそんなことば初めて見たぞ、って思われるかもしれませんが、これ〝しゃく〟の原語っすよ。

 ここでの{子}は〔師〕への当て字で、〔師〕の字義は〈おかおおうほどの大軍〉転じて〈指揮官〉〈きょう〉。

 なんか昔の時代には、〝そん〟だなんて呼ばれてた奴がいたらしい()ですが、この{子}もやっぱり当て字で、「スン」はスンウーという戦略家に対する敬称なんですね。

 ……本当に意味わからんくなるから当て字すぐにやめるんだ(


 特に際立った功績を誇示させて、周囲に手本としてもらうために、個人ではなく一族がじょくんされるものなので、子孫に世襲される性質を持ちます。

 なぜ世襲されるかと言えば、なんだかんだ形がそこに無いと人はそれを忘れ去ってしまうので、その功績を末代まで語り継ぐためです。

 逆に言えば、末代まで語り継ぐほどの功績でなければ、「しゃく」にはじょくんされないわけですね。

 うち、いわゆる〝だんしゃく〟は、その世襲が直系長男に限定される、「淡いしゃく」だと。

 〝だんしゃく〟〝しゃく〟と並べられたら、づら的には後者のほうが格下のように見える気もしますが、ことばとして解釈するとこういう事になります。


 ああ、〝だんしゃくごとき〟とあなどことばもよくみられますけども。

 それは、上位の貴族から見ての話なのであって、平民からすれば「自分らにはとてもマネできない、とんでもない事をやりやがったすげえ一族」ですよ。



     †



 あとは「はくしゃく」。

 いやそれ〝はくしゃく〟じゃないの、って思われるかもしれませんが、その説明はちょっと後回し。

 〔佰〕は〈100人〉、転じて〈集団のおさ〉〈かしら〉という意味。

 「しゃく」と同じに、世襲ありの一族に対するくんしょうですが、要するに集団のおさなので、手勢すなわち軍隊を持つことが許される一族を指します。

 自動的に、軍の指揮能力がもとめられるので、ある個人が偉大な功績を挙げたというだけで行きなり「はくしゃく」にじょくんされることは、通常考えられないでしょう。

 軍隊とはいちばんわかりやすい威力ですが、強ければ強いほどはんぎゃく能力も当然高まりますから、そんなみだりに許可できるはずがありません。

 つまり、高い功績を持つはずの「しゃく」と比べてすら、さらに輪をかけて信用のあつい一族という事になります。


 というわけで、冒険者ギルド運営諸君。

 君らは当然、から、せいぜい増長せずにつつましくやっててくれたまえ(

 うええ、ぼくはギルドマスターなんてぜってーやんねえかんな(


 それで〝はくしゃく〟ですが。

 〔伯〕の字義は〈白髪の者〉、転じて〈血族の先輩〉〈長老〉なので、だから〈親の兄や姉〉の意味で「伯父おぢ」「伯母おば」などともいます。

 まあ強いてうなら〝ろうしゃく〟ですね。

 軍隊を持つという性質上、領地もまた与えられているのが普通ですが、その規模の大きいものが特に〝こうしゃく〟と呼ばれます。

 この〔侯〕の字義は、〈まとまと)を射る者〉転じて〈目的にしたがって人をさいはいする者〉ですけども。

 ぶっちゃけ規模以外の観点では、〝はくしゃく〟との違いって無いんですよね。

 せいぜいその勢力から、待遇に差が出るくらいでしょう。

 ちなみに「しゃく」や「しゃく」も、ただ軍を保有できないってだけで、必ずしも領地を持たないわけではないですよ。

 あと〝しゃく〟が軍勢を持ってる場合も有るんでしょうけど、その場合のそれは「はくしゃく」に分類すべきでしょうね。

 まあレッテルと実態には、相違が生じることも間々あるものです。


 ほか、〝へんきょうはく〟とよばれる「はくしゃく」も存在するもので。

 これは〝はくしゃく〟であるだけに、〝こうしゃく〟よりも階位は下、という扱いになる場合が多いもの。

 しかし、この「辺境」とは〈へき〉ではなく、〈境界のほとり〉という事でして。

