第三十八章 灯火消えようと、友はそこに居る
第388話 フェイカー
第三十八章 灯火消えようと、友はそこに居る
岩山をくり抜いて建造された広大なる教会。今その内部は、ガラス片が突風に荒ぶ激しい煌めきで満ち満ちていた――
武装したロチアートの軍勢2000と数百の魔物に加え、1000もの騎士がそこに幽閉される形となっている。
「割れてしまえ〜割れろ〜、私の体を割られる前に、貴様等外道が木っ端となるのだ〜!」
狂気の盲信で部下の騎士達さえをも構わず屠り去っていくシャルル6世は、長き巻き毛を風に舞い上げながら、体を預けた金色の杖を頼りに、一歩一歩と敵味方渾然一体となった群集へと迫る。
「シャルル様、我々は貴方を裏切ってなどおりません!」
「我等は貴方に一生の忠誠を捧げ、……さ、ササゲッ!!?」
「砕け散れ〜! もうお前達の戯言には騙されぬぞ〜!」
「ヒィィッあ!!?」
狂気の王の展開する自らを中心にした透明の
「逃げ惑っておる……わらわらと、まるで狼に狙われた羊の群れかの様に……ぐふ」
その狂宴をシャルルの後方――最奥の巨大なミハイル像の前で、呑気に鎮座したまま眺めていた小柄な参謀は、半透明となった体にグラディエーターによって
「ぐふふ……『修繕』」
手元に起こした黄色の発光に、クリッソンの禿頭と一緒に
無理に壁を穿った騎士が、教会より逃げ出そうと外へと足を踏み出した刹那――その瞬間的に打ち崩れた壁が
「が――――っ、――プ……!!」
「グゥえ…………っ?!」
肉を、そして内蔵を瞬時に圧迫された人間達は潰れたカエルの様な声を出し、壁より突き出した顔より血を噴射しながら、ダラリとその四肢を壁に垂らしていった。
そこに出来上がるは、各所より人の体躯を突き出した厚き土壁……趣味の悪い現代アートかの様になった彼等の血液によって、土は赤色に染まっていく。
「敵を殲滅せんとする王を前に逃亡か? ぐふふ、騎士の風上にも置けぬ奴」
――呆気の無いまでに将に裏切られた騎士達と混じり、揉み合ったロチアートの群れより、一人の男が天井高くまで届く脚力で飛び上がっていた。
「ん……? なんと、シャルルの『
死人となった自らの魂に、脳のリミッターを解放する『
「ボァア――ッ!!」
膨れ上がった大腿より筋肉を爆ぜさせたフロンスが、クリッソンと共にミハイル像を踏み壊した。穿たれた床より木片が飛び散り、固い地盤の大地が割れる。
「おーお〜……恐ろしい顔をしておる」
「……困りました、やはり駄目ですか」
絶えず魔力を消耗し続ける『超再生』によって爆ぜた肉を再生していったフロンス。陥没した大地より彼が見下ろすは、半透明の体に嫌味な笑みを見せたクリッソンの姿。やはりその身には傷の一つも付いていない。
「『修繕』!」
「ぅ……っ」
クリッソンの立てた指先より黄色い発光が起こると同時に、深く陥没した大地と張り裂けた床、そして巨大なミハイル像までもが立ちどころに元の姿へと戻っていった。踏み抜いた岩盤に膝の辺りまで沈み込んでいたフロンスは、下肢を瞬時に固い岩盤に押し潰されて脚を断裂させた。
「おー気色の悪い……肉の塊が爆ぜる様などは老体にはちと刺激が強いな、ぐっふふふ」
「……それは……失礼しま、した――っ!」
「ぅげ……」
千切れた肉の断面より脚を生え揃えていったフロンスに、クリッソンは吐き気を催すかの様な仕草を見せる。ただし『
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