第205話 お前だけ地を這いずっていろ
「俺の……腕?」
視線の先で既視感のある右腕を軋ませる男を見つめ、唖然とする鴉紋。
ギルリートは首を傾げて鴉紋へと歩み出した。
「そうだ、貴様個人のポテンシャルを全て吐き出した、ありのままのな」
その右腕が、茫漠な闇のプレッシャーを発散していく。
呻きながら立ち上がった鴉紋は、自らの拳を握り締めた。
「猿真似野郎が……」
「全快であったらば、ここまで途方も無い力であったか鴉紋……クク。最も結末は変わらんがな」
ギルリートの周囲を霧散した闇が包み込み始めた。そして彼の体の全てが変貌していき始める。
「暗黒魔法『
「……な」
その体を、四肢を黒く変貌させてしまった男に、鴉紋は自らの肉体を見付けて愕然とする。
ギルリート・ヴァルフレア特有の暗黒魔法は、一対象のポテンシャルを映し込む。
その容姿を、力を、性能を全て。
『終夜鴉紋も、ミハイルですらも敵とはならず、
かつて彼が語ったその一言は何の強がりでも無く、ありのままの事実なのであった。
プレッシャーに押しやられる鴉紋が、苦悶の表情を見せて汗を垂らす。
「無茶苦茶やりやがるなテメェ」
目前に
「お前は、勝てる筈の無い自ら自身と戦うのだ、鴉紋」
邪悪の風がホールを吹き荒れ始めた。
そこに佇むは全力全快の自らの姿。
「ん?」
ギルリートは歩む際に、左足の異変に気付いてその足を止める。
「左足が悪いのか……クク。そんなハンデはお前だけ背負っていれば良い」
ギルリートは闇を変形させて、その傷付いた左足を修正すると、軽快に歩みを再開した。
「腰を曲げ、地べたを這いずるはお前だけ。王たる俺には似つかわしく無い」
「――くっ」
不都合を修正し、対象の力の全てをひけらかすギルリート・ヴァルフレア。
何者ですら、彼の前では弱者と成り下がるしか無いのだ。
あのミハイルも……まだ見ぬ神ですらもが――
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