 それが何の境界かと言えば、ズバリ「国境」。

 確かに、都から離れている国境付近を辺境と呼ぶわけで、都民から見ればへきとしか思えないかもしれませんけれどもね。

 しかし距離のへだたりがあるだけに、どうしても王の威光が行き届きづらくて、不安を抱えやすい土地を治めなきゃいけない。

 くわえて、隣国へにらみを利かせて侵略をも阻止する、っていう大役になるんですよ。

 そんじょそこらの器量では務まりませんし、そのため当たり前に強い勢力と、高いきょうも持ちます。

 そこを裏切れば敵国へと寝返られたり、その場で国をおこされたりもするでしょう。

 いくら〝こうしゃく〟より下位とはいえど、王がより扱いに気を払うのは〝へんきょうはく〟のほうだろう、と想像されるわけですね。

 いやぁカッコイイすね〝へんきょうはく〟!(



     †



 あ、話が飛びますけど、結局「まとるもの」ですよ。

 これです。

 〔的〕の字義は〈かんじんなものすくいあげる〉、つまり〈目的物〉のこと。

 なのにそれ射抜いたら、破損しちゃうでしょ。

 それじゃあ完全真逆の、〈台無しダイナソー(?)にする〉って意味になっちゃうじゃん。

 ……「台無しダイナソー」これでWebけんさくしたら『YouTube』でいい歌声で歌ってる曲が出てきたので、みんな考える事は同じですね(


 そもそも弓道家が「まと」って呼んでるアレ、「まと」じゃないんすよ。

 {まと}と書いてはじめて〈矢の目的物〉、すなわち矢で射るための「まと」になるんすよ。

 ほか、{まと}と読む字としては「まと」が有りますが、これは〈はくちょう〉転じて〈もの〉って意味で。

 だから〈まとの度真ん中〉〈いちばんのねらい所〉の事を、「せいこく」ってうわけですね。

 というわけで、「まとを射る」って言いたいなら{まとを射る}か{まとを射る}と書きなされ、そしたら丁度そのままの意味ですよ。


 ちなみに{まと}というおんの組成は、たぶん〔〕じゃないすかね。

 あと〈はくちょう〉ってもともと「くぐい」って名前なんだけど、なんで「はくちょう」としか呼ばないようになっちゃったんだろーね、、



     †



 かん休題。

 まあこれで、しゃく三種の説明がひと通り済みましたが、はい。

 あまりにも有名なあの階位が、まだ登場してませんね。


 そうですよ〝こうしゃく〟ですよ。

 〝こう〟とは〈わたくし(民)をひらく者〉転じて〈民の最終責任者〉の事で、要するに王族、すなわち王の血筋にある者らを指します。

 これがまた微妙なやつで、功績ではなく「王族であること」に対するくんしょうなんですわ。

 まず、最高権限をにぎる〈王の構える一家〉のことを〝王家〟といますが、これには「おう」と「おうはい(配偶者)」と「おう(王女含む)」しか含まれません。

 ちなみに王の親らはふつう、衝突を避けるために隠居するんですが、つまりそれに該当しない王族らは、王家の蚊帳かやの外。

 とはいえ王の血筋をないがしろにしては、王の威光までもが失墜してしまう。

 じゃあもう王族に対しては、無条件でじょくんしてしまおう、と。

 そんな感じのものが、〝こうしゃく〟の主旨なわけですよ。

 うん、一定の教育は受けてるにしても、その優劣にかかわらず認定されてしまうわけですからね、そんなんすぐ腐りますよね(

 おまけに、これをようりつして革命を、とかキナくさいこと考える連中もたかりますしね、おおこわいこわい(


 なので〝こうしゃく〟は、「そもそもしゃくに相当するのかどうかが疑わしい」と。

 本来からすれば〝ぞく〟自体、平民から成り上がった者らの身分を指すもので、王族は含まれないんですね。

 あと昔の時代には、〝こう〟から分かれた〝こう〟というのがあって、王家に遠慮して王族とるのを辞退した元王族を、そう称したそうで。

 そして〝こうしゃく〟とよばれる貴族はまあ、王の血筋は引いてるにしても、結局は平民から成り上がった者らと同格にまで身を落としたわけですからね。

 その流れで、これには〝はくしゃく〟らからもしょうしゃく、つまりしょうしゃくされてくるようにもなるので、要するに〝こう〟のけいがいですねけいがい、ははっ諸行無常(

 というわけで〝おうこうぞく〟ということばは、「(王家含めた)王族」と「こう族」と「貴族」、これら三つの総称であるわけですね。


 まあなんにしろ〝こうしゃく〟は、王族なんだから権力絶大。

 〝こうしゃく〟を上回る武力や領地を、保有するのが普通です。

 「王一人をのぞいては、だれにも頭を下げる必要がない」とか、ヤヴァイにも程がありますわ。

 そして、こんなのに〝こうしゃくだからっていい気になるなよ〟とかけん売っちゃうヤヴァイ奴は、ヤヴァイくらいじんそくつぶされますね(



     †



 場合によってはこうしゃく領が、そのまま国に成ったりしまして。

 その〈こうしゃくが治める国〉を、特に〝こうこく〟と呼びますが、王の血を引く者が成すわけですから、立国はそこそこスムーズに受け入れられます。

 あるいはこうしゃく領をベースとした、〈こうしゃくが治める国〉たる〝こうこく〟がおこる事も、まあ元王族ですから場合によっては有るかもしれません。

 それらと対比させるために、〈王の治める国〉もまた〝おうこく〟と呼ぶわけですけれども。

 ただ別に、上に王がいるからといって〝こうしゃく〟〝こうしゃく〟らにそこまでの不都合が有るわけでもないので、独立が起こるというのは余程の事態です。

 そういうはんをされないように、いろいろ画策しないといけない王様って、ほんと大変そうですよねえ。

 がんばってくださいね、あっぼくはやりたくないっす(

 売国したいウェイン君の気持ちがとってもよくわかるマン(


 ちなみに統治者が特に定まっておらず、〈民衆共同で運営されている国〉は〝きょうこく〟と呼ばれるもので、現代日本もこれに該当します。

 それから〝ていこく〟は〈みかどが治める国〉で、〈すめらぎが治める国〉の〝こうこく〟もだいたい同様ですが、この〝すめらぎ〟〝みかど〟ってのは複数の王を取り締まる〈王の王〉なので、もーほんと「gateガチ yahvaヤヴァ」なんですって(

 いや〝こうてい〟とかアイツまじオカシイだろ、たぶんぜったいにんげんじゃないね(

 ほか、〝がっしゅうこく〟や〝れんぽう〟は単に〈国の集まり〉の事で、つまりアメリカ合衆国やソヴェト連邦なんかは実は、単一の国じゃないんですね。

 そりゃあ勢力も強いだろってもんですが、そんなのに一国で対抗できる中国とか、あはははまたこれも「gateガチ yahvaヤヴァ」っすねぇ♪(

 ……わらうしかできないようなじょうきょうってあるんだよ(


 そんな感じで、良くも悪くも世界でいちばんヤヴァイ国は、中国だとぼくは思ってます。

 いやもうホントめたらいいのか、けなしたらいいのか、有りがたく思えばいいのか、不気味に思えばいいのか、感謝したらいいのか、憎しみを寄せたらいいのか。

 まったくワケワカランけど、ものすごいって事だけはよくわかる。

 まあそれが、人口がとにかく多い国ならではの多面性、ってもんなんでしょう。

 目立つ部分だけを見てたら、判断間違えますわ。

 みづから「中華」と、中央の華とるだけの事はあるんですよ、あの国。


 ところで現時点で、全世界中で「皇帝エンペラー」と呼ばれるのは日本の天皇ただ一人しか存在しないんで、みなさん天皇陛下はもっと敬ってください本当に。

 陛下がいらっしゃって、かつ基本的人権に制限を受けてまでして世界を飛び回っての御公務をお果しいただけるおかげで、日本という国は他国から一定の敬意を払ってもらえている、って部分があるんですよ。



     †



 そんなこんなで、とある作品で〝当家もようやくこうしゃくに上がる事ができまして〟なんてセリフが、出ているのを見てしまいまして。

 言葉の観点で考えるかぎり、〝こうしゃく〟は成ろうと思って成る性質のものではないので、「ごめんね正直それおかしい」みたいには思ったりしましたよ。

 が、ここまで語っておいてアレですが、これって実は、そこまで気にする事でもなかったり。

 つまり最初に言った、しゃくは「あやふやではっきりしないもの」という事なんですが。


 まず、しばしば用いられる〈〝こうしゃく〟〝こうしゃく〟〝はくしゃく〟〝しゃく〟〝だんしゃく〟の五つで分類するしゃく制度〉を、〝しゃく〟といます。

 これは近代日本、明治時代あたりでの〝ぞくせい〟に由来するんですけども。

 ぶっちゃけこの定義って、ちょうどその華族制度以外の体系には、ほとんど適応しないんですよ。

 だから一般になされる、「dukeデューク〈司令官〉」を〝こうしゃく〟、「baronバロン〈戦士〉」を〝だんしゃく〟とするような対訳は、言葉の観点的にはまったくとうなものではなかったりします。

 しゃく制度ってあまりに多数乱立していて、これ正直どう解釈したらいいのって悩まされた挙げ句、そのまま答えが出ないってくらいに「意味不明」なんですわ。


 何でそんなカオスな事になったか。

 想像になりますけど、これもう「〝見栄〟でテキトーいてるだけ」なんじゃないすかね。

 だって、「」んだもん!!(

 大半のしゃくの名称について、いちおう語源だけは辿たどれるんですけど、でもそのことば通りの意味ではほぼ、通用してないんですよ。

 異なる役割に同じ名称がり付いてたり、同じ役割に複数の名称がり付いてたり。

 〝companionコンパニオン〟やら〝memberメンバー〟やらが「しゃく」の一種だとか、言葉的にさっぱり適合しないように思いますし。

 〝しゃく〟すらそうですよ、待ってそれどういう意味で言ってんの、っていう。

 果てには〝じゅんぞく〟とかいったい何なのよそれ、「しゃく」じゃダメなんですか。

 どう考えても正直、「マウント大好きマン()」が〝おれはあいつよりは下かもしれないが、少なくともこいつよりは上のはずだ〟みたいに考えて、自分のための階位を勝手にでっちあげたとしか思えない。

 「王より下だがこうしゃくより上のしゃく」の〝たいこう〟とかホントそれじゃん、〈民の最終責任者の大きいやつ〉ってどういう事だってばよ。

 つか、そんなん作ったら〝こうしゃく〟が最終責任者じゃなくなるじゃんかよ。


 これって企業とかで、なぞの肩書きがどんどん発生してるのと、ほぼ同じ構図だと思うんだけども。

 そーいや〝副係長〟ってアレ、本当に何だったんだろ……まさか残業dゲフンゲフン



     †



 そんなわけで。

 しゃくについてはもう、みなさん好き勝手に扱っちゃっていいんじゃないすかね。

 言葉としては先に挙げた三種類しか定義できないし、〝飽くまで言葉の観点での話〟って念を押したのもつまり、こういう事でして。

 あるいは混同すべきでない体系を、ぜんぶいっしょくたに「しゃく」と呼んでしまっているだけ、なのかもしれませんけれどもね。

 それは逆に言えば、現実の世界の国それぞれで、みなさん好き勝手に扱っちゃってる、って事ですからねえ。


 ──〝「しゃくの種類」について説明ってできる?〟


 ぼくの答えは「No」です。

 いやもう、ここまでわけわからんと、さすがに疲れてしまいますわね。

